この記事では、第151回直木賞候補となり、2015年本屋大賞4位となった柚木麻子さんの『本屋さんのダイアナ』を紹介します。
この本は、親に付けられた変な名前のせいで嫌な目にたくさん合ってきたダイアナと、裕福で恵まれた環境で育った彩子の小学生から大人になるまでの物語です。
どんなに恵まれているように見えても、誰にだって悩みや生きづらさがある。
また、本が人に支えになったり、悩みを解決する糸口になったりするのだということを改めて知らされる物語です。
そんなこの本を読んだ感想をまとめました。
ぜひ最後まで読んで、本選びの参考にしていただければ幸いです。
『本屋さんのダイアナ』について
タイトル | 本屋さんのダイアナ |
著者 | 柚木麻子 |
出版社 | 新潮社 |
発行日 | 2014年4月22日 |
ページ数 | 301P |
直木賞と本屋大賞の両方にノミネートされた作品です。
読者のみなさんにも、文学賞選考委員の方々にも評価されたということですね。
面白かった~だけにはとどまらない、読みながらいろいろと考えさせられる本でした。
著者について
著者である柚木麻子さんのプロフィールです。
1981年東京生まれ。2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞し、2010年に同作を含む『終点のあの子』でデビュー。
2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞を受賞。
ほかの作品に『私にふさわしいホテル』『ランチのアッコちゃん』『伊藤くん A to E』『本屋さんのダイアナ』『マジカルグランマ』『BUTTER』『らんたん』『ついでにジェントルメン』『オール・ノット』などがある。
引用:新潮社の電子書籍
著者の本は、第171回直木賞の候補になった『あいにくあんたのためじゃない』を最近読みました。
女性の強さも弱さもきちんと描きながら、女性を応援してくれている作家さんという印象を受けました。
今、私の一押しの作家さんです。
『あいにくあんたのためじゃない』の紹介記事があります。
まだ読んでいない人は、ぜひ参考にしてください。
『本屋さんのダイアナ』のあらすじ
競馬好きな父親に変わった名前を付けられた大穴(ダイアナ)。
小学校3年生になって、初めての友達ができた。
友達はダイアナとは真逆で、お金持ちの上品なお嬢様である彩子。
彩子の家に遊びに行ったとき、父親に甘える彩子を見て、ダイアナは産まれてすぐ出ていった父親に会いたいと思う。
クラスの武田くんが父親と競馬場に行くと聞いたダイアナと彩子は、父親を探すため一緒に連れて行ってもらうことにした。
見どころ
私が考える本作品の見どころは次のとおりです。
どんなに仲良しでも、ずっと同じ関係ではいられないんですよね。
変わってしまうものもあるけど、お互いへの憧れの気持ちは変わらない。
そんなダイアナと彩子の関係をずっと追い続けたいと思いました。
『本屋さんのダイアナ』を読んだ感想
この本を読んで一番心に残ったのは、本が人に与える影響のすごさです。
とにかく心を落ち着けねば――。
本棚の『秘密の森のダイアナ』に手を伸ばす。どんな時でもこの本をめくれば、誰かに抱きしめられたみたいに安心できるのだ。
引用:柚木麻子『本屋さんのダイアナ』電子書籍P83
ダイアナも彩子も物語に出てくる『秘密の森のダイアナ』という本が好きで、主人公ダイアナに自分を重ね、ダイアナのセリフに励まされます。
私も様々な女性主人公に影響を受けてきました。私の場合は、2人のように一貫していないんですけどね(;^_^A
『風と共に去りぬ』のスカーレットだったり、徳川家光の側室お万の方だったり、天璋院篤姫だったり、、、
そして今、私が毎朝思い出すようにしているのが次の言葉です。
明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ。
引用:若杉友子『若杉ばあちゃん医者いらずの食養訓』
物語の本ではありませんが、この言葉が私の生き方を変えました。
明日生きているとは限らない、今日1日に集中すること。今日生かされていることに感謝すること。
人生に影響を与える本の力ってすごいですよね。
でも、向田邦子さんの本を読んだだけで、彼女のようになれるわけではない。
本が好きなだけで、高尚なつもりになるのは間違いだ。
母を見下して得意になってばかりいた。
引用:柚木麻子『本屋さんのダイアナ』電子書籍P192
本を読んで知識を得ると、それだけで自分が知恵者になったような気がしてきます。
でもダイアナが言うように、本を読んだだけで向田邦子になれるわけではない。
本が好きだと、活字を読まない人を見下しがちです。
ですが、読んだだけでは何にもならないと言うことを忘れてはいけないと思いました。
それにね、本のヒロインに自分を重ねるより、自分がヒロインになりたくなったんだ。
だってこの世界にはすげえ面白いことがいっぱいあんだもん。
引用:柚木麻子『本屋さんのダイアナ』電子書籍P260
いつも前向きなティアラ(ダイアナの母)らしい言葉です。
この世界に不満があったり悩みがあったりすると、本のヒロインに自分を重ねて現実逃避したくなります。
でも、、、
「事実は小説より奇なり」ということでしょうね。
自分の人生のヒロインは自分しかいないのです。
だったら、この人生を、1つしかない物語を楽しめたら素敵ですよね。
誰よりも本を愛し、ヒロインと自分を重ねてきたティアラの言葉なので、説得力がありました。
小学生のダイアナが、彩子のお父さんと、本のことで対等に話をする場面が出てきます。
本を介して、年齢や性別を超えて友達になれるというのも、本の魅力の1つなんですね。
本にはいろんな可能性があるということを、改めて知らされた物語でした。
最後に
第151回直木賞候補となり、2015年本屋大賞4位となった柚木麻子さんの『本屋さんのダイアナ』を紹介しました。
ダイアナと彩子が小3で友達になり、2人が就職するまでのお話です。
生きていれば、良いことばかり起きるわけではありません。
胸くその悪い出来事もありました。
2人がどのように向き合い、乗り越えていったのかを一緒に見届けてみませんか。
まだ読んでいない人は、ぜひ読んでみてください。
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女性2人の友情の物語は一穂ミチさんの『光のとこにいてね』もおすすめです。
ぜひ合わせてご覧ください。