【感想】第170回直木賞『八月の御所グラウンド』万城目学

直木賞
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この記事では、2023年下半期の第170回直木賞を受賞した『八月の御所グラウンド』(著:万城目学)を紹介します。

8月と言えば、一年で一番暑い時期ですよね。

そんな時期のスポーツの話なんて、読むだけで暑苦しそうです。

それなのにこの本は、サラサラっとさわやかな風が吹き抜けるような読後感で、青春っていいな、スポーツっていいな、とあらためて思えます。

そして不思議体験もできる。

遊園地に連れて行ってもらった感じです。

そんな『八月の御所グラウンド』を読んだ感想をまとめました。

ぜひ最後まで読んで、本選びの参考にしてください。

この本はこんな人におすすめ
  • スポーツの話、青春の話が好きな人
  • サラっとした軽やかな話が読みたい人
  • 不思議ワールドを経験してみたい人
  • 直木賞候補作に興味がある人

『八月の御所グラウンド』について

タイトル八月の御所グラウンド
著者万城目学
出版社文藝春秋
発行日2023年8月20日
ページ数179P(電子書籍)

この本は「十二月の都大路上下ル」と「八月の御所グラウンド」の2編が収録されています。

どちらも青春でスポーツで不思議ワールドの話です。

私はSF小説はあまり好んでは読みません。

あまりにも現実とかけ離れていると冷めてしまうからです。

でもこの本の話は、そういうこともあるのかもしれない、あったらいいなと思えて、現実離れしすぎない、ちょうどいい非現実感でした。

著者について

著者である万城目学さんのプロフィールです。

1969年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。

2006年にボイルドエッグズ新人賞を受賞した『鴨川ホルモー』でデビュー。

同作の他、『鹿男あをによし』『偉大なる、しゅららぼん』『プリンセス・トヨトミ』が次々と映像化されるなど、大きな話題に。

その他の小説作品に『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』『とっぴんぱらりの風太郎』『悟浄出立』『バベル九朔』『パーマネント神喜劇』『ヒトコブラクダ層ぜっと』『あの子とQ』等、エッセイ作品に『べらぼうくん』『万感のおもい』等がある。」

引用:『八月の御所グラウンド』(万城目 学 著)

万城目学さんが直木賞の候補になったのは、今回で6回目だそうです。

こんなにノミネートされて、初めて受賞なんてことあるんですね。

『八月の御所グラウンド』を読んだ感想

それでは『八月の御所グラウンド』を読んだ感想を収録されている各編ごとに述べていきたいと思います。

「十二月の都大路上下ル」の感想

女子駅伝
あらすじ

高校1年生の坂東は、女子全国高校駅伝の補欠選手として京都に来ていた。

大会の前日、坂東は陸上部の顧問で「鉄のヒシコ」と呼ばれる菱先生に呼び出される。

貧血の症状が収まらず、出場辞退した心弓(ココミ)センパイの代走に坂東が決まったと言われた。

坂東は、2年生がいるのに自分が出るのはおかしいし、何より超絶方向音痴だから無理だと答える。

結局坂東は、まっすぐ進んで1回だけ右に曲がる、アンカーで出ることに決まった。

読み終わってすぐに、いい話だな、と思いました。

同じく1年生で一緒に頑張っている咲桜莉(さおり)。

咲桜莉の方がタイムは早いのに、代走に選ばれたのは坂東。

咲桜莉は思うところがいろいろあるはずなのに、緊張でまったくご飯が食べればない坂東を励まします。

「私は好きだよ、サカトゥーの走り方。大きくて、楽しそうな感じがして」

引用:『八月の御所グラウンド』(万城目 学 著)電子書籍P22

なんかこういうのいいですよね。

この言葉が本番でも効いて、実力以上の力を出すことができました。

また、同じ5区を並走した荒垣新菜。 彼女との関係も素敵でした。

走っているときはライバルでしたが、大会が終わればともに駅伝に切磋琢磨する仲間です。

そして荒垣新菜とは、駅伝以外のことでも仲間になりました。

嫌な人が一人も出てこない、読んでいて清々しい物語でした。

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『八月の御所グラウンド』は電子書籍にもなっています。

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「八月の御所グラウンド」の感想

野球
あらすじ

朽木は京都の大学生。

夏休みに彼女と四国に行く予定がフラれてしまい、京都で暑さに耐えていたある日、多聞(たもん)に呼び出される。

用件は、多聞の野球チームの一員として試合に出てほしいということだった。

多聞に3万円借りていて、焼肉をおごってもらった朽木に、断ることはできなかった。

まずは朽木と同じ大学の院生で、中国人留学生のシャオさんにとっても心惹かれました。

「毒は溜めると身体に悪い」

引用:『八月の御所グラウンド』(万城目 学 著)電子書籍P85

ということで、言いたいことを割とはっきり言ってしまうところが素敵です。

「そんな話、これ以上、続けても無駄でしょう。議論のための議論になっています。暇ですか」

引用:『八月の御所グラウンド』(万城目 学 著)電子書籍P85

こういうことを思ったことは何回もあります。それを口にしてしまうシャオさん、かっこいいです。

そして、朽木が出ることになった野球の試合ですが、この大会は「たまひで杯」でした。

たまひで杯とは、青春時代、芸妓(たまひで)に心励まされた者たちが代表としてチームを作り、毎年8月に開催している野球大会。

たまひで杯は30年以上続く伝統ある大会。

優勝者には、たまひでからほっぺにちゅう、がもらえます(笑)

代表者たちはもう60歳オーバー、たまひでも70歳くらいでしょうか。

こういうことを本気で続けているのは男性だからだろうな、と思いました。

何て、迷惑至極な連中だろう。

(中略)

老人たちの下らぬ競争ごとに巻きこまれ、若者は今朝も六時から御所Gに駆り出され、代理戦争ならぬ代理ベースボールに興じさせられている。

無用だ。無益だ。労害がすぎる。

引用:『八月の御所グラウンド』(万城目 学 著)電子書籍P79

朽木がこんな風に思ってしまうのも当然ですね。

自分たちだけでできるもので戦えばいいのに、と私も思いました。

野球への意気ごみなど1ミリも存在しなかったはずが、いつの間にか、「打ちたい」という明確な欲求が芽生えている。

引用:『八月の御所グラウンド』(万城目 学 著)電子書籍P110

断れずに嫌々参加していた朽木ですが、試合を重ねるごとにヒットを打って塁に出たい!という欲が出てきます。

こういうことってありますよね。

気分が乗らないけど、やっていくうちに気持ちが後からついてくるということが。

だから、まず先に行動することが大事なんだと思いました。

それから、日本人というのはつくづく野球好きなんだということがわかりました。

野球経験者というのは、そこら中にいるんですね。

寄せ集めでもなんとなく9人集まってしまう。何とかなってしまう。

この物語では、ちょっと普通とは違う助っ人がきましたけど。

そんな寄せ集めでも真剣勝負で野球の試合をしているのが面白いな、と思いました。

最後に

第170回直木賞を受賞した『八月の御所グラウンド』を紹介しました。

本に収録されている2編とも不思議体験がありますが、それには触れずに感想を述べてきました。

熱いスポーツの話ですが、読み終わった後はさわやかな気分にさせてもらえます。

まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。

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第170回直木賞候補となっている作品について、選考委員気取りでまとめた記事がこちらです。↓

興味のある人はぜひご覧ください。

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