この記事では、2021年本屋大賞第2位となった青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』を紹介します。
一冊の本が考え方や生き方に影響することってありますよね。
本作品は、司書に紹介された本を読んで、満足していない状況を改善すべく動き出す人たちの物語です。
自分は本当は何がしたいのか。
問題の本質について、本がヒントを与えてくれる。
改めて本の素晴らしさに感動し、行動することの大切さを再認識させてくれます。
本作品の中にあった名言を紹介しながら感想をまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
『お探し物は図書室まで』について
タイトル | お探し物は図書室まで |
著者 | 青山美智子 |
出版社 | ポプラ社 |
発行年月 | 2020年11月 |
ページ数 | 273P(電子書籍) |
2021年本屋大賞第2位を獲得しています。
とある町のコミュニティハウスにある図書室を訪れる5人の物語です。
1章ずつ区切りがいいので、まとまった読書時間が取れない人にも読みやすいですよ。
著者について
著者である青山美智子さんのプロフィールです。
1970年生まれ、愛知県出身。横浜市在住。デビュー作『木曜日にはココアを』で第1回宮崎本大賞受賞。『猫のお告げは樹の下で』は第13回天竜文学賞受賞。本作と『赤と青とエスキース』で本屋大賞2位。
他の著書に『鎌倉うずまき案内所』『ただいま神様当番』『マイ・プレゼント』『いつもの木曜日』『月の立つ林で』『ユア・プレゼント』など。
引用:『お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)』(青山美智子 著)
青山美智子さんの著作は、2024年本屋大賞ノミネート作の『リカバリー・カバヒコ』を読みました。
こちらも悩んでいる人を救う素晴らしい作品でした。
青山さんの作品はとても読みやすく、読んでいくうちにやる気や元気が出てきます。
サラッと読めるようで忘れられない作品になる、重くないのに心にしっかり残る。
私が読んだ『リカバリー・カバヒコ』と『お探し物は図書室で』のどちらもそのような作品でした。
『リカバリー・カバヒコ』を紹介している記事があります。
まだ読んでいない人はぜひ合わせてどうぞ。
見どころ
悩みを持った人たちが、ふとしたきっかけで町の図書室に本を探しに行く。
レファレンスコーナーで司書さん(小町さゆり)がどんな本を探しているかを聞いて、良い本を紹介してくれる。
おすすめリストの中には関係のなさそうな1冊が。
そして本の付録として羊毛フェルト。
その1冊と羊毛フェルトが悩みの解決のヒントになります。
本を読んだ人たちが本当はどうしたいのかを気づき、行動することで周りが動き出し、新たな一歩を踏み出すところが見どころとなります。
『お探し物は図書室まで』は電子書籍でも読めます。電子書籍で読むなら専用リーダーがあると、老眼であることを忘れるくらい楽になりますよ。
『お探し物は図書室まで』を読んだ感想
それでは本作品を読んだ感想を、名言を紹介しながら1章ずつ述べていきます。
1章 朋香 21歳 婦人服販売店
総合スーパー(エデン)の婦人服売り場で働く朋香。
仕事にやりがいもなく、先が見えてきて、このままでいいのかと考え始める。
転職するにもまずはパソコンのスキルが必要なので教室に通うことに。
理解を深めるため教本を借りようと、町の図書室に行ってみる。
司書の小町さんに「何をお探し?」と聞かれた朋香の心の声は、
私が探しているのは。 仕事をする目的とか、自分に何ができるのかとか、そういうこと。
引用:『お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)』(青山美智子 著)電子書籍P22
希望したパソコン教本に加えて次のものが。
パソコンの本を探していると言って、紹介された本の中に『ぐりとぐら』があったら驚きますよね。
この本に出てくる5人とも、その関係のなさそうな本が気になって結局借りるのが面白いな、自分でもそうするだろうなと思いました。
それでは、1章にあった名言を紹介します。
まず俺に必要なのは、目の前のことにひたむきに取り組んでいくことなんだと思った。
そうやってるうち、過去のがんばりが思いがけず役に立ったり、いい縁ができたりね。
引用:『お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)』(青山美智子 著)電子書籍P38
余計なことを考えずに、目の前のことにひたむきに取り組むこと。
これがなかなか難しいです。すぐに気が散ってしまって(;^_^A
でも誰でも、あの時頑張って良かったなという経験があると思います。
その時は大変だったり苦しかったりしても、後になって報われるときが来るんですね。
もう1つ紹介します。
エデンの婦人服販売員が「たいした仕事じゃない」なんて、とんでもない間違いだった。
単に私が「たいした仕事をしていない」だけなのだ。
引用:『お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)』(青山美智子 著)電子書籍P38
この言葉は、私の心にグサッと来ました。
私は朋香と同じように、自分の仕事を「大したことない」と思ってきました。
でも大したことない仕事なんてないのです。
大した仕事にするかどうかは自分次第なんですね。
自分が恥ずかしくなり反省しました。
1章の話からは、部屋をきれいにすることや、ちゃんとした食事をとることの大切さを学びました。
自分自身を大事にすること。
それも目の前のことの1つですね。
そして絵本は子どもだけの本ではありませんでした。
大人の生き方まで変える力がありました。
2章 諒 35歳 家具メーカー経理部
諒が中学生の時に入ったアンティークショップ。
そこで1905年にイギリスで作られた純銀のスプーンに惹かれ購入する。
いつしか自分もその店のようなアンティークショップを持ちたいと考えてはいるが、資金が貯まる目途も会社を辞める勇気もない。
そんなある日、ふとしたきっかけで町の図書室へ行くことに。
司書の小町さんに「何をお探し?」と聞かれた諒の心の声は、
何を探してるのかって……もてあましている夢の置き場かもしれない。
引用:『お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)』(青山美智子 著)電子書籍P68
希望した起業に関する本や、会社の辞め方の本に加えて次のものが。
2章の話は、副業を考えている私にとって、とても興味深かったです。
「パラレルキャリア」という言葉をご存知でしょうか?
