【感想】小説『蜩ノ記』死を控えた武士の生き様に心打たれた

直木賞
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今回は第146回直木賞受賞作品の『蜩ノ記』(著:葉室麟)を紹介します。

余命があと数年だとしたら、あなたは何を思い、どう過ごしますか?

『蜩ノ記』は3年後に切腹することになっている武士の生き様が描かれています。

この物語を読んでから、何となく過ごしてしまっている一日をもったいないと思うようになりました。

武士の物語はたくさんありますが、善と悪がはっきりしていて、わかりやすい時代小説となっています。

この本を読んだ感想をまとめましたので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

この本はこんな人におススメ
  • 直木賞受賞作品に興味がある人
  • 時代小説、特に武士の物語が好きな人
  • 武士の生き様から自分を見つめ直したい人

『蜩ノ記』について

タイトル蜩ノ記
著者葉室麟
出版社祥伝社
発行日2011年10月26日

第146回直木賞受賞作品で映画にもなりました。

ミステリー、身分を超えた友情、恋愛、親子の絆など一冊でいろいろな要素を楽しめる本です。

著者について

著者である葉室麟さんのプロフィールです

  • 福岡県北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年『乾山晩愁』で歴史文学賞を受賞し、作家デビュー。
  • 2007年  『銀漢の賦』で第14回松本清張賞受賞。
  • 2012年  『蜩ノ記』で第146回直木三十五賞受賞。
  • 2016年  『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞受賞。
  • 『大獄 西郷青嵐賦』『天翔ける』『玄鳥さりて』『雨と詩人と落花と』『青嵐の坂』など 著書多数。2017年12月逝去。

葉室麟さんの著作にはまって、葉室麟さんの本ばかり読んでいた時期がありました。

2017年に亡くなられたので、もう新作を読めないのが残念です。

『蜩ノ記』のあらすじ

前藩主の側室と不義密通を犯したが、藩主三浦家の家譜編纂を続けるために10年後に切腹することになり幽閉された戸田秋谷。

壇野庄三郎はいさかいを起こし切腹を免れる代わりに、切腹まであと3年となった秋谷の元に監視役として遣わされることになった。

庄三郎は秋谷と一緒に生活し、人となりを知るにつれて、秋谷が本当に罪を犯したのか疑問に思うようになる。

秋谷の命を何とか助ける方法はないか模索していくなかで、事件の背景にあった藩を揺るがすほどの真相が明らかになっていく。

見どころ

秋谷の影響を受けて、武士とは何か、どうあるべきかを考えるようになり、庄三郎が変わっていく姿が見どころになります。

また、たびたび訪れる決断を迫られた時の秋谷の言動も見どころです。

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『蜩ノ記』を読んだ感想

それでは私が『蜩ノ記』を読んだ感想を、心に響いた文章を引用しながら述べていきたいと思います。

男の熱い友情に心打たれる

握手している手

物語では、男たちの熱い友情が描かれています。

秋谷の息子の郁太郎と農民の源吉、庄三郎と幼馴染である水上信吾の友情です。

お互いに影響を受けあいながら共に成長する。そして有事には命を懸けて友のために動く。そんな友がいること、出会えたことが素晴らしくうらやましく思いました。

おれは世の中には覚えていなくちゃなんねえことは、そんなに多くはねえような気がするんよ。

~中略~

友達のことは覚えちょかんといけん。忘れんから、友達ちゃ。

引用:葉室麟『蜩ノ記』文庫 P258・259

源吉の言葉です。

世の中の覚えていないといけないことは、父・母・妹と郁太郎だと言いました。

郁太郎は、庄三郎が言ったことを思い出し、源吉と生涯の友でいたいと思います。

信吾はわたしのことを生涯、許してくれないと思っていた。しかし、あいつはわたしのことを今も友だと思っていてくれたようだ。

引用:葉室麟『蜩ノ記』文庫 P259

庄三郎は信吾と刀傷沙汰になったとき、信吾の足を傷つけてしまいます。

そのことで二人とも人生は変わってしまいましたが、友情は変わりませんでした。

つらいとき、悲しいとき、孤独を感じるとき、友のことを思い出して元気が出る。

何があっても友でいて、味方になってくれる人がいる。

そんな人がいることは心強いですよね。

親子、夫婦、恋人など人との関係はいろいろな形がありますが、生涯の友というのはまた格別で人生の支えになるものだと思いました。

忠義とは信じればこそ尽くせるもの

正座している侍

忠義とは、主君が家臣を信じればこそ尽くせるものだ。主君が疑心を持っておられれば、家臣は忠節を尽くしようがない。

引用:葉室麟『蜩ノ記』文庫 P154

秋谷の言葉です。

自分を信じてくれているからこそ、一切の曇りもなく、忠節を尽くすことができるんですね。

信じてもらえていない場合、自分の真意とは違うようにとられてしまうのを警戒して、決断に迷いがでます。

それは主君にとってもマイナスになるはずです。

お互いに信頼関係がなければ、忠義は成り立たないんですね。

会社でも家庭でも同じことだと思いました。

上司が自分を正当に評価してくれないと、上司を信頼できないし、一生懸命仕事をする気になりません。

家庭も同じですね。

疑ってばかりいられたら、相手のために何かするのが嫌になります。

逆に信じきってくれていたら、この人のために何でもしようと思えます。

自分を信じてくれているからこそ、その人に忠節を尽くせるのは武士の世界だけではありません

今も昔も変わらないのだと思いました。

結末について ※ネタバレ注意

結末について思うことを書きますので、まだ読んでいない人はご注意ください。

Finの文字と羽

この本を読み終わって思ったことは、清廉すぎる人は出世できずに道半ばでいなくなる

それが世の常のような気がしました。

下々の人にとっては秋谷のような人の気持ちがわかる人に上に立ってもらいたい。

でもそうはならないのですよね。

人柄や実力だけでは上の役にはいけない。

家老の兵右衛門のように狡猾さがないと。

秋谷は最後まで武士らしくあることを貫きます。

途中までは、命が助かるかもしれないチャンスがありながら秋谷が動かなかったことを、それが武士の美徳なのかとちょっと引いてしまっていました。

しかし最後まで読んで、村のために、家族のために、いろんなものを背負っていってくれたのだと、胸が熱くなりました。

このような生き様、死に様を見せつけられた庄三郎や郁太郎は、このあと何があろうと秋谷に恥じない生き方を選ぶに違いありません。

秋谷の残したものはとてつもなく大きいものだと思いました。

まとめ

第146回直木賞受賞作品の『蜩ノ記』について感想を述べてきました。

とてもわかりやすい時代小説となっていますので、まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。

武士の世界にどっぷり浸りましょう。

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葉室麟さんの作品が好きな人は、『恋しぐれ』もおすすめですよ。

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