【感想】第166回直木賞『塞王の楯』今村翔吾

直木賞
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この記事では、第166回直木賞に輝いた今村翔吾さんの『塞王の楯』を紹介します。

本作品を読んだ感想をひと言で言うと「いやーすごかった!!!」です。

気持ちが高揚したままラストを迎えました。

正直ものすごく盛り上がったのに、ラストで「え?」となることがまぁまぁありますよね。

「え?」がなく、ラストまでずっと心を持っていかれたままの戦国エンターテイメント小説でした。

戦のない、戦で家族を失うことのない、泰平の世にするのに必要なものは何かを追い求める物語です。

もう少し具体的に感想をまとめましたので、ぜひ最後までご覧になってください。

この本はこんな人におすすめ
  • 戦国時代が好きな人
  • 石垣や鉄砲に興味がある人
  • 直木賞受賞作品に興味がある人

『塞王の楯』について

タイトル『塞王の楯』
著者今村翔吾
出版社集英社
発行日2021年10月26日
ページ数560P

タイトルの画数が多いので、難しい本なのかなと思っていました。

しかし、そんな心配は全くご無用です。

読み始めたらすぐに物語の世界に引き込まれますよ。

著者について

著者

著者である今村翔吾さんのプロフィールを紹介します。

1984年京都府生まれ。

2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビューし、2018年に同作で第7回歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞を受賞。

同年「童神」(刊行時『竜の神』に改題)で第10回角川春樹小説賞を受賞、第160回直木賞候補となった。

2020年『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。

同年『じんかん』で第11回山田風太郎賞を受賞、第163回直木賞候補となった。

2021年「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第6回吉川英治文庫賞を受賞。他の文庫書下ろしシリーズに「くらまし屋稼業」がある。

引用:集英社『塞王の楯』(著 今村翔吾)

3回目のノミネートで直木賞を受賞されていますね。

『塞王の楯』は、私が今まで読んだ直木賞受賞作の中でも三本指に入る好きな作品です。

他の作品をまだ読んでいないので、直木賞候補作から読んでみたいと思っています。

『塞王の楯』のあらすじ

あらすじ

匡介きょうすけは越前国一乗谷に生まれた。

朝倉家が織田信長の軍に侵攻され、逃げる途中で家族と離れ離れになってしまう。

そして1人山城に逃れたところを飛田源斎とびたげんさいに助けられる。

源斎は、近江国穴太あのうの天才石垣職人だった。

匡介は源斎を頭とする穴太衆の飛田屋で育てられ、後継者になるべく副頭に任命されていた。

見どころ

見どころ

この本の見どころは、何と言っても「楯」と「ほこ」の戦いです。

「楯」= 最強の防御の石垣

VS

「矛」= 最新鋭の攻撃の鉄砲

最高の石垣を積む匡介と最強の鉄砲を作る彦九郎げんくろう

天才2人の戦いにハラハラドキドキで、手に汗握りっぱなしになりますよ。

人はなぜそこまでして命を懸けて戦うのか。

飛田屋の頭が代々受け継ぐ奥義とは何なのか。

匡介の恋の行方はどうなるのか。

そんなところも見どころです。

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『塞王の楯』は電子書籍でも読むことができます。電子書籍で読むなら、専用リーダーがあると目が疲れなくて楽ちんですよ。

『塞王の楯』を読んだ感想

それでは、本作品を読んでみた感想を述べていきます。

京極高次は名将か

兜

京極高次の話から、先見の明があって、誰よりも武力に優れているものが名将とは限らないと思いました。

皆にも生きて欲しい。儂も死にたくない。大切な者と共に生きたいのだ。たとえ愚将の誹りを受けようとも

引用:集英社『塞王の楯』(著 今村翔吾)

このようなことを言う大将は、褒められたものではありませんね。

実際に、家臣を死なさないために、大名としての地位も領地もかなぐり捨てた過去を持っていて、愚将のそしりを受けています。

でも、いやだからこそ、誰よりも優しいからこそ、皆に愛されている

そして、高次は自分が無力なのを恥ずかしいと思っていない。

皆の力があってこそ自分は支えられていると公言している。

誰よりも優秀で皆を引っぱっていくリーダーももちろんありですが 、皆の力を信じて任せて責任を取ってくれるリーダーもありですね。

むしろやりがいを感じると思います。

そのようなリーダーの元で仕事をしてみたい。

時代のせいなのか私の会社だけなのか。

管理者の質が変わってきているように思います。

部下に偉そうに指示するだけでフォローもなし。 何かあると「言ったのに」と部下のせい。

そんな管理者たちにうんざりしていたので、高次のような武将にとても心惹かれました。

自分の才能を試してみたい、この将のために働きたい。

そして、誰もが殿には自分がいないとダメだと思っている。

そう思わせてくれる高次は名将だと私は思います。

戦とは人災の最たるもの

落城

自らが命を落とすのは言うまでもないこと。

仮に生き残ったとしても家族を失い、故郷を奪われ、思い出の籠った柱の一本まで灰燼と化す。

戦とは間違いなく、人災の最たるものであろう。

引用:集英社『塞王の楯』(著 今村翔吾)

戦に敗れて落城となると、影響を受けるのは武士だけではありません。

  • 匡介 父母妹を失う
  • 初(高次の妻、お市の娘) 2度の落城、父、義父、母を失う
  • 夏帆(初の女房) 小谷城で母を失う

本作品の主な人物だけでも上記のような目にあっています。

周りの人が忘れたとしても、何年たっても忘れられない、風化されない心の傷を負うのです。

初は高次の妻になっても、たびたび悪夢にうなされました。

現代では戦争があって、人災ではないですが地震や津波がありますね。

被害にあった人にとっては、何十年経っても消えない心の傷が残っていることを覚えていようと思いました。

矛と楯の名人同士の戦いがすごかった

盾と矛

匡介が強固な石垣を造るのも、彦九郎が至高の鉄砲を作るのも目的は同じでした。

  • 矛(鉄砲) 殺して守る
  • 楯(石垣) 殺さないで守る

どちらも領民を守るため。

そして、戦いを終わらせるため。

2人の、特に匡介の命を懸けた戦いが、技と技のぶつかり合いが見事でした。

天下分け目の関ケ原の戦いの直前。

大津城に立てこもる京極高次を守る匡介。

高次を攻める西軍の立花宗茂の下で戦う彦九郎。

矛と楯のどちらが勝つのか、どちらが泰平の世をもたらすのか。

その決着にとても胸が熱くなりました。

武将にばかり目がいきますが、その裏で職人が命を懸けて戦っていたことを知ることができたのは大きな収穫となりました。

最後に

第166回直木賞を受賞した今村翔吾さんの『塞王の楯』を紹介しました。

戦国時代が好きな人にはうってつけのエンターテイメント小説となっています。

まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。

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