本業を持ちながら、第2の活動をすることで、どちらが「副」とか主従の関係はないそうです。
第2の活動は仕事とは限らない。
本業の仕事だけにすがらなくてもいいというのは気持ちが楽になりますね。
どちらかで辛い状況になっても、もう片方が支えてくれる。
そんな働き方ができたら素晴らしいなと思いました。
それでは2章の名言を紹介します!
「いつかって言っている間は、夢は終わらないよ。美しい夢のまま、ずっと続く。かなわなくても、それもひとつの生き方だと私は思う。
無計画な夢を抱くのも、悪いことじゃない。日々を楽しくしてくれるからね」
(中略)
「でも、夢の先を知りたいと思ったのなら、知るべきだ」
引用:『お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)』(青山美智子 著)電子書籍P69
この言葉にはハッとしました。
私自身は夢はないんですけど、無計画な夢は日々を楽しくしてくれる。
そうか、それなら叶わない夢を見るもの悪くない。
そして、夢の叶った先が知りたいなら知るべき。
グッと気持ちが高揚しました。夢があるわけでもないのに。
ものすごく背中を押してくれる言葉だと思いました。
もう1つ紹介しますね。
「ねえ、諒ちゃん。世界は何で回ってると思う?」
引用:『お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)』(青山美智子 著)電子書籍P102
(中略)
「私はね、信用だと思ってる」
諒ちゃんの答えは「愛」だったんですけど、、、
愛にしてもお金にしても信用がなければ得られないですよね。
諒ちゃんの彼女のこの言葉はとても深いと思いました。
3章 夏美 40歳 元雑誌編集者
20代女性向け雑誌の編集をしていた夏美は、育休明けに資料部への異動を命じられる。
資料部は定時で帰れる職場で、会社としては配慮した形になっているが不本意であった。
望んで子どもをもったが、女性だけがキャリアを失うことに納得できない夏美は、ふとしたきっかけで図書室に行くことに。
司書の小町さんに「何をお探し?」と聞かれた夏美の心の声は、
何を探しているのかと問われれば、たくさんある気がした。
これからの私の生きる道は?このモヤモヤの解決手段は?育児に必要な「余裕」とやらは?どこにありますか、そんなもの。
引用:『お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)』(青山美智子 著)電子書籍P123
希望した絵本に加えて次のものが。
私は子どもを産んだことはないのですが、共感できるところがたくさんある3章でした。
キャリアを持つ女性にとって、出産後も出産前と同じように輝くのはなかなか難しいのが現状ですよね。
それでは3章の名言を紹介します!
