【感想】第164回直木賞受賞『心淋し川』貧乏長屋の住民たちの物語

直木賞
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第164回(2020年)直木賞受賞作品『心淋し川(うらさびしがわ)』西條奈加著を紹介します。

この本は6編の短編集からなる時代小説です。

6編はそれぞれ独立した物語ですが、全部つながっています。

1編1編で心を動かされて切なくなったり、胸が苦しくなったり。

しかし、最後まで読むと温かい気持ちになってほっこりします。

そんな『心淋し川』について私の感想も交えてまとめました。

これから読む本を探している人、すでにこの本を読んだ人もこの記事を最後まで読んでいただけると嬉しいです。

こんな人におススメ
  • 直木賞受賞作品に興味がある人
  • 時代小説が好きな人
  • 読後にほっこりした気分になりたい人
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『心淋し川』という本について

タイトル心淋し川
著者西條奈加
出版社集英社
発行日2020年9月10日

この本は「心淋し川」「閨仏」「はじめましょ」「冬虫夏草」「明けぬ里」「灰の男」の6編が収録されています。

切りのいいところで止められるので、まとまった読書時間が取りにくい人にもおススメです。

著者について

著者である西條奈加さんのプロフィールです。

  • 1964年、北海道中川郡池田町に生まれる。
  • 2005年『金春屋ゴメス』が第17回日本ファンタジーノベル大賞の大賞を受賞し作家デビュー。主に時代小説を得意とする。初期はファンタジー要素のある時代小説であったが後に一般の時代小説に移行する。
  • 2012年 – 『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞を受賞。
  • 2015年 – 『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞を受賞。『六花落々』で第5回本屋が選ぶ時代小説大賞候補。
  • 2016年 – 『ごんたくれ』で第5回歴史時代作家クラブ賞(作品賞)候補。
  • 2018年 – 『無暁の鈴』で第1回細谷正充賞を受賞、第8回本屋が選ぶ時代小説大賞候補。
  • 2021年 – 『心淋し川』で第164回直木三十五賞を受賞、第7回沖縄書店大賞候補、第8回高校生直木賞候補

数々の賞を受賞されている作家さんですね。

私は時代小説が好きなので、他の作品も読んでみたいと思いました。

各編のあらすじと感想

この本に収録されている6編のあらすじと感想をまとめました。

6編ともドブ川である心淋し川の両岸にある長屋の住民たちの物語です。

心淋し川(うらさびしがわ)

ドブ川のイメージ画
あらすじ

19歳のちほは針仕事で家計を助けている。

仕事をもらっている仕立屋で上絵師の元吉(もときち)と出会い、逢引きをするようになる。

ちほは元吉と夫婦になりたいと思うが、元吉ははっきりしない。

日頃飲んだくれで仕事が続かず、母とちほに迷惑をかけている父。

そんな父でも娘に対する愛はちゃんとありました。

それならまともに働けばいいのにって思いますけど、そこは人間の弱さなんでしょうね。

ちほと元吉の恋。手も握らない、なんて松田聖子の歌にあります。

わたしにもそんなウブな時代があって、なんだか懐かしくなりました。

ざきざき
ざきざき

親子の愛や若い男女の恋は、今も昔も変わらないのですね。

閨仏(ねやぼとけ)

仏像の写真

あらすじ

大隅屋六兵衛は別宅に4人の妾を住まわせていた。

一番最初に妾になったのは“りき”。

4年後2人目の妾である“つや”がやってきたときから気鬱になる。

その気鬱を取り去ってくれたのは意外なものだった。

私には想像も理解もできない世界でした。

昔は妾を持つのは当たり前、今もお金持ちの人は当たり前かもしれません。

若い女がいないとダメな男の気持ちは、私にはわかりかねます。

ただ六兵衛は妾を使い捨てにはしなかった。

行き場のない女性にとっては、居場所があるのはありがたかった。

何が普通で何が常識かとは別に、妾としてでしか生きられなかった女性がいて、妾が必要な男性とWin-Winな関係があったんですね。

ざきざき
ざきざき

自分勝手な私は、“りき”は自分だけ幸せになれば良かったのにと思ってしまいました。

はじめましょ

着物の少女のイラスト
あらすじ

与吾蔵(よごぞう)は先代の稲次から「四文屋」とい飯屋を受け継いだ。

豆腐屋に仕入れに行く途中で“ゆか”という少女の歌声を聞いて、昔捨てた女(るい)を思い出す。

この話を読んだ後に、え?これで終わり?と思ってしまいました。

与吾蔵にひどくがっかりして、男ってそういうものか、と。

しかし、この続きが最後の「灰の男」に出てきます。

ここでは与吾蔵にがっかりしておきましょう。

冬虫夏草

冬虫夏草の写真
あらすじ

吉(きち)は息子の富士之助と二人暮らし。

富士之助は、大けがを負ったことで歩くことも立つこともできない。

一日中、吉を罵倒し、文句を言う富士之助の声を長屋の住民は迷惑に思っていた。

吉が貧乏長屋で、体の不自由な息子と二人暮らしに至った経緯には同情できるところもある。

しかし、子離れできない母の典型です。

息子に依存し執着して息子をだめにする。

差配の言う通り、吉が死んだら富士之助は生きていけないでしょう。

執着すると他人の忠告も耳に入らなくなり、意固地になっていきます。

ざきざき
ざきざき

2人の今後に希望が見えなくて、この物語はほっこりできませんでした。

明けぬ里

着物を着た女性の人形の写真
あらすじ

“よう”は父の借金のために根津遊郭に売られた元遊女で、桐八という亭主がいる。

ある日、遊郭一の美貌で観音様と言われていた明里(あきさと)に再会する。

明里は、蔵前の札差に落籍されて身請けされていた。

ようと明里は正反対の性格。

ようは理不尽に耐えられず、折れない性格で喧嘩っ早いが正直者。

明里は誰にでもやさしく笑顔を絶やさないが、本音は見えない。

明里の話は何とも胸が苦しくなりました。

美貌で性格が良くても幸せにはなれない。

一方ようは運よく自由を得て、好きな男と所帯を持てた。亭主の博打に悩まされていはいても。

美貌を持って誰からも好かれているから幸せとは限らない。

容姿も性格も難があるから不幸せとは限らない。

ざきざき
ざきざき

何が幸と不幸を分けるのかは、わからないと思いました。

灰の男

楡の木の写真

これまでの5編に脇役として出てきた茂十が主人公です。

そして5編までに登場してきた人たちが再び登場します。

あらすじ

茂十が心町(うらまち)の差配になったのには訳があった。

茂十の一人息子である修之進を殺した盗賊頭の次郎吉。

楡(にれ)の木の下で物乞いをし、楡爺(にれじい)と呼ばれてる男。

楡爺が次郎吉であるのを確かめるためだった。

次郎吉への恨みが茂十の生きている意味だった。

それはとても悲しい話です。

しかし最後には救いがあります。

5編までに登場した人たちのその後も垣間見れて、読後はほっこり温かい気持ちになりました。

ドブ川の淀みと共に生きている長屋の住民たち。

裕福ではないけど、助け合って支えあって生きている。

今ではなくなりつつある地域の人とのつながりを感じられました。

最後に

『心淋し川』という本についてまとめてみました。

読後は心温まり、周りにいる人たちに優しくしようという気持ちになれます。

まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。

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