この記事では、第158回直木賞を受賞して映画にもなった門井慶喜さんの『銀河鉄道の父』を紹介します。
この作品は、「雨にも負けず、風にも負けず、、、」で有名な宮沢賢治を父親(政次郎)の目から見た物語になっています。
こうあるべき、こうなりたいという父親像と実際はどうだったのか。
父親からみた賢治はどういう子だったのか。
子を看取るとはどういうことなのか。
この物語を読むと、父親とは何かがわかります。
親子関係に悩んでいる人も悩んでいない人もぜひ一度は読んでみてほしい作品です。
そんなこの作品を読んだ感想と、作品中に出てくる名言をまとめました。
最後までご覧いただければ幸いです。
『銀河鉄道の父』について
タイトル | 銀河鉄道の父 |
著者 | 門井慶喜 |
出版社 | 講談社 |
発行日 | 2017年9月13日 |
ページ数 | 430P(電子書籍) |
宮沢賢治本人ではなく、父親の目線で書かれているのが面白いですよね。
しかも明治時代のガチガチの父親ではなく、愛情にあふれ、ちょっと甘やかしすぎじゃないって思っちゃうところもあったり、、、
とても人間味のある政次郎のファンになりました。
著者について
著者である門井慶喜さんのプロフィールです。
1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。
2015年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、
2016年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補、『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。
2018年に『銀河鉄道の父』(本書)で第158回直木賞を受賞。
他の著書に『パラドックス実践 雄弁学園の教師たち』『屋根をかける人』『ゆけ、おりょう』『定価のない本』『自由は死せず』『東京、はじまる』などがある。
引用:『銀河鉄道の父 (講談社文庫)』(門井慶喜 著)
直木賞には3回目のノミネートでみごと受賞されていますね。
本作品は430ページあり、読み前はちょっと長いなと思っていましたが、物語に引き込まれてあっという間に読み終えてしまいました。
とても読みやすい本だったので、著者の他の作品も読んでみたいと思っています。
『銀河鉄道の父』のあらすじ
花巻で古着屋と質屋を営み、地元の有数の商家である宮沢家の跡取り政次郎に長男賢治が産まれた。
一家の大黒柱であり、父親たるもの子どもとは距離を保つことを信条としていた。
賢治が7歳で赤痢にかかると、政次郎の信条はあっさり覆る。
家族や医者の言うことも聞かず、病院に泊まり込みで賢治の面倒をみることにした。
見どころ
この作品の見どころは次のとおりです。
賢治は最初から作家になろうと思っていたわけではなく、やりたいことは次々と変わっていきます。
でも賢治が書いた作品には、それまで賢治が一生懸命ハマっていたものがすべて反映されていました。
そのことに気づいたのは政次郎でした。
私は父親の愛情は母親にはとうてい及ばないと思っていましたが、父親の愛情も軽く見てはいけないということがわかりました。
一言で言うと「父親の愛情」が見どころになります。
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『銀河鉄道の父』を読んだ感想
この作品で印象に残っているのは、政次郎が折に触れ父親とはどういうものかを語っているところです。
あやしてやりたい衝動に駆られた。いい子いい子。べろべろばあ! それは永遠にあり得なかった。
家長たるもの、家族の前で生をさらすわけにはいかぬ。
つねに威厳をたもち、笑顔を見せず、きらわれ者たるを引き受けなければならぬ。
引用:『銀河鉄道の父 (講談社文庫)』(門井慶喜 著)電子書籍P12
産まれた賢治を最初に見たときに、政次郎が思ったことです。
家長とは、父親とはどうあるべきかの考え方が現代とは全く違いますね。
でもこの理想像を全然保てないのが、人間らしくて私は好きになりました。
父親であるというのは、要するに、左右に割れつつある大地にそれぞれ足を突き刺して立つことにほかならないのだ。
いずれ股が裂けると知りながら、それでもなお子供への感情の矛盾をありのまま耐える。
ひょっとしたら質屋などという商売よりもはるかに業ふかい、利己的でしかも利他的な仕事、それが父親なのかもしれなかった。
引用:『銀河鉄道の父 (講談社文庫)』(門井慶喜 著)電子書籍P74
このような政次郎の思考が本当に面白いですね。
賢治は石集めに何年もハマり、石っこ賢さんとあだ名がついて、石の話をしないだけで近所の人に心配されるようになりました。
政次郎はそんな賢治を、執着しすぎではと心配しつつ、助けたいという衝動にかられます。
そして衝動のままに石の勉強をして賢治に披露し、集めるだけでは何にもならないから台帳をつけるように提案します。
さらに石を収納する標本箱をありえないくらいたくさん買ってくるのです。
宮沢家はお金持ちでした。
政次郎は惜しみなく賢治にお金を使い続けます。
それも愛情表現なんですよね。
ため息をついた。われながら愛情をがまんできない。不介入に耐えられない。
父親になることがこんなに弱い人間になることとは、若いころには夢にも思わなかった。
引用:『銀河鉄道の父 (講談社文庫)』(門井慶喜 著)電子書籍P197
愛するものや守りたいものができると、人間は弱くなるんですね。
このように、政次郎の葛藤や弱さがこれでもかと登場します。
賢治がしっかりした長男ではなかったからですね。
5人兄弟なのに、他の子にはほとんど目がいかないくらい、目の離せない賢治でした。
他の子がちょっとかわいそうに思いました(;^_^A
こんなに弱さも全開な政次郎なのに、賢治から見た政次郎は全然違いました。
どう思っていたのかは、本を読んでご確認くださいね。
この本を読んで、父親の心の中を知ることができて、自分の父親ももっと大事にしなきゃと思いました。
作品中に出てきた名言
それでは、本作品に出てきた名言を紹介していきます。
──こうする。 と言ったら何があっても意見を枉げなかった。なるほど無敵だろう。
大人の世界もおなじだが、議論に勝つのは弁の立つ人間ではない。話を聞かない人間なのである。
引用:『銀河鉄道の父 (講談社文庫)』(門井慶喜 著)電子書籍P57
議論に勝つのは話を聞かない人間、というのは目からウロコでした。
話を聞かない人間とはそもそも議論が成り立たないですね。
議論を成り立たせないというのが議論に勝つコツになるのでしょう。
私にできるかは自信がありませんが、、、
好きなことを仕事にするなど本末転倒もはなはだしい。そんなのは謡や噺家の生きかただじゃ。
堅気の人間には順番が逆だ。仕事だから好きになる、それが正しい。
引用:『銀河鉄道の父 (講談社文庫)』(門井慶喜 著)電子書籍P166
堅気の人間は、仕事だから好きになる、が正しい。
好きになって、やりがいを見いだせれば、ストレスにならないですね。
今更ですが、この心がけでいこうと思いました。
仕事があるということの最大の利点は、月給ではない。いわゆる生きがいの獲得でもない。
仕事以外の誘惑に人生を費消せずにすむというこの一事にほかならないのである。
引用:『銀河鉄道の父 (講談社文庫)』(門井慶喜 著)電子書籍P288
この言葉を読んで、犯罪者に無職の人が多いことを思い出しました。
犯罪でなくても、暇を持て余しているとろくなことを考えません。
とても納得してしまった言葉でした。
最後に
第158回直木賞を受賞した門井慶喜さんの『銀河鉄道の父』を紹介しました。
1冊の中に父親の愛情がこれでもかとあふれています。
まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。
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