この記事では、2017年本屋大賞にノミネートされ、また第155回芥川賞受賞を受賞した『コンビニ人間』(著:村田沙耶香)を紹介します。
この本はある意味私にとっては衝撃作でした。
ページ数は多くはなく、サクッと読めるのですが、自分の視野が狭かったことを痛感させられました。
この本を読んでみた感想と口コミをまとめましたので、『コンビニ人間』を手にして読むきっかけにしていただけたら幸いです。
『コンビニ人間』という本について
タイトル | コンビニ人間 |
著者 | 村田沙耶香 |
出版社 | 文藝春秋 |
発行日 | 2016年7月27日 |
ページ数は電子書籍で133ページですので、まとまった読書時間が取れない人にもおすすめです。
『コンビニ人間』というタイトルからして興味をそそり、思わず手に取ってしまいますね。
著者について
著者である村田沙耶香さんのプロフィールです。
- 1979年、千葉県生まれ。玉川大学文学部卒業。2003年「授乳」が第46回群像新人文学賞優秀作となりデビュー。
- 2009年『ギンイロノウタ』で第31回野間文芸新人賞受賞。
- 2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞。
- 2016年『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞受賞。
いろいろな文芸賞を受賞されている作家さんですね。
『コンビニ人間』のあらすじ
恵子は大学卒業後も就職せず、18年間コンビニでバイトをしている。
幼いころから自分は他の人とは違うと自覚し、「治りたい」と思いながらもどうしたら「治る」のかわからず、なるべく言葉を発せずおとなしく生きてきた。
しかし全てがマニュアル化されているコンビニで働くようになってから、自分の居場所ができて、「世界の部品」になることができた。
ある時、白羽という男が新しくバイトとして入ってくる。
『コンビニ人間』の見どころ
自分には理解しにくい人の考えがよくわかるところが見どころになります。
恵子は幼いころ小鳥が死んでいるのを見て「焼いて食べよう」と言ったり、取っ組み合いのけんかをしている男子を止めるためにスコップで殴ったりする“変わった”女の子でした。
普通とは違って見える人がどういう思考でそのような行動に出るのか、またそのような人の悩みや苦しみがこの本には詳しく書いてあります。
『コンビニ人間』を読んでみた感想
それでは私がこの本を読んだ感想を述べていきます。
主人公の観察力がすごい
この本の冒頭から、もしかしてこの主人公はアスペルガー症候群ではないかと思いました。
私はアスペルガーと診断を受けた人と一時期付き合っていたことがあります。
どのような特徴があってどう対処したらよいかを本を読んで勉強したことがありました。
あるときその元カレが「相手の表情を見て気持ちを理解することができない。なので勉強してわかるようになった。こういう顔の時は怒っているとか。」と言ったのにびっくりした覚えがあります。
相手をよく観察して学習していったんですね。
この本の主人公恵子も観察力がすごいです。そのすごさがわかる言葉があります。
私は菅原さんの表情を盗み見て、トレーニングのときにそうしたように、顔の同じ場所の筋肉を動かして喋ってみた。
引用:『コンビニ人間』村田沙耶香 電子書籍P25
顔のどの筋肉が動いているのかを見ることって私はありません。
感情と表情が勝手に連動して動きますが、そうでない人がいるんですね。
何かを見下している人は、特に目の形が面白くなる。
引用:『コンビニ人間』村田沙耶香 電子書籍P53
恵子はほとんど怒ることがありません。ここは自分も怒ったふりをした方がいいと思ったときに、周りに合わせて表情や話し方を作ります。
日頃は冷静に観察して分析しているんですね。
私は本で勉強はしましたが、実際にどう考えているのかはわかりませんでした。
この本では恵子の気持ちが詳細に書いてあります。
共感はできませんでしたが、そのように考えているということを知ることが出来ました。
「普通」でない人は排除される
正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。まっとうでない人間は処理されていく。そうか、だから治らなくてはならないんだ。治らないと、正常な人間に削除されるんだ。
引用:『コンビニ人間』村田沙耶香 電子書籍P64
ここでの「まっとうでない」は結婚も就職もしていないこと。
店長は、仕事か家庭で社会に属するのが義務だと言います。
ここ二週間で14回「何で結婚しないの?」と言われた。「何でアルバイトなの?」は12回だ。
引用:『コンビニ人間』村田沙耶香 電子書籍P73
就職や結婚していることが「普通」で、「普通」であることを強要されるんですよね。
一方で多様性を認めようと社会は言う。
一体どっちなんだよ!と思ってしまいます。
「何で~しないの?」は質問しているようで、非難の気持ちが入っている。
どうして普通とは違うのか、と。
みんなと違う普通でない人は社会に居づらくなって排除されていきます。
なので排除されないために一生懸命「普通」に近づこうとして苦悩する恵子が気の毒に思いました。
「普通」の人は傲慢である
皆、私が苦しんでいるということを前提に話をどんどん進めている。たとえ本当にそうだとしても、皆が言うようなわかりやすい形の苦悩とは限らないのに、誰もそこまで考えようとはしない。その方が自分たちにとってわかりやすいからそういうことにしたい、と言われている気がした。
引用:『コンビニ人間』村田沙耶香 電子書籍P32
皆、変なものには土足で踏み入って、その原因を解明する権利があると思っている。私にはそれが迷惑だったし、傲慢で鬱陶しかった。
引用:『コンビニ人間』村田沙耶香 電子書籍P45
わからないことは脳に負担をかけるので、今までの経験などと照らし合わせてわかるように脳が勝手に動いて(解釈して)負担を減らす、ということを学んだことがありました。
なのでわかって安心しようとすると、相手に傲慢になってしまうのかもしれないと思いました。
わかろうとしなければいい。そういう人もいるんだ、で終わらせることが出来ればお互いにとって負担にならないですむのに。
自分に被害がないのであれば、受け入れて共存することが出来ればいいのにと思います。
理想論かもしれませんが。
『コンビニ人間』の口コミ・レビュー
ほかの人はこの本を読んでどう思ったのか気になったので調べてみました。
私もこういう人がいるということを学べて良かったです!
白羽さんが哀れでキモかった、私もです。
でも言ってること全部がオカシイとは思わなくて、ところどころそうだなと思えるところもありました。
もし身近にいたら「キモ!」で終わるかもしれませんが・・・
私もハッピーエンドだと思います。
自分の人生なので、全部とはいかなくても、自分の意志で生きていたいです。
いろんな口コミがありましたので、読む人によって感じるところに差が出る本なのだと思います。
まとめ
2017年本屋大賞にノミネートされ、また第155回芥川賞受賞を受賞した『コンビニ人間』を紹介しました。
この本を読むことによって、自分とは違う人間の考え方に触れることができます。
まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。
最後までこの記事を読んでくださり、ありがとうございました。
生きづらい人たちの物語に興味のある人は、朝井リョウさんが書いた『正欲』もおすすめです。