この記事では、2024年本屋大賞第5位となった多崎礼さんの『レーエンデ国物語』を紹介します。
この本は、壮大なファンタジーの物語です。
本を読むメリットの1つに、新たな体験や冒険ができるということがありますね。
本作品はそのメリットを存分に享受できます。
物語の世界にどっぷりと浸かってしまうので、まとまった時間がとれるときに一気読みするのがおすすめ。
この本に出てくる人生に関する名言を紹介しながら感想をまとめました。
ぜひ最後まで読んで、本選びの参考にしていただければ幸いです。
『レーエンデ国物語』について
タイトル | レーエンデ国物語 |
著者 | 多崎礼 |
出版社 | 講談社 |
発行日 | 2023年6月14日 |
ページ数 | 536P(電子書籍) |
ファンタジーものは、とてつもなく非現実感を味わえますよね。
旅行から帰ってきたときのように、しばらく現実に戻れないというか戻りたくない気持ちになりました。
私の苦手とするカタカナの名前やSFやファンタジー。
でもそんなこと忘れるくらい物語の世界に入り込めました。
著者について
著者の多崎礼さんのプロフィールです。
2006年、『煌夜祭』で第2回C★NOVELS大賞を受賞しデビュー。
著書に「〈本の姫〉は謳う」、「血と霧」シリーズなど。
引用:『レーエンデ国物語』(多崎礼 著)
本に記載されたプロフィールは、とてもあっさりとしたものでした。
本作品が第45回吉川英治文学新人賞、2024年本屋大賞第5位となっています。
『レーエンデ国物語』のあらすじ
聖イジョルニ帝国の貴族の娘ユリアは、英雄である父ヘクトルと旅に出る。
行先は呪われた地であるレーエンデ。
ユリアはレーエンデの幻想的な世界に魅了される。
寡黙な射手のトリスタンと出会い、 初めての親友ができ、初めての恋を経験した。
自分の居場所や生き方について考えるようになったユリアは、争乱に巻き込まれてしまう。
見どころ
政治の道具として生きるしかないと思い込んでいたユリアが、トリスタンやレーエンデの住民たちと関わるうちに変わっていくところが見どころになります。
最初はヘクトルの命を狙ったトリスタンがヘクトルと築いた信頼関係も見どころです。
2人の会話がとても面白いですよ。
『レーエンデ国物語』の名言と感想
本作品には、人生に関する名言がたびたび出てきました。
その名言を紹介しながら感想を述べたいと思います。
自分の価値は自分で決める
取るに足らない、おおよそ無価値な人生でも、僕にとって価値があるなら、それはとても幸せなことなんじゃないかって。
引用:『レーエンデ国物語』(多崎礼 著)電子書籍P104
ヘクトルのように英雄ではない、歴史に名を残すわけでもない人生は価値がないのでしょうか。
そんなはずはありませんよね。
もしそうなら大多数の人生が価値がないことになってしまいます。
自分にとっては価値がある。
根拠なんかなくても、そう信じて疑わない人になりたいと思いました。
あんたは他人に求められる自分こそが理想の自分だと思ってるみたいだけど、理想の自分ってのは自分がなりたい自分のことをいうのさ。
引用:『レーエンデ国物語』(多崎礼 著)電子書籍P342
人に必要とされると自分に価値があると思いますよね。
自分が誰かの役に立つということは、生きる意味になったりします。
でも、それに縛られるのは違うということですね。
必要とされる自分となりたい自分。
自分はどうありたいのかをいつも見失わないようにしたいです。
人生を自分が選ぶ
どのように生きるかは自分が決める。
トリスタンの言葉が心に刺さりました。
僕の望みは、
何ものにも縛られることなく自由に生きること。自分が正しいと思う道を進むこと。悔いのない人生を生き尽くし、満足して笑って死ぬこと。
それだけです。
引用:『レーエンデ国物語』(多崎礼 著)電子書籍P104