独身の人が結婚してる人をいいなあって思って、結婚してる人が子どものいる人をいいなあって思って。そして子どものいる人が、独身の人をいいなあって思うの。
ぐるぐる回るメリーゴーランド。
おもしろいわよね、それぞれが目の前にいる人のおしりだけ追いかけて、先頭もビリもないの。
つまり、幸せに優劣も完成形もないってことよ。
引用:『お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)』(青山美智子 著)電子書籍P136
とても納得してしまった言葉です。
望んで得たはずなのに、元いた場所の人をいいなぁと思ってしまう。
私も独身の人をいいなぁって思っています。
いいなぁって思っている場所に行ったところで満足しないなんて、人間とは貪欲な生き物ですね。
もう1つ紹介します。
どんな本もそうだけど、書物そのものに力があるというよりは、あなたがそういう読み方をしたっていう、そこに価値があるんだよ。
引用:『お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)』(青山美智子 著)電子書籍P148
この本に出てくる5人全員が、小町さんにすすめられた1冊を、どんな意味で紹介してくれたのかと思いながら読み進めました。
その本が自分に関係があると思って読んだのです。
本というのは書き手と読み手の両方の関係が大事なのですね。
本を読む姿勢を学ぶことができました。
4章 浩弥 30歳 ニート
浩弥は子どものころから漫画が好きで、絵を描くことが得意だった。
デザインの専門学校を出たが、就職がうまくいかず、バイトも続かなくてニートとして実家にいる。
母親におつかいを頼まれたことがきっかけで、コミュニティハウスの図書室に寄ることに。
司書の小町さんに「何をお探し?」と聞かれた浩弥の心の声は、
ひとつでいい、こんな俺の存在を許してくれる安らかな「居場所」を……。
引用:『お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)』(青山美智子 著)電子書籍P199
希望した漫画ではなく次のものが。
自分の居場所がないということを、私は子どものころによく思っていました。
親に橋の下で拾ったと言われたのを真に受けていたからかもしれません。
周りがどう思っていようが、本人が居場所がないと思っている状況は辛いですよね。
それでは4章の名言を紹介します!
俺も思っていた。 俺に絵の才能なんてあるわけない、普通に就職なんてできるはずない。
でもそのことが、どれだけの可能性を狭めてきたんだろう?
引用:『お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)』(青山美智子 著)電子書籍P206
自分で自分の可能性を狭めてしまう、ということはありますよね。
自信たっぷりの人の方が少ないでしょう。
4章では視野を広げることがとても大切だと学びました。
デザイン力を生かす仕事は、デザインで食べること、とは限らない。
職場でイラストが描けることを認めてもらえれば、広報誌やポスター製作を依頼されるようになったりします。
本来のやりたいこととは違うかもしれませんが、居場所はできる。
才能の生かし方は思っているよりもたくさんあるということを、覚えていようと思いました。
第5章 正雄 65歳 定年退職
正雄は65歳で定年退職した。
それまで毎日のルーティンをこなしていたが、明日から何をすればいいのか。
趣味の1つもないことに気づく。
家事もやったことがなく、手伝ってみたが、うまくいかない。
妻の依子に囲碁教室を勧められて行ってみたが、なかなか難しいので本を借りて勉強することにした。
司書の小町さんに「何をお探し?」と聞かれた正雄の心の声は、
わたしは何を探しているのだろう。これからの……人生の在り方を?
引用:『お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)』(青山美智子 著)電子書籍P225
希望した囲碁の本に加えて次のものが。
定年退職したあとの人生を思うと明るい気持ちにはなれません。
でも5章を読んで、希望が持てるようになりました。
それでは5章の名言を紹介します。
わたしが生まれた日と、ここに立っている今日、そしてこれから来るたくさんの明日。
どの日だって、1日の大切さになんの違いもない。
引用:『お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)』(青山美智子 著)電子書籍P264
特別な日もそうでない日も、子どものころでも高齢になってからでも、1日の価値は同じ。
歳をとってくると、新しい経験ってなかなかなくて、代わり映えのしない毎日がつまらなく感じたりします。
でも捨てていい日などないってことですよね。
1日1日をもっと大事に生きようと思いました。
もう1つ紹介しますね。
私はね、権野さん。人と人が関わるのならそれはすべて社会だと思うんです。
接点を持つことによって起こる何かが、過去でも未来でも
引用:『お探し物は図書室まで (ポプラ文庫)』(青山美智子 著)電子書籍P255
私は社会心理学を勉強した時に、自分ともう1人など2人いれば、そこは「社会」だと教わりました。
専業主婦や定年退職後は、社会とのつながりがなくなったようで寂しくなったりするのだと思います。
でも、そもそも「社会」とは何かということですね。
人と人が関わるすべて。
家に夫や子どもがいるなら関わりがあるから、そこは社会です。
それなら、いくらでも社会につながることはできますよね。
定年後だって自分なりの新しい社会につながれると希望が湧きました。
5人の話が収録されていて、それぞれまったく別の話かと思っていたら、つながっていました。
それがわかって、また違った感動がありました。
コミュニティハウスの図書室の話なので、借りる人は当然ご近所の人ですね。
お互いに影響し合っている。
ここにも社会がありました。
最後に
2021年本屋大賞第2位に輝いた青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』を紹介しました。
本は、何かを得ようと思っている人にとって、人生を変えるほどの大きな力を持ったものだと改めて感じることができる物語です。
まだ読んでいない人は、ぜひ読んでみてください。
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2024年本屋大賞ノミネート作品をまとめた記事があります。
興味のある人は合わせてご覧ください。
この本と同じく本屋大賞2位となった『君の膵臓をたべたい』もおすすめです。