【感想】第143回直木賞『小さいおうち』中島京子

直木賞
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この記事では、第143回直木賞に輝き、映画にもなった中島京子さんの『小さいおうち』を紹介します。

この作品は、昭和初期から女中として働いたタキさんの回顧録です。

そこには若くて美しい奥様の秘められた恋の話もありました。

戦前の活気に満ちた生活が、戦争によって徐々に変わっていくこと。

そしてタキさんの後悔と涙から、終わらないものなどないことに哀愁を感じる物語です。

この本を読んだ感想をまとめました。また映画版についても紹介します。

ぜひ最後まで読んで、本選びの参考にしていただければ幸いです。

この本はこんな人におすすめ
  • 昭和初期の話に興味がある人
  • 奥様の秘密の恋に興味を持った人
  • 直木賞に興味がある人

『小さいおうち』について

タイトル小さいおうち
著者中島京子
出版社文藝春秋
発行日2010年5月27日
ページ数316P(電子書籍)

女中としていくつかの家庭で働いたタキさんが、一番濃厚な日々を過ごした平井家での出来事を覚書としてしたためた物語です。

電話もない時代から戦争を挟んで、たった数十年の間に生活がガラッと変わりました

生活だけではなく、人との関わり方もずいぶんと変わりましたよね。

生きてそれを実感した人(タキさん)の話は、とても興味深いものでした。

著者について

著者である中島京子さんのプロフィールです。

  • 1964(昭和39)年東京都生れ。東京女子大学文理学部史学科卒。
  • 2003年『FUTON』で小説家デビュー。
  • 2010年『小さいおうち』で直木賞受賞
  • 2014年『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞受賞
  • 2015年『かたづの!』で河合隼雄物語賞、歴史時代作家クラブ作品賞、柴田錬三郎賞受賞、同年『長いお別れ』で中央公論文芸賞受賞、2016年日本医療小説大賞を受賞
  • 他に『平成大家族』『パスティス』『眺望絶佳』『ゴースト』『樽とタタン』『夢見る帝国図書館』『キッドの運命』など著書多数。
ざきざき
ざきざき

数々の賞を受賞されていますね。

著者の作品を読んだのは『小さいおうち』が初めてでしたが、とても読みやすかったので、他の本も読んでみたいと思いました。

『小さいおうち』のあらすじ

尋常小学校卒業と同時に山形から上京し、いくつかの家で女中奉公してきたタキ。

米寿を過ぎたことから、これまでのことを振り返り、一番幸せだった平井家での出来事を書き記していくことにした。

若くて美しい時子奥様、可愛らしい恭一ぼっちゃん、玩具製造会社でメキメキ昇格していく旦那様。

活気にあふれた東京での生活だったが、戦争により徐々に物資が乏しくなっていく。

そんな中、時子奥様に秘密の恋愛事件が起きる。

見どころ

女中の目から見た平井家の人々。

タキの奥様への思いと、2人の関係の変化。

そして何といっても、時子奥様の恋の行方(不倫ですけど)が見どころとなります。

それに対するタキの対応も。

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『小さいおうち』は電子書籍でも読めます。電子書籍で読むなら、専用リーダーがあると目が疲れなくて楽ちんですよ。

『小さいおうち』を読んだ感想

それでは『小さいおうち』を読んだ感想を述べていきます。

古き良き日本文化を見ることができた

門松

昭和初期の生活に、古き良き日本文化を見ることができました。

特に年末年始の過ごし方です。

きちんとお正月の準備を行っている家庭もあると思いますが、すいぶん簡素化されてしまったと寂しく思いました。

タキさんのお正月の準備を一部紹介します。

  • 障子の張替え、カーテンや椅子のカバーの洗濯、台所の床下・天井・鴨居の拭き掃除など普段手をかけないところの丁寧な掃除
  • 27日朝から数の子の下ごしらえ、29日には伸し餅を切り、30日は黒豆やごまめを煮て、なますなど保存のきくものを作る。
  • 大晦日は、洗い残しないように洗濯、玄関先に門松、おせち造り、鏡餅の準備、床の間に松竹梅の軸をかけ、応接間に花を活ける
  • 正月に着る旦那様のモーニング、奥様の晴れ着、ぼっちゃんのセーラー襟のよそ行きの準備
ざきざき
ざきざき

いかがでしょうか?

女中がいるからこれだけできる、というのもあるかもしれませんね。

今でも、おせちもすべて手作り、大掃除もここまでやっている家庭はどのくらいあるでしょう。

新年を良い一年にするための、抜かりのない準備。

外国ではクリスマスの方が大きな行事のようですけど、日本では年末年始がとても大事でした。

ひと昔前の日本では、心を込めて準備するということが当たり前だったのですよね。

現代では、何だかんだとせわしなくなり、時間も心も余裕がなくなったり、人との関わりも希薄になったりで寂しく感じました

また本には、タキさんの様々な生活の工夫が出てきます。

その中で、心に残ったものがありますので、紹介しますね。

なんでも、一つあれば十分で、おんなじものをいくつも持つ必要はない

それは、節約してじょうずに暮らすための、コツでもある。

引用:中島京子『小さいおうち』電子書籍P6

この言葉にグサッときました。

私はお気に入りのものほど、手元になくなっては困るので、2つ3つと在庫を抱えています。

節約上手ではありませんね。

在庫を抱えたくなったら、この言葉を思い出そうと思いました。

奥様の秘密の恋について

※ネタバレがあります。知りたくない人はご注意ください。

相合い傘

私は、時子奥様が夫ではない男性に心ときめいたのは、仕方がないことだと思いました

タキは旦那様のことを「人と少し違っている。男性の匂いがしない」と言っています。

つまり、夫婦生活がなかった、と。それで子どももできないと。

時子奥様が再婚したのは、20代前半です。

いくら大事にされていると言っても、そんな若いときから全くなしでは耐えるのが難しいのではないでしょうか。

そこにきて、若くてイケメンで、話していて楽しい男性が現れる。

それはもう、心が動かないわけがないですよね。

ざきざき
ざきざき

ただ、私にはちょっと物足りなかったです。

もう少し進展があって、ドロドロするくらいでも良かったな~と思ってしまいました。

え?これだけ?というのが正直なところでした。

映画『小さいおうち』について

それでは、映画版について少しふれておきたいと思います。

時子奥様を松たか子さん、タキを黒木華さんが演じています。

なるほど、いいキャスティングだなと思いました。(上からですみません)

ざきざき
ざきざき

でも板倉さんは、吉岡秀隆だとイメージ違うなぁ・・・

原作とは少し違うところもありますが、昭和モダンな雰囲気や人と人の繋がり、切なさを感じられますよ。

映画『小さいおうち』はHuluに登録すると、14日間無料体験で見ることができます。

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最後に

第143回直木賞を受賞した『小さいおうち』を紹介しました。

戦前から戦争、そして戦後と時代の変化を感じ、その中で失ったものに哀しみを感じる物語です。

まだ読んでいない人は、ぜひ読んでみてください。

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本作品を同じように、戦争をまたいだ女中と女主人の物語があります。

こちらもぜひ読んでみてください。

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