こんな風に生きて、笑って死ねたら最高ですよね。
私はすでに50年ほど生きています。
でも自分でちゃんと考えて、後悔のない道を進んできたと胸を張って言えないことに気づいてしまいました。
今からでも自由に正しく悔いなく生きて、笑って最後を迎えたいと思いました。
だがなトリスタン。
たとえ世界中の人間が『不可能だ』と叫んでも、俺が諦める理由にはならない。
俺が可能だと信じる限り、立ち止まる理由はないんだ。
引用:『レーエンデ国物語』(多崎礼 著)電子書籍P278
英雄ヘクトルの言葉です。
かっこいいですよね。
実際にヘクトルはあきらめません。
ダメかも、間に合わないかも、と読者全員が思ったとしても、手を抜きません。
誰に何と言われようが、自分が可能だと信じる道を全力で進む。
何歳になっても、その熱い気持ちを持ち続けたいと思ってしまいました。
こんな風に愛されてみたかった
もう50代の私がこんなことを言うなんて、キモイと思われるのは承知の上で言っちゃいます。
人生のうち一度でも、ユリアのように愛されてみたかった。
トリスタンのユリアに対する愛。
これが本当の愛ではないかと思いました。
ユリアは花だった。泥濘と暗黒しか知らなかった僕が初めて見つけた花だった。銀呪に冒された手で触れることなど出来なかった。
それでも彼女の傍にいたくて、自分に出来ることを探して、それで僕は雨になろうと思った。雨になって彼女を励ましたかった。
顔を上げて輝いてほしかった。いつまでも笑っていてほしかった。
ただ傍にいて、咲いていてくれるだけでよかった。
引用:『レーエンデ国物語』(多崎礼 著)電子書籍P441
こんな風に思われてみたいと思ったのは、私だけではないはず。
トリスタンとユリア。
お互いへの思いが、とても純粋で真っ直ぐで思いやりにあふれていて、まぶしいばかりでした。
物語から離れ、自分を見つめ直した言葉
物語からひと時離れて、自分を見つめ直す言葉がありました。
自分がこの世を去る時にはこの冬のことを思い出そう。 温かな思い出を胸に抱いて目を閉じよう。
そんな風に思えるほど、かけがえのない冬だった
引用:『レーエンデ国物語』(多崎礼 著)電子書籍P223
ヘクトルとトリスタンとユリアは3人で冬を過ごし、一緒に新年を迎えた。
自分が死ぬときに思い出したい温かな甘い思い出。
私にもそんな思い出があるだろうかと思い返してみました。
あるはずなのに、パッと出てこなかったのが悲しかったです。
死ぬときに思い出したい思い出は、辛いときに自分を支えてくれるものでもありますよね。
休みの日にでもノートに書き出しておこうと思いました。
もう1つ自分を見つめ直す言葉を紹介します。
誰の人生にも転換点とも呼ぶべき一瞬がある。
渦中にある時にはそれとはわからなくても、 後に振り返って、あれが分水嶺であったと気づく瞬間がある。
引用:『レーエンデ国物語』(多崎礼 著)電子書籍P358
これは私にもすぐに思い出すことができました。
人生の転換点をいくつも通って今に至ります。
「温かい思い出」とともに、通ってきた分水嶺をノートに書き出して、自分の人生を振り返るのもいいなと思いました。
50歳を過ぎると、過去のことばかり思い出します。
もう走馬灯?もう死ぬの?と思ってしまうほど。
思い出せなくなる前に過去を振り返ったら、前を向いて進んでいこうと思います。
最後に
2024年本屋大賞第5位となった『レーエンデ国物語』を紹介しました。
ファンタジーが得意でない私の心を鷲掴みした物語です。
まだ読んでいない人は、ぜひ読んで冒険の旅に出かけてみてください。
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2024年本屋大賞ノミネート作品をまとめた記事があります。ぜひご覧ください。