【感想】2024本屋大賞第7位『リカバリー・カバヒコ』

本屋大賞
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この記事では、2024年本屋大賞7位となった青山美智子さんの『リカバリー・カバヒコ』を紹介します。

体や心が辛い状況のとき、人は何かにすがりたくなりますよね。

病気やケガなど治したい部分を触ると回復するというカバのアニマルライド(カバヒコ)のお話です。

読後はほんのり心が温まり、自分自身を見つめ直したくなるこの本を読んだ感想をまとめました。

ぜひ最後まで読んで、この本を手に取っていただけたら幸いです。

この本はこんな人におすすめ
  • なで仏をなでずにはいられない人
  • まとまった読書時間を取れない人
  • 本屋大賞に興味がある人

『リカバリー・カバヒコ』について

リカバリー・カバヒコ
タイトルリカバリー・カバヒコ
著者青山美智子
出版社光文社
発行日2023年9月21日
ページ数196P

この本は、カバヒコにリカバリーしてもらった5人のお話が収録されている短編集です。

5人とも「アドヴァンス・ヒル」という新築マンションの住民で、「サンライズ・クリーニング」の常連さんたち。

世間は狭いというのをつくづく感じられます。

著者について

著者である青山美智子さんのプロフィールです。

  • 1970年生まれ、愛知県出身、横浜市在住。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として2年間勤務。帰国後、出版社で雑誌編集者を経て執筆活動に入る。
  • 2017年『木曜日にはココアを』(宝島社)で作家デビュー。
  • 2020年『木曜日にはココアを』(宝島社)第1回宮崎本大賞
  • 2021年『月曜日の抹茶カフェ』(宝島社)第1回けんご大賞
  • 2021年『猫のお告げは樹の下で』(宝島社)第13回天竜文学賞
  • 2021年『お探し物は図書室まで』(ポプラ社)本屋大賞2位
  • 2022年『赤と青とエスキース』(PHP研究所)本屋大賞2位
  • 2023年『月の立つ林で』(ポプラ社)本屋大賞5位

2021年から4年連続で本屋大賞のノミネートされています。

出す本出す本、書店の店員さんのおすすめになるなんて、すごいですね。

まだ他の本を読んでいないので、チェックしたいと思います。

見どころ

カバヒコは、治してとお願いされたところをただ治すのではありません。

本当の原因をあぶり出し、根本から解決をしてくれます。

登場する5人が本当は何が原因で不調になり、どのようにリカバリーしていったのかが見どころになります

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『リカバリー・カバヒコ』を読んだ感想

それでは本作品を読んだ感想を各話ごとに述べていきます。

第1話 奏斗の頭

テスト

奏斗は中学卒業と同時に引っ越し、都内の進学校に通うことになった。

中学で3位までに入っていた奏斗は、初めての中間テストで42人中35位という成績を取り、プライドがずたずたになる。

真っ直ぐ家に帰る気にならず遠回りしていると、「日の出公園」があった。

公園のすみっこにあるカバのアニマルライドに気がついて近づくと後頭部に「バカ」の落書きが。

せつなくなった奏斗はなんとか落書きを消せないか試みる。

公園で同じクラスの雫田さんに出会います。

6人兄弟で、バイトをしながら勉強もできる雫田さん。

彼女の言葉にグッときました。

でも順位なんてさ、いつだって、狭い世界でのことだよ

(中略)

