【感想と名言】直木賞ノミネート『未来』湊かなえ

直木賞
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この記事では、第159回直木賞にノミネートされた湊かなえさんの『未来』を紹介します。

この本は『未来』という題名なのに、途中から胸くそ悪い展開が続く、

とにかくクズな大人ばかり出てきて、子どもを苦しめる物語です。

そしてこれは物語の中の大げさな話ではなく、現実にある話。

ざきざき
ざきざき

読んでも辛いだけかも…と思ったでしょうか?

でも、辛いばかりではありません。最後には一筋の希望の光が見えます。

苦しい状況にいる子どもはどうすればいいのか、そして私たち大人はどうすればいいのか。

この本を読めば、その答えの1つが見つかります。

また、数少ない良い大人で、子どもに寄り添ってくれた先生が登場し、一生心に刻みたい名言を残しています。

その名言を紹介しつつ、この本を読んだ感想をまとめました。

ぜひ最後まで読んで、本選びの参考にしていただけたら幸いです。

この本はこんな人におすすめ
  • 直木賞に興味がある人
  • 湊かなえさんの作品が好きな人
  • 現実としてある子どもの貧困について知りたい人

『未来』について

タイトル未来
著者湊かなえ
出版社双葉社
発行日2018年5月19日
ページ数422P(電子書籍)

この本の構成は次の通りとなっています。

  • 序章
  • 章子の話
  • エピソードⅠ 章子の親友となる亜里沙の話
  • エピソードⅡ 章子の担任だった篠宮先生の話
  • エピソードⅢ 章子の父、良太の話
  • 終章
  • あとがき

「章子の話」では明かされず、もやもやしたことが、後のエピソードで語られます。

また最後まで読むと真相がわかって、そうだったのか!と腑に落ちることがたくさんあります。

ざきざき
ざきざき

ミステリー小説ならではですね!

眉間にしわが寄るほどしんどい場面の連続ですが、ラストに未来への希望が見えますので、ご安心を。

そしてこの本には、「あとがき」があります。

「あとがき」には著者がこの本を書いた理由と、読者へのメッセージが綴られています

本編を読んだ後に、「あとがき」までしっかり読んでいただきたいです。

著者について

著者である湊かなえさんのプロフィールです。

1973年広島県生まれ。

2005年第2回BS-i新人脚本賞で佳作入選。

2007年第35回創作ラジオドラマ大賞受賞。同年「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞。2008年同作品を収録した『告白』でデビューし、「2008年週刊文春ミステリーベスト10」第1位、2009年本屋大賞を受賞。

また2014年には、アメリカ「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙のミステリーベスト10に、2015年には全米図書館協会アレックス賞に選ばれた。

2012年「望郷、海の星」で第65回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。

2016年『ユートピア』で第29回山本周五郎賞を受賞。

2018年『贖罪』がエドガー賞〈ペーパーバック・オリジナル部門〉にノミネートされた。

(2021年8月現在)

引用:『未来 (双葉文庫)』(湊かなえ 著)

湊かなえさんと言えばミステリー小説家で、衝撃的な作品を生み出している作家さんですよね。

それなのに、私が読んだことのある著作は『山女日記』でした。

山に登る女性たちの心情と山の素晴らしさが伝わり、読後にほっこりする作品です。

気になった人は『未来』の後に読んでみてください。

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『未来』のあらすじ

章子は、母と父と3人で暮らしていたが、小4のときに父が胃がんで死んでしまう。

母はふわっとした世界に生きていて、“人”であるときが2割、“人形”であるときが8割で、家事もままならない。

父を亡くした悲しみと、今後は自分が母を守っていくしかない不安でいっぱいの章子に、30歳になった未来の章子から手紙が届く。

章子は、未来の章子へ返事を書いていくことにした。

見どころ

物語にはたくさんのゲスな親たちが出てきます。言葉が汚くなってしまいました(;^_^A

  • 子供の面倒をみられない母親
  • 妻子に暴力を振るう父親
  • 娘に性暴力を振るう父親や継父
  • 息子を変態に売る父親
  • 娘が継父の性暴力により妊娠すると、階段から突き落として流産させる母親

