【名言と感想】2024本屋大賞8位『星を編む』凪良ゆう

本屋大賞
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この記事では、2024年本屋大賞第8位となった凪良ゆうさんの『星を編む』を紹介します。

『星を編む』は、2023年本屋大賞を獲得した『汝、星のごとく』の続編です。

「続編」は、正直がっかりすることも少なくないですよね。

しかし、本作品は違います。

前作でなぜ?と疑問に思っていたことの答えがあり、また誤解していたこともわかりました。

前作の続きの物語に心から感動し、生きていることの喜びと難しさをあらためて考え、しばらく余韻に浸って動けないほどでした。

そして、本作品にもたくさんの名言が。

その中から厳選した名言と感想をまとめましたので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

この本はこんな人におすすめ
  • 『汝、星のごとく』を読んだ人
  • 自分の生き方に悩んでいる人
  • 本屋大賞に興味がある人

『星を編む』について

タイトル星を編む
著者凪良ゆう
出版社講談社
発行日2023年11月1日
ページ数300P(電子書籍)

本作品は「春に翔ぶ」「星を編む」「波を渡る」の3編が収録された中編集となっています。

『汝、星のごとく』の続編なので、前作を先に読んだ方が感動も大きいと思います。

まだ前作を読んでいない人は、こちらを参考にしてください。↓

本屋大賞受賞作品は面白い?「汝、星のごとく」の名言3選と感想

著者について

著者である凪良ゆうさんのプロフィールです。

京都市在住。2007年に初著書が刊行され本格的にデビュー。

BLジャンルでの代表作に連続TVドラマ化や映画化された「美しい彼」シリーズなど多数。

2017年に『神さまのビオトープ』(講談社タイガ)を刊行し高い支持を得る。

2019年に『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。

2020年『流浪の月』で本屋大賞を受賞。同作は2022年5月に実写映画が公開された。

2020年刊行の『滅びの前のシャングリラ』で2年連続本屋大賞ノミネート。

2022年に刊行した『汝、星のごとく』は、第168回直木賞候補、第44回吉川英治文学新人賞候補、2022王様のブランチBOOK大賞、キノベス!2023第1位、第10回高校生直木賞、そして2023年、2度目となる本屋大賞受賞作となった。本書『星を編む』はその続編となる。

引用:『星を編む』(凪良ゆう 著)

