【感想】朝井リョウ『正欲』多数派が正しい世界の多様性

本屋大賞
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この記事では、2020年本屋大賞にノミネートされ、第34回 柴田錬三郎賞を受賞した作品『正欲』(著:朝井リョウ)を紹介します。

まさに今の時代の小説だと思いました。

多様性、ダイバーシティ、LGBT、ユーチューバーなど、最近よく聞く言葉です。

マイノリティと言われている人たちは、おそらく昔からいたのではないかと思います。

それが、当事者ではなく他の人から声高に「受け入れましょう」と叫ばれる。

それって一体誰のためなんだろうとこの本を読んで思いました。

多様性について考える前に、マイノリティについて私たちはちゃんと知って理解しているでしょうか?

知っているという人も、ぜひこの本を手に取って読んでみて欲しいと思います。

それから多様性について考えても遅くはありませんよ。

この本はこんな人におすすめ
  • 多様性に興味のある人
  • 世の中に対する視野を広げたい人
  • 映画化された作品に興味がある人

『正欲』について

タイトル正欲
著者朝井リョウ
出版社新潮社
発行日2021年3月26日
ページ数410P(電子書籍)

まずタイトルにグッと惹かれました。

正しい欲?って何だろう、と。

本を読んでみると、まさしく「正欲」の話であり、これ以上ないタイトルで著者のセンスを感じました。

著者について

著者である朝井リョウさんのプロフィールです。

岐阜県生まれ。小説家。『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。『何者』で第148回直木賞、『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞、『正欲』で第34回柴田錬三郎賞を受賞。ほかの著書に『どうしても生きてる』『死にがいを求めて生きているの』『スター』などがある。

引用:新潮社公式サイト

私はエッセイの『風と共にゆとりぬ』が好きです。

読みながらずっと爆笑していました。

涙を流しながら笑いたいときにおススメです!

作品の振り幅があって面白い作家さんだと思います。

『正欲』のあらすじ

不登校で引きこもりになり、ユーチューバーになった小学生の息子を持つ検事の寺井啓喜。

ショッピングモールの寝具店で販売員をしている桐生夏月。

大手食品会社で商品開発をしている佐々木佳道。

大学の文化祭実行委員を務め、ミス・ミスターコンテストを廃止し、ダイバーシティフェスの開催を企画する神戸八重子。

大学のダンススクール所属で八重子の企画に参加予定の諸橋大也。

みんなそれぞれ人に言えない悩みを抱えて生きてきた。

元号が平成から令和に変わってすぐに起きたある事件には、それぞれの悩みやつながりが関係していたことが明らかになっていく。

見どころ

自分は多数派で正しいと思っている人たちの無意識な傲慢さ、「受け入れる」という上から目線を自覚させられること。

多様性からはみ出てしまっている人たち、マイノリティに当てはまらない人たちの苦しみ、悩み、孤独が見どころになります。

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『正欲』の感想

それでは『正欲』を読んでみた感想を、グサッときた言葉を紹介しながら述べていきたいと思います。

多様性のことを全然わかっていなかった

何組もの男女ペア

多様性のことをわかったつもりで全然わかっていなかった、ということがわかりました。

そしていかに自分が無知で視野が狭かったかを思い知りました

恋愛対象が異性ではない、とか、性同一性障害とか、 今となっては広く認知され、わかりやすいものばかりではないからです。

なんで世間が言うマイノリティにも当てはまらないんだよ

引用:朝井リョウ『正欲』電子書籍P199

性的対象が人間とは限らない。

私はそのことに目を向けたことはありませんでした。

いわゆる○○フェチの種類は数限りなくあるのですね。それを「気持ち悪い」の一言で終わらせたら、多様性は成り立たないのだと思いました。

水に興奮します。窒息に、風船に、ミイラのような拘束に、小さな子どもが電気あんまで悶えている姿に興奮します。

(中略)

特殊性癖である夏月にさえ想像できないような人がそこには沢山いる。

引用:朝井リョウ『正欲』電子書籍P197

多様性とは、都合よく使える美しい言葉ではない。自分の想像力の限界を突き付けられる言葉のはずだ。時に吐き気を催し、時に目を瞑りたくなるほど、自分にとって都合の悪いものがすぐ傍で呼吸していることを思い知らされる言葉のはずだ。

引用:朝井リョウ『正欲』電子書籍P197

「気持ち悪い」と思えるような人が、すぐそばで呼吸していることを想像したことがありますか?

