この記事では、2022年本屋大賞第2位となった、青山美智子さんの『赤と青とエスキース』を紹介します。
この物語は、1枚の絵が見届けてきた人々の30年に渡る大河小説です。
そして、本の構成に、その仕掛けにとても驚かされます。
こんな小説読んだことない!と思いました。
読後感もさわやかなこの本を読んだ感想を、本に出てくる名言を紹介しながらまとめました。
ぜひ最後まで読んで、本選びの参考にしていただければ幸いです。
『赤と青とエスキース』について
タイトル | 赤と青とエスキース |
著者 | 青山美智子 |
出版社 | PHP研究所 |
発行日 | 2021年11月10日 |
ページ数 | 209P |
本の表紙もオシャレですよね。
それだけで手に取って読んでみたくなります。
この本は連作短編集になっていて、構成は次のようになっています。
- プロローグ
- 1章 金魚とカワセミ
- 2章 東京タワーとアーツ・センター
- 3章 トマトジュースとバタフライピー
- 4章 赤鬼と青鬼
- エピローグ
「エスキース」という1枚の絵が、どのように誕生し、どんな場所でどのような人々に出会ったのか。
画家やモデルはどうなったのか。
続きが知りたくて、一気読みしてしまいました。
ページ数も多くはなくサクッと読める本なのに、衝撃と感動を与えてくれて、何度も読み返したくなる本です。
著者について
著者である青山美智子さんのプロフィールです。
1970年生まれ、愛知県出身。横浜市在住。 大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国、上京。出版社で雑誌編集者を経て執筆活動に入る。
第28回パレットノベル大賞佳作受賞。デビュー作『木曜日にはココアを』が第1回宮崎本大賞を受賞。
『お探し物は図書室まで』が2021年本屋大賞2位に選ばれる。
他の著書に『猫のお告げは樹の下で』『鎌倉うずまき案内所』『ただいま神様当番』『月曜日の抹茶カフェ』など。
引用:『赤と青とエスキース』(青山 美智子 著)
2021年から4年連続でノミネートされている、本屋大賞常連の作家さんですね。
そのうち3作(『リカバリー・カバヒコ』『お探し物は図書室まで』と本作)は読みました。
どれも心温まる作品で、安心して読むことができますよ。
『赤と青とエスキース』の名言と感想
それでは、本作品の感想を名言を紹介しながら述べていきます。
1章 金魚とカワセミ
レイは交換留学生としてメルボルンに来ていた。
思ったような留学生活を送れず、友達の1人もできていない。
そんなある日、日系人のブーと出会う。
レイは年明けには日本に帰らないといけないため、期間限定でブーと付き合うことになった。
「始まると終わる」
恋愛に躊躇するレイの気持ちはとても共感できました。
私も同じようなネガティブ思考があったからです。
いつまで続くのかわからない、終わりを告げられるのが怖い。好きになりすぎるのも怖い。
でも人生経験を重ね、おばさんになった私は、もうそんなことは考えません。
その人でなければならないなんてことはないし、その人がいないと生きていけないわけでもないんですよね。
そんな風に思うようになるなんて、いいことなのかはわかりませんけど。
では、1章に出てきた名言を紹介します。
そのときに年を重ねた自分のことを悲しく思わないで、誇りを持てるように私はなりたいの。
あの頃はよかったなあって嘆くんじゃなくて、箱の中にいる若い私にちゃんと胸が張れるように。
引用:『赤と青とエスキース』(青山 美智子 著)電子書籍P35
誰でも玉手箱を持っている。
箱を開けて過去を懐かしんで、年を取ったことを知ったとき、悲しくなってしまいますよね。
でも、、、
50歳を超えて、年を取ったことをしみじみ感じることが多くなった私の心に突き刺さる言葉でした。
これからまだまだ年を取っていきます。
今からでも、「誇り」を持てる自分になろうと思いました。
レイは日本に帰る数日前、ブーの友達で画家の卵ジャック・ジャクソンの絵のモデルになります。
その絵につけられた名前は「エスキース」
エスキースは下絵のこと。
「下描き」ではなくて、本番とは違う紙や板に自由に描いて構想を練るのだそうです。
2章 東京タワーとアーツ・センター
空知はメルボルンで出会ったジャック・ジャクソンの書いた1枚の絵が忘れられず、額縁職人になった。
素晴らしい絵があまりにも粗末な額縁に入れられていたからだ。
額縁職人として1人前になったころ、展示会に出品する絵の額縁を、空知の工房が請け負うことに。
出品する絵のリストの中には、ジャック・ジャクソンが描いた『エスキース』があった。
今まで美術館などで絵を見るときに、額縁に注目したことはありませんでした。
