【名言と感想】本屋大賞受賞『52ヘルツのクジラたち』

本屋大賞
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この記事では、2021年本屋大賞に輝いた町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』を紹介します。

タイトルを見て、クジラのお話かな?と思いましたが、違いました。

順風満帆に生きてきた人なんてそんなにいなくて、誰しも苦しくて悲しくて声にならない声を出したことがあると思います。

その声は誰かに届いたでしょうか?

『52ヘルツのクジラたち』は子どものころから虐待を受けてきた女性と、親に名前ではなく「ムシ」と呼ばれる少年の物語です。

自分の身近にも声にならない声をあげている人がいるかもしれない、と考えさせられる本です。

この本を読んだ感想を名言を紹介しながらまとめました。

最後まで読んで、本選びの参考にしていただけたら嬉しいです。

この本はこんな人におススメ
  • 泣ける本が読みたい人
  • 映画化された原作に興味がある人
  • 本屋大賞に興味がある人

『52ヘルツのクジラたち』について

タイトル52ヘルツのクジラたち
著者町田そのこ
出版社中央公論新社
発行日2020年4月25日
ページ数260P

2021年本屋大賞を受賞した作品です。

本屋大賞には、これでもかと感情を揺さぶってくる物語が選ばれるように思います。

ざきざき
ざきざき

みんな本を読んで、感情を揺さぶられたいんですね!

著者について

著者である町田そのこさんのプロフィールです。

  • 1980(昭和55)年生れ。福岡県在住。
  • 2016年「カメルーンの青い魚」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞
  • 2021年「52ヘルツのクジラたち」で本屋大賞を受賞。
  • 他に作品に「ぎょらん」(新潮社)、「うつくしが丘の不幸の家」(東京創元社)などがある。

町田そのこさんの作品は、本作と2023年本屋大賞ノミネート作『宙ごはん』を読みました。

親に苦しめられた子どもの心理描写が秀逸な作家さんだと思います。

ご自身も親に苦しめられた経験があるのでは思ってしまうほどです。

私はこの本の主人公の貴瑚(きこ)や少年のように虐待はされませんでしたが、愛されたという感覚もありません。

母親の愛情は弟にばかり注がれました。

『52ヘルツのクジラたち』も『宙ごはん』も、自分の子供時代のことを思い出し、涙なしには読めない作品でした。

『宙ごはん』の紹介記事はこちら

『52ヘルツのクジラたち』のあらすじ

貴瑚はひとりで静かに暮らすために、大分の海辺の町に引っ越してきた。

あるとき、体中あざだらけで、親に「ムシ」と呼ばれ、しゃべることができない少年と出会う。

同じように親に虐待され人生を搾取されてきた貴瑚は、何とか少年を助けたいと考えるようになる。

見どころ

貴瑚はなぜ大分の海辺の町にやってきたのか。

どんな過去があったのか。

少年を救うことができるのか。

そして貴瑚と少年が交流していくうちに、お互いに影響を受け変わっていくところが見どころになります。

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『52ヘルツのクジラたち』の名言と感想

それではこの本を読んでみた感想を、名言を紹介しながら述べていきたいと思います。

世界で一番孤独なクジラ

虹とクジラ

クジラもいろいろな種類がいるけど、どれもだいたい10から39ヘルツっていう高さで歌うんだって。でもこのクジラの歌声は52ヘルツ。あまりにも高音だから、他のクジラたちには、この声は聞こえないんだ。

(中略)