気づかないだけで、すぐそばにいるかもしれないなんて、私は考えたこともありません。

この本を読んで、多様性という言葉に持っていたイメージがガラッと変わりました。

そして多様性という言葉は、軽々しく口にできるものではないとも。

私はわかったつもりで何もわかっていませんでした。

後味がいいとは言えない

孤独な女性

読み終わったとき「え?これで終わり?」と思ってしまい、後味スッキリとはいきませんでした。

でもそれは当たり前のことですね。

この本に出てくるマイノリティにも当てはまらない人たちにとって、この世界が生きやすくなったわけではありませんから。

逆にハッピーエンドでスッキリだと一気に嘘くさくなってしまったでしょう。

まずは知ること。いろんな性的思考の人がいるということを。 理解を超えた人たちがいるということを。

そして多数派は正しいのか、自分に問い直すことが大事だと思いました。

あなたの抱えている苦しみが、他人に明かして共有して同情してもらえるようなもので心底羨ましいと。

(中略)

誰かにわかってもらおうと思うこと自体が無駄なのだ。私の人生は

引用:朝井リョウ『正欲』電子書籍P193

せめてこのような人がいなくなる世の中になってほしい。

誰か一人でもいい。わかってくれる人がいれば、生きている意味ができます

この世界で生きていくために手を組みませんか。

引用:朝井リョウ『正欲』電子書籍P243

佳道と夏月はお互いにわかってくれる人でした。

どんなふうに生まれたって生きていける、生きていていいと思える。そんな社会なら一番いいけれど、そうではないので、そんな空間を自分で作るしかないのだと感じる。

引用:朝井リョウ『正欲』電子書籍P245

この世界で生きていくために手を組み、生きていていいと思える空間を作った佳道と夏月。

この二人の関係は、『流浪の月』の文と更紗を思い出させました。(紹介記事:【感想】小説『流浪の月』名前がない関係の二人の物語

性的対象が女性でなくても、人間でなくても、人間は一人では生きていけないのだと改めて思いました。

誰がどう思うかは誰にも操れない

悩む男女

誰がどう思うかは、誰にも操れない。

引用:朝井リョウ『正欲』電子書籍P360

当たり前のことですが、他人の思考まで操ることはできません

ミスコンを廃止したからって、性的に見られることを排除できるわけではない。

法律で縛ったところで「感じる」ことまで縛ることはできない。

思う、感じることにいいも悪いもない。

でも女性にしたら、好きでもない男性に性的な感情を持たれたら気持ち悪いと思ってしまう。

「正しい」とされる異性への性的感情でも、男性と女性では相容れないところがあります。

まして、性的思考は異性どころか人間に対してだけではない、ということをこの物語から知りました。

「多様性」とは「こうすればいい、こうすれば共存できるよ」なんて簡単なものではない。

『正欲』を読んだからといって、マイノリティに当てはまらない人たちのことを理解できたなんてとても思えない

まだ「知った」にすぎない。と思いました。

『正欲』を読んだ人の口コミ

『正欲』を読んだほかの人の感想が気になったので、調べてみました。

「正しい」って何か考えさせられますよね。

こちらは映画も観た人の感想ですね。

自分が多数派で正しいと思っている人ほど、無意識に人を傷つけているんですよね。

全くの同感です。

読んでいる最中にはいろんなことを考えるんですけど、感想を書くとなると難しいです(;^_^A

みなさんの感想を見て、感情ではなく思考を揺さぶられる本なんだと思いました。

まとめ

2020年本屋大賞ノミネート作『正欲』について紹介しました。

この本は、私の世界を一回り大きく広げてくれました。

小説を読むメリットを十分味わえるこの本を、まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。

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