たとえば陸上のオリンピック選手って、それはもう、そこに出てるだけでめっちゃすごいんだけどさ。

だけど、ホントのホントに世界一なのかって言ったらわかんないじゃん。

電波が届かないくらい人里離れた山奥に住む少年のほうが足速いかもしれないよね。

引用:青山美智子『リカバリー・カバヒコ』電子書籍P17・18

こんなふうに考えたことがありませんでした。

確かにそうですよね。

だから、雫田さんは「自分が頑張りたいから」頑張っている。

人と比べないから自分の軸がぶれない。

賢くて強い女の子だと思いました。

第2話 紗羽の口

ママ友

紗羽の娘みずほは「アドヴァンス・ヒル」に引っ越したために幼稚園も転園した。

新しい幼稚園で、紗羽はリーダー格の明美に強引に誘われ、バザー係を担当することに。

ママ友たちに嫌われないように当たり障りのない対応をしていたが、あることをきっかけに省かれるようになる。

とにかくママ友のグループって恐ろしいです。

顔色をうかがって、無理に合せているとペースを乱され、嫌な気持ちが積み重なります。

ストレスになりますね。

そしてそうやって無理に合せている方がターゲットになりやすい気がします。

実際に、紗羽はちょっとのことで手のひらを返されました。

自分だったら、、、と考えても、どのように対処したらいいのかは難しいですね。

そんな中でもみんなに合わせないママがいました。

決して感じが悪いわけではないのに、挨拶だけして去っていくために、酷い言われようの絹川さん。

でも自分の意見をしっかり持っていて、必要なことを言える人でした。

陰口を言われようと、絹川さんのように初めから適度に距離を取るのが正解なのだと思いました。

第3話 ちはるの耳

ブライダルプランナー

ブライダルプロデュースの会社に勤めるちはるは、耳がふさがれるような閉塞感に悩まされるようになった。

耳鼻科での診断は「耳管開放症」

過労とストレスが原因なので休みように言われ、休職すること。

なぜこんなことになったのか、会社の人間関係を思い出してはいろんな感情が出てきて、休んでいるのに休まらないことに悩み出す。

顔色の悪いちはるに、サンライズ・クリーニングのおばあさんが言った言葉にグッときました。

不安っていうのも立派な想像力だと、あたしは思うね

「……想像力?」

「そうだよ。不安っていうのは、まだ起きていないこととか、他人に対して抱くものだろ。それを思い描けるっていうのは、想像力がある証拠」  

引用:青山美智子『リカバリー・カバヒコ』電子書籍P101

先のことじゃなくて、誰かのことじゃなくて、今の自分の気持ちだけを見つめてごらんよ

飴でも舐めながらさ。

引用:青山美智子『リカバリー・カバヒコ』電子書籍P102

自分が何に対して不安に思っているのか、それはなぜなのか、とか突き詰めて考えるということをしていないと気づきました。

誰かのせいにしても不安はなくならないんですよね。

すぐ人のせいにしてしまうので、グサッときました。

自分の考え方や先入観、被害妄想が原因だったりするんですね。

不安や怒り、憎しみなど負の感情でどうしようもなくなったときは、飴でもなめながら自分の気持ちを見つめること。

この言葉を忘れないようにしようと思いました。

第4話 勇哉の足

駅伝

勇哉は小4にあがるタイミングでアドヴァンス・ヒルに越してきた。

新しい学校ではやたらと行事ごとが多い。

11月の駅伝大会にはクラスから3名が出場することになっているが、立候補は2名だったのでクジ引きをすることに。

どうしても駅伝大会に出たくない勇哉は、足を捻挫したことにしてクジ引きを逃れることに成功する。

捻挫をした“フリ”だったのに、実際に足が痛くなってしまった勇哉が、整体師に言われた言葉がグッときました。

痛いとか治らないんじゃないかとか、足に意識が持っていかれているとまた頭が間違えちゃうからね。

不安な気持ちには、立ち向かうより、そらすってことも大事なんだ。

引用:青山美智子『リカバリー・カバヒコ』電子書籍P136

立ち向かうより、そらす。

これは痛み以外にも使える!と思いました。

そして「足から意識を飛ばす練習」は、伊勢崎さんの言うとおり、目の前のことに集中するように心がけた。

びっくりした。意外な効果の連続だった。

たとえば、ごはんを食べるとき、何が入っていて、どんなふうに調理されているかをちょっと注意して見るだけで、前よりもおいしく感じた。

歯をみがくとき、歯のことだけを考えていたら一本ずつていねいにブラシを当てようという気になった

引用:青山美智子『リカバリー・カバヒコ』電子書籍P141

足から意識を飛ばすために目に前のことに集中する、ということが大事なんですね。

何となく意識しないでやっちゃってることがほとんどではないかと反省しました。

自慢じゃないですけど、食事に関してだけは集中できています。

これで食事作りが苦痛でなくなった!『一汁一菜でよいという提案』で紹介していますが、一汁一菜をするようになってから、素材のおいしさを噛みしめています。

それを食事だけでなく、何かをするたびに集中するようになれば、もっともっと豊かな人生がおくれるはず!と思いました。

第5話 和彦の目

介護

和彦はここ数年、細かいものが見えづらくなり、心も体もきつく無理がきかなくなってきた。

和彦はサンライズ・クリーニングを一人で経営している母親が心配なこともあり、近くのアドヴァンス・ヒルに越してきた。

母親を気にかけてはいるが、ずっと疎遠にしていたためどう近づいたらいいのかわからず、やることなすこと裏目に出てしまう。

しかし妻の美弥子は20年も前から電車で通い、クリーニングを出しに来てくれていたことを知る。

この話は読んでいてとても身につまされました。

私自身が和彦と同年代で、体も心も無理がきかなくなっていること、親の老いの問題もあるからです。

自分の老いと親の老い、考えると暗くなりそうですね。

人間の体ってね、病気や怪我のリカバリーのあと、まったく同じようには戻らないんだって、整体師さんが言ってました。

(中略)

同じようには戻らないけど、経験と記憶がついて、心も体も頭も前とは違う自分になるんだって

引用:青山美智子『リカバリー・カバヒコ』電子書籍P172

日の出公園で、第4話の勇哉くんに出会い、勇哉くんが教えてくれたことです。

この話のキーワードは「アレンジ」でした。

元には戻らない。でもアレンジして使う。

老いた体も若いときと同じようにではなく、使い方を変えていく。

人との関係も元通りに戻すのではなく、アレンジして新たな関係を築いていく。ということですね。

第3話で、ちはるにすごくいいことを言ってくれたサンライズ・クリーニングのおばあさん。

でも相手が息子となると、全く素直ではなく、憎まれ口ばかり。

そのギャップに驚きましたが、誰しもそんなところありますよね。

外面と内面と言いますか。

この物語を読んでから、もう少し素直になろうと思いました。

最後に

2024年本屋大賞7位となった『リカバリー・カバヒコ』を紹介しました。

5話とも他人事とは思えない物語で、自分自身を振り返るきっかけとなります。

まだ読んでいない人は、ぜひ読んでみてください。

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『リカバリー・カバヒコ』は電子書籍でも読むことができます。電子書籍で読むなら、専用リーダーがあると、老眼であることも忘れて夢中になれますよ。

2024年本屋大賞ノミネート作品をまとめた記事があります。ぜひご覧ください。

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