このような親の元で暮らした子どもたちがどうなっていったのか

何がこの子たちの希望となり、どうやってたどり着いたのかが見どころになります。

ざきざき
ざきざき

残念ながら被害にあったすべての子どもが、希望にたどり着いたわけではありません

本なのに目をそむけたくなりますが、この物語を読んだ大人である自分は何ができるのか、どんな大人でいたいのかが見えてきます。

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『未来』を読んだ感想

それでは、この本を読んでみた感想を述べていきたいと思います。

ネタバレを含みますので、知りたくない人は次の項目の「名言」まで飛んでくださいm(__)m

人を見る目のなさにがっかりした

望遠鏡をのぞく女性

私に、人を見る目がないことを痛感させられました。

人を深く知る前にいい人だと判断し、信じてしまうようです。これではすぐに騙されてしまいますね。

いい人と勘違いしてしまった人物が2人います。

  1. 章子の母の再婚相手 早坂さん
  2. 早坂のレストランの上客 いのやホテルの会長

まず1人目の早坂さん。

母親が働きに出たホテルのレストランの副料理長で、イケメンでスタイルがよくオシャレな人。

そして、フランスの有名なレストランで修行させてもらうときのエピソードに、早坂さんってすごい人だなと感心してしまいました。

見かけも中身も素晴らしい人だと、簡単に思ってしまったんですね。

ところが、レストランを経営し、うまくいかなくなると、章子に暴言を吐き、殴る蹴るの暴力

そもそも母親に近づいてきた理由がゲスでした。

次に2人目の、いのやホテルの会長です。

早坂が厨房で章子を怒鳴りつけているのを聞いて、会長が助けてくれます。

お金持ちの心の余裕というか、懐の深さのようなものを感じてしまいました。

ところがですね、この会長は変態だったのです。

美少年好きな会長に売られ、犠牲になった子どもがいました。

ただのゲスではなく、ゲス中のゲスですね。キングオブゲス。

ざきざき
ざきざき

こんなのにすぐに騙されるのは、私だけかもしれませんね。

爽やかなイケメンだから、ちょっといいことを言ってくれたから、と簡単に信じてはいけません。

見る目がないということがよくよく分かったので、信じそうになったら逆に疑わないといけないと肝に銘じました

篠宮先生の公平さが印象に残った

バランスをとる2人

篠宮先生の公平な考え方に学ぶところがありました。

私が小学生の時にはなかったハーフ成人式(20歳の半分の10歳を祝う行事)

今は当たり前にあるのでしょうか?

小学4年生のハーフ成人式で、クラスから選ばれた5人が壇上で作文を読む。

その5人に後藤実里を選ばなかったことで、実里の親からクレームが入る。

篠宮先生が実里を選ばなかった理由は、確かに良い作文だけど、「作文のための作文」になっていたから。

作文のお題は「将来の夢」

実里の作文には「公務員になって、苦労しているお母さんに楽をさせてあげたい」とある。

でも実里のおうちは裕福で、もっと苦労している人は他にもいる。

ざきざき
ざきざき

ほんとに貧しい家庭の人には、嫌味に聞こえるかも…

ところがその後、実里の父に愛人がいることがわかります。

篠宮先生は、実里の作文を選べばよかったと後悔しました。

「苦労」は経済的なこととは限らない

父親が浮気していることを知って、母親が辛い思いをしていることを「苦労」と書いたのかもしれない、と。

実里は、いつも誰かをターゲットにしているいじめっ子です。

いつも上から目線の嫌~なタイプ、よくいますよね。

でも実里の日頃のふるまいは考慮に入れず、作文だけで評価をする。

私ならクレームが嫌だから選んだり、いじめをしている実里にちょっと意地悪な気持ちになったりするでしょう。

でもそんなことで評価がぶれない篠宮先生は、公平に人を見ることができる素晴らしい先生だと思いました。

この物語のように救いがないような状況でも、悪い大人ばかりではない。

それが子どもたちの希望になるはずだと思いました。

『未来』に出てくる名言

名言

それでは、この本に出てきた名言を2つ紹介していきますね。

まず1つ目です。

病気だけでなく、みんなもこの先、どんな災難に見まわれるかは分かりません。それらに対して、事前に出来る事は、体調管理や防災グッズをそろえておく事だけではないと、先生は思っています。

困った時はよろしくお願いしますと、周囲の人達と仲良くする事も大切な備えなのではないでしょうか

さんざん他人の悪口を言っていた人を、助けてあげようと思えますか? 元気な事、平おんな暮らしを送る事。それらは、当たり前の事ではありません。

だれだって、何かしらの困った状きょうにおちいる可能性があります。そんな時助けてくれるのが、これまで口にして来た、ありがとう、や、よろしくお願いします、といった言葉じゃないでしょうか。

これらの言葉は貯金が出来ます。おはよう、や、こんにちは、でもいいのです。どうか、みんな、今年は、友達や家の人、町の人達に、これらの言葉をたくさんかけて、貯金を増やしてみてください

引用:『未来 (双葉文庫)』(湊かなえ 著)電子書籍P75

長いですけど、そのまま引用しました。

日ごろからあいさつやお礼を言ってくれる感じのいい人には、何か困ってそうだと思われた時点で声をかけたりするものですよね。

ところが、こちらからあいさつしても返してくれないような人には、頼まれたって何かしてあげたい気持ちにはなりません。

周囲の人たちと仲良くする貯金を、意識して今日から始めたいと思いました。

2つ目です。

ざきざき
ざきざき

またまた長くてすみませんm(__)m

言葉には人をなぐさめる力がある。心を強くする力がある。勇気をあたえる力がある。いやし、はげまし、愛を伝える事もできる

だけど、口から出た言葉は目に見えない。すぐに消えてしまう。耳のおくに、頭のしんに、焼きつけておきたい言葉でさえも、時がすぎればあいまいなすがたに変わり果ててしまう。

だからこそ、人は昔から、大切な事は書いて残す。言葉を形あるものにするために。えい遠のものにするために。 それが「文章」です。

引用:『未来 (双葉文庫)』(湊かなえ 著)電子書籍P15

文章のすごさを改めて知りました。

文章は人の心を動かすことができる。文字なのに映像が浮かんでくる。

何千年前の人々の考えていたことがわかる。

日常的には話した方が早い、ということもあります。

でも大切なことは書いて残すことが大事なんですね。

誰にあてて書いたわけでもない日記でさえも、後から読み返すとそのときの状況を思い出して、心がざわざわします。

また手紙を、特に手書きの手紙をもらうと、お金がかかっているプレゼントより何倍も嬉しいですよね。

文章って素晴らしいなと、改めて思いました。

最後に

第159回直木賞にノミネートされた湊かなえさんの『未来』を紹介しました。

この物語から、現実に過酷な環境にいる子どもたちにとって何が救いとなるのかを知ることができます。

まだ読んでいない人は、ぜひ読んでみてください。

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