絵より目立たぬよう、でも絵を引き立てるように額縁が作られていることを初めて知りました。
そんなに気持ちがこもっているなら、額縁もきちんと見ないとですよね。
また、1章では貧乏で道具を手作りしていたジャックが、日本で展示会に出品されるまでになっていたことが感慨深かったです。
それから、同じ美大を出た空知の友達は、絵とは関係のない仕事に就きました。
でも、空知は絵を生かせる仕事ができて、1つのことを続けられるのは素晴らしいことだと思いました。
2章に出てきた名言を紹介します。
昔の日本には優れた技術がたくさんあったのに、口伝でしか継承されないから消えてしまったものがいくつもある。
オートメーション化が進んで、後継者をじっくり育てる余地もない。
産業革命のあとに育ったのは、弟子じゃなくてビルばっかりだ。
引用:『赤と青とエスキース』(青山 美智子 著)電子書籍P79
長くてすみませんm(__)m
江戸時代の文献はきちんとした形で残っているのに、ここ100年のものはそんなにもたなくて粉々になっている。
文献だけでなく、いろいろなものが「退化」してしまっているように感じます。
日本らしさがどんどん失われていますよね。
オートメーション化でいいこともあったでしょうけど、失ったものも大きいと思いました。
3章 トマトジュースとバタフライピー
漫画家タカシマ剣の元アシスタント砂川凌が、ウルトラ・マンガ賞を受賞し、対談することになった。
対談場所の喫茶店でふと壁の方を見ると、長い髪の女の肖像画があった。
3章に出てきた名言を紹介します。
人のことはハッキリ見えるけど、自分のことはまったくわからない。
鏡やカメラがあったって、結局それは変わらない。
引用:『赤と青とエスキース』(青山 美智子 著)電子書籍P79
自分が自分のことを一番わかっていない、ということはありますよね。
自分の目で見ている自分と、他人から見える自分がまるで違うということが。
砂川は、師匠のタカシマ剣にまっすぐに「あなたは○○だ」と言ってくれました。
自分がコンプレックスに思っていたことが、砂川から見たらそうではなかった。
砂川のように正直に言ってくれる人がいたなら、そんな人は貴重なので、大事にしなきゃと思いました。
4章 赤鬼と青鬼
50歳で転職し、輸入雑貨店で働く茜は、オーナーにイギリスに買い付けに行ってくれないかと言われる。
1人で買い付けを頼まれるほど信頼されたことを喜ぶ茜だか、パスポートを元彼蒼の家に置いてきたことを思いだし憂鬱になる。
そんなある日、電車の中で突然動悸が激しくなり息ができなくなる。
心療内科で「パニック障害」と診断され、仕事を休むことになった。
何十年と一緒に暮らしていたって、相手の考えていることはわからないものなんだなと思いました。
当たり前なんですけどね。違う人間なので。
そして、自分の本当の気持ちもわからなかったりします。
1つの考えにとらわれてしまって、他の考え方をすることができなくなる。
素直になるのは難しいとつくづく思いました。
4章の名言を紹介します。
でも私はね、人生は何度でもあるって、そう思うの。
どこからでも、どんなふうにでも、新しく始めることができるって。そっちの考え方のほうが好き
引用:『赤と青とエスキース』(青山 美智子 著)電子書籍P170
人生は1度きりだからってよく聞きますよね。
でも1度きりと思うと、思いっきり生きるのが難しくなる、とオーナーは言いました。
人生は何度でもあって、いつでも新しく始めることができるという考え方は素敵ですね。
あきらめる必要はないんですから。
1章を読んだあと、レイとブーはどうなったのか、ずーっと気になりながら読み進めました。
「エスキース」の絵は出てくるけど、、、2人は?
4章のラストで驚かされ、エピローグでさらに驚かされます。
そうなったら、もう1度そういう目で読み返すしかありません。
ネタバレになるので、こんな書き方をお許しください(;^_^A
少なくとも、2度味わえる物語でした。
最後に
2022年本屋大賞第2位を獲得した、青山美智子さんの『赤と青とエスキース』を紹介しました。
1枚の絵が見届けてきたレイとブー、そして画家であるジャック・ジャクソンの30年に渡る物語です。
何度も読み返したくなるこの本を、まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。
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青山美智子さんの本は『リカバリー・カバヒコ』と『お探し物は図書室まで』もおすすめです。
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