本屋大賞と縁のある作家さんですね。

2020年本屋大賞を受賞した『流浪の月』はわたしも読みましたが、なかなかの衝撃作でした。

紹介記事がありますので、まだ読んでいない人はこちらもご覧ください。↓

【感想】小説『流浪の月』名前がない関係の二人の物語

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『星を編む』を読んだ感想

それでは『星を編む』を読んでみた感想を各編ごとに述べていきます。

「春に翔ぶ」

先生と面談する女子生徒

「春に翔ぶ」は、北原先生が暁海と出会う前の過去の物語です。

北原先生が教師になるまでの経緯と、明日見さんとの出会いから結ちゃんを育てるまでの話が描かれています。

誰もが誰かを想い、悪気なく身勝手で、なにかが決定的にすれちがってしまう。このどうしようもない構図はなんだろう。

これもまた愛の形だと言うのなら、どう愛そうと完璧にはなれないのなら、もうみな開き直って好きに生きればいいのだ。

そうして犯した失敗なら納得できるだろう。

引用:『星を編む』(凪良ゆう 著)電子書籍P79

北原先生の両親も、明日見さんの両親も、悪気なく子どもの夢を奪ってきました。

それは“子どものため”と言いながら。

子ども意志とは無関係に。

子どものことを愛していないわけではない。

でも子どもを苦しめている。

完璧な形にはならない、なら開き直って好きに生きればいい、でもなかなかそうはできませんよね。

その生き方で良かったのかは何十年も先にならないとわからないのかもしれないと、この本の最後まで読んで思いました。

ぼくはどんな人間なのか。なにを欲しているのか。どう生きたいのか。

正答はなく、年を重ねるほどに選択肢は増え、ぼくの海は拡大し続け、混迷と共に豊饒をも謳いだす。

引用:『星を編む』(凪良ゆう 著)電子書籍P94

北原先生は、自分も苦しんだ経験のある人でした。

なので、一生懸命生きているのに、自分の意志があるのに、親に翻弄されて自分らしく生きられなくなっている女性を助けないではいられない。

助けることで自分を救おうとしている人なんだと思いました。

なぜ明日見さんや暁海にそこまで寄り添うことができるのか。

その答えがわかりました。

「星を編む」

女性編集者

「星を編む」は、櫂の漫画の担当編集者だった植木と、櫂の小説を担当する二階堂さんのその後の物語です。

櫂が最後に執筆した小説の刊行に合わせて、絶版になった漫画の復刊と未完に終わった物語の完結を目指します。

この物語で私が一番印象に残ったのは、キャリアを持つ女性の結婚生活の難しさでした。

感情を排して理性だけで判断するならば、経済力のある物わかりのいい理想の夫と営む現代的な結婚、という女にだけ都合のいい幻想に甘えて、わたしは裕一の人生を奪っていた。