52ヘルツのクジラ。世界で一番孤独だと言われているクジラ。

引用:町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』P71

どんなに歌っても仲間には届かない。どれだけ近くにいても。

仲間がいるのに交流できないなんて、どれほどの孤独でしょうか。

想像を絶しますね。

これは、わたしだ。

わたしの声は、誰にも届かない52ヘルツの声だったんだ。

引用:町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』P116

貴瑚は実家を出てから、最初のうちはひとりが怖くて眠ることができませんでした。

その時に聴いた52ヘルツで歌うクジラの声。

貴瑚は子どものころ何度もトイレに閉じ込められ、トイレの窓を見上げながら声にならない声を上げていました。

52ヘルツの声は私の声

その声を聴いていると不思議と心が落ち着き、眠れるようになりました。

アンさんもまた、52ヘルツの声をあげる一頭のクジラだったのだ。

きっと、必死に声をあげて歌っていたはずなのに、わたしはその声を聴けなかった。

引用:町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』P202

貴瑚を実家から救い出してくれたアンさんも52ヘルツの声をあげるクジラだった。

周りにいる何でこんなに優しくしてくれるんだろうという人。

もしかしたら人よりも苦しんできたのかもしれない。

実は気づいていないだけで、52ヘルツの声をあげている人は身近にいるかもしれない、と思いました。

何ができるわけではないけど、その声を聴ける人間になりたいとも思いました。

子どもはどんな母親でも大好き

赤ちゃんを抱くお母さん

わたし、お母さんが大好きだった

大好きで大好きで、だからいつも・・・・いつも愛して欲しかった

引用:町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』P112

貴瑚のお母さんは再婚してから変わりました。

義父に罵倒されたり殴られたりしてるのに見て見ぬふり。それどころかお母さん自身もなじったり殴ったり。

こっちを見てくれないとわかっていても、もう抱きしめてくれないとわかっていても、それでも抱きしめてほしい、愛してほしい、大好きだから。

子どもはどんな母親でも大好きなんですよね。嫌いになったり憎んだりできない。

その子どもの思いを願いを踏みにじることができるなんて、それが実の母親だなんて。

なんて悲しいことか。

早く自立してこんな母親とは離れた方がいいんですけど、この親は貴瑚の自立も妨げます。

子どもの人生を何だと思っているのでしょうね。

私は母親になったことはなくて、一人で子どもを育てる不安などわかりません。

なので再婚して経済の安定を守るためにでしょうか、自分の子どもを虐待する気持ちもわかりません。

読んでいて、ただただ腹立たしい気持ちでした。

与えることで救われる

星に伸ばした手

ひとというのは最初こそ貰う側やけんど、いずれは与える側にならないかん

引用:町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』P224

親に衣食住や愛情など貰って大きくなったので、今度は子どもに与える。

先輩に教わってできる人間になったので、次は後輩に教えてあげる。

いつまでも貰う側でいてはいけないんですよね。

私は恵まれてたんだなあって思う。母以外にもたくさんのいいひとに出会えたから、今笑って生きていられる。

だからさ、私もせめて、いいひとになりたいな。この子が大人になった時に笑って生きていられるためのいいひとになりたい。

引用:町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』P114

貴瑚の友達、美晴の言葉です。

ざきざき
ざきざき

ここを読みながら、うんうんと頷いていました。

私もそうだなぁとつくづく思いました。

たくさんのいいひとに出会えたから、今笑って生きていられる。

私も誰かの「いいひと」になりたい。

あんたのことを考えて、あんたのことで怒って、泣いて、そしたら死んだと思っていた何かが、ゆっくりと息を吹き返してたんだ。

わたしはあんたを救おうとしてたんじゃない。あんたと関わることで、救われてたんだ。

引用:町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』P257.8

誰かのことを考えて、誰かのために怒って泣いて、誰かのために一生懸命になっていたら、自分が救われてた。

「情けは人の為ならず」と言いますが、そのとおりだなと思います。

自分にばかり意識がいくと、行き詰ったり死にたくなったりすることがあります。

でも人のことを思っていたら、死にたいなどと考えていられません。

この言葉は忘れないようにしたいです。

まとめ

2021年本屋大賞作品『52ヘルツのクジラたち』の名言と感想をまとめました。

苦しんだ経験があるからこそ人にやさしくできるし、52ヘルツの声に気づくことができる。

『52ヘルツのクジラたち』をまだ読んでいない人は、ぜひ読んでみてください。

本作品のように心温まる本が好きな人はこの記事もぜひご覧ください。

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