それは家事万能で貞淑で口答えをしない理想の妻と営む保守的な結婚、という男にだけ都合のいい幻想となにがちがうのだろう。

引用:『星を編む』(凪良ゆう 著)電子書籍P149

男か女かどちらかにだけ都合のいい結婚しかないのでしょうか。

二階堂の夫の裕一は、広告代理店勤務で経済力もあり、仕事に理解もあり、家事も分担してくれて、キャリアを持つ女性にとっては理想とも言える夫。

しかし裕一は子どもを望んでいました。

編集長になり、仕事が大好きでやりがいをもっている二階堂にとって、出産でキャリアを中断する決心がつかないでいたところ離婚を切り出されます。

子どもを望む夫とキャリアを持つ女性の結婚は成り立ちにくいのが現状ですよね。

どれだけ内心で血を流そうと、わたしにはわたしの聖域があり、それはこれから一生わたしを支えてくれるだろうと。

引用:『星を編む』(凪良ゆう 著)電子書籍P162

男性と同じようにバリバリ仕事ができると、女性と言うだけで蔑みや妬みの対象となります。

仕事で嫌な思いをしたり、プライベートで悲しいことがあったとしても、二階堂には「聖域で一生支えてくれる」仕事があることがとてもうらやましいと思いました。

仕事でなくてもそのようなものを持っている人は強いですね。

二階堂とは真逆で植木は保守的な結婚でした。

植木のような激務で子どもがいたら、妻は専業主婦でないと成り立ちません。

それはそれで妻にとって夫は相談相手にもならず、ただ元気でお金を稼いでいてくれたらいい、と。

結婚とは何なのだろうとずーっと考え続けています。

「波を渡る」

星空で手をつなぐカップル

「波を渡る」は櫂が亡くなった後の北原先生と暁海の物語です。

暁海38歳・北原先生52歳から20年後までが描かれています。

2人はお互いをとても大切に思っていますが、その気持ちに変化が訪れる。

暁海の櫂に対する思いも。

人は生きている限り変わり続けると明日見さんは言いました。

確かに暁海さんと櫂さんは大恋愛だったんでしょう。彼を失って、物語ならそこで終わって永遠になるんでしょう。

でも暁海さんの人生はそのあとも続くんです。彼のいない世界を毎日、毎日、これからもずっと生きていかなくてはいけません。

どれだけ時間を止めたくても、嫌でも進まざるを得ない。そして生きている限り人は変わり続けます。

引用:『星を編む』(凪良ゆう 著)電子書籍P209

明日見さんの言うとおり、『汝、星のごとく』は彼を失って物語が終わりましたね。

でも暁海さんの人生はそのあとも続く。彼のいない世界に慣れていく。

そして変わる続ける物語が「波を渡る」です。

ぼくはこの結婚の最初から、彼女が望むならどこにでも飛んでいってほしいと思っていた。それこそがぼくの使命のように感じていた。

なのに離婚を切り出されたとき、予想外に焦った。彼女がここから飛び立っていくのを引き止めたいと思ってしまった。ぼくはどうして──。

引用:『星を編む』(凪良ゆう 著)電子書籍P219

北原先生以外の人、読者の皆さんは「どうして」だかお見通しですね。

この続編を読むと、北原先生に対する印象ががらりと変わりました。

もっといつでも落ち着いて、揺るがない人なのかなと思っていましたが違いましたね。

自分のことを言われるのは慣れている。

けれど北原先生を貶められることは許せなかった激しい怒りの感情にわたし自身が戸惑うほどに

引用:『星を編む』(凪良ゆう 著)電子書籍P235

そして暁海にも変化が。

知りもしない北原先生のことを悪く言われたときに起きた、激しい怒りの感情に暁海自身がびっくりします。

これもなぜなのか、皆さんにはお見通しですね。

お互いの幸せを願うあまり2回の離婚危機がありました。

その時の2人のやりとりがコントみたいで面白かったです。初めてのけんかも。

どんなに長く家族として暮らしていても敬語のままで、お互いに思いやりを忘れない2人がとても温かくて素敵だと思いました。

2人の関係のように変わったものもありましたが、何十年経っても変わらないものもありました。

まだ読んでいない人は、ぜひ本を読んで確認してみてください。

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『星を編む』の名言

それでは、ここからは『星を編む』に出てきた名言をいくつか紹介します。

置かれた場所で咲くことを美徳とするこの国の文化について考えた。

身の程をわきまえ、謙虚で辛抱強くあれ。それが真の美しさというものであるという無形の圧。

けれど置かれた場所で咲ききれない花もこの世にはある。

引用:『星を編む』(凪良ゆう 著)電子書籍P48

この国の美徳や無形の圧で苦しんだことのない人はいないのではないでしょうか。

ただ辛抱しろ、それがあなたのためだ、ではなく、「置かれた場所で咲ききれない花」もあるということを覚えていようと思います。

わたしたちは恋をするより仕事をするほうがずっと楽しいし、ずっと自由でいられるし、ずっと遠く高くまで翔べる。

そんな存在は恋人よりも得がたいことを知っている。

引用:『星を編む』(凪良ゆう 著)電子書籍P162

植木と二階堂の関係です。

時々2人で飲みに行く仲で、お互いを尊敬していて、人間として好き。

いつでもなれるけど、男女の関係には決してならない。

その方がずっと自由で、ずっと遠くまで高く飛べて、恋人より得がたい存在というのはよくわかる。

男女の仲より人間としての仲でいる方が心地よく感じるようになったのは、歳のせいでしょうか。

ざきざき
ざきざき

植木に対して、二階堂に言うように奥さんも労ってあげてよ、と思ってしまいました。

いかに自分らしく生きたか、最後に残るのはそれだけよ

引用:『星を編む』(凪良ゆう 著)電子書籍P200

瞳子さんの言葉です。

瞳子さんらしいですね。

「自分らしく」生きる選択肢というのは無限にあるわけではなくて、限られた選択肢の中から選ぶしかない。

その中で一番自分らしい生き方を選択するには、強さと勇気が必要だと思いました。

人生は凪の海ではなく、結婚は永遠に愛される保証でも権利でもなく、家族という器は頑丈ではなく、ちょっとしたことでヒビが入り、大事に扱っているつもりが、いつの間にか形が歪んでいることもある。

引用:『星を編む』(凪良ゆう 著)電子書籍P245

この続編を読んで、登場する男性たちに対する見方が変わりました。

前作では、櫂や暁海の父、北原先生はみんな女性を泣かすクズだと思っていました。

特に暁海の父。

愛人の家に行ったきり帰ってこなくなる。母はおかしくなって愛人宅に火をつけようとする。

それでも父は帰ってこない。

なかなかの修羅場でした。

なぜそんなことができるのか、責任感はないのか、なぜ裏切るのかと憤りました。

でも人の気持ちはどうにもならない。

“浮気”ではなく、どうしようもなく好きになってしまうことは、ある。

すべてを捨てても一緒にいたいと思う人が現れてしまうことが。

いくら自分では大事にしていたとしても、家族だ夫婦だとしても、永遠を保証などされていない。

最善は尽くすけど、依存してはいけないし、いざとなったら波に身を任せるように生きられればいいと思いました。

最後に

2024年本屋大賞8位となった『星を編む』を紹介しました。

『汝、星のごとく』を読んだ人には、ぜひ読んでほしい作品です。

『星を編む』を読んで、本当の結末を迎えます。

櫂の死後、暁海たちが変わっていったように、『星を編む』を読んだ私たちも変わっていきます。

ぜひ一緒にその変化を味わいましょう。

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『星を編む』は電子書籍でも読むことができます。電子書籍で読むなら、専用リーダーがあると、目が疲れなくて楽ちんですよ。

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