【感想】小説『ツバキ文具店』手書きの手紙が想いを運ぶ

本屋大賞
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この記事では、2017年本屋大賞第4位を獲得した小川糸さんの『ツバキ文具店』を紹介します。

手書きで手紙を書く機会ってほとんどなくなりましたよね。

今でも手書き必須なのは、遺言書くらいでしょうか。

『ツバキ文具店』は“代書屋”を継いだ女性の物語です。

本作品を読むと、メールではなく、手書きで書く手紙の素晴らしさを改めて思い起こし、大切な誰かに手紙を書きたくなります。

そんな『ツバキ文具店』を読んだ感想を、心に響いた言葉を紹介しながらまとめました。

ぜひ最後まで読んで本選びの参考にしていただけたら嬉しいです。

この本はこんな人におすすめ
  • 最近は手紙を書いたり、もらったりしていないと気付いた人
  • 古き良き日本のしきたりを思い出したい人
  • 本屋大賞に興味がある人

『ツバキ文具店』という本について

タイトルツバキ文具店
著者小川糸
出版社幻冬舎
発行日2016年4月21日
ページ数346P(文庫)

私が持っている文庫本では、左のページ下の端っこがパラパラ漫画になっていて、とてもかわいくてニヤニヤしちゃいます。

この本を読んでいると、そのようなちょっとした心遣いが大事なんだと気づかされます。

著者について

著者である小川糸さんのプロフィールです。

1973年生まれ。

デビュー作 『食堂かたつむり』(2008年)以来30冊以上の本を出版。
作品は英語、韓国語、中国語、ベトナム語、フランス語、スペイン語、イタリア語など様々な言語に翻訳され、様々な国で出版されている。


『食堂かたつむり』は、2011年にイタリアのバンカレッラ賞、2013年にフランスのウジェニー・ブラジエ賞を受賞した。
またこの作品は、2010年に映画化され、2012年には『つるかめ助産院』が、2017年には『ツバキ文具店』、2020年には『ライオンのおやつ』がNHKでテレビドラマ化された。


『ツバキ文具店』『キラキラ共和国』そして『ライオンのおやつ』は、日本全国の書店員が主催する「本屋大賞」候補となった。


最新作は、『椿ノ恋文』(幻冬舎)。


引用:糸通信

『ツバキ文具店』と同じく本屋大賞の候補となり、NHKでドラマ化された『ライオンのおやつ』を読んだことがあります。

小川糸さんはとてもやさしい表現で人の温かさを伝える作家さんだと思いました。

『ライオンのおやつ』にも興味のある人は、こちらもぜひご覧ください。↓

『ツバキ文具店』のあらすじ

ツバキ文具店は文具を売るだけではなく、江戸時代から続く由緒ある代書屋でもあった。

雨宮鳩子(ポッポちゃん)は、代書屋を継ぐべく、祖母(先代)に厳しく育てられる。

練習のために親友と呼べる友達もできなかった鳩子は、高校生の時に反乱を起こし、それ以来祖母からは遠ざかっていた。

祖母の死後、店を守ってくれていたスシ子おばさんの死をきっかけに、ツバキ文具店を継ぐため数年ぶりに鎌倉に帰ってきた。

見どころ

代書を依頼してくる人はみな事情を抱えている。

依頼者に寄り添い、鳩子がどのように手紙を書くのか。

手紙によって問題が解決したり、喜んでもらえたりしていくところが見どころになります。

また代書をしていく中で、祖母に対する怒りや憧れや後悔など様々な思いと向き合い、変わっていく鳩子も見どころです。

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私の個人的な感想ですが、電子書籍をKindle電子書籍リーダーで読むようにしてから、目が疲れにくくなって、読書が快適になりました。

『ツバキ文具店』を読んでみた感想

それでは『ツバキ文具店』を読んだ感想を、心に響いた言葉とともに述べていきます。

バーバラ婦人がとても素敵で憧れた

素敵なおばあさん

鳩子の家のお隣さん、バーバラ婦人がとても素敵な人でした。

「バーバラ婦人は、今までの人生でもっとも幸せだったのって、いつですか?」

ふと、聞いてみたくなった。

今に決まってるじゃない!」

引用:小川糸『ツバキ文具店』文庫P252

この歳になるとね、毎日毎日が冒険なのよ。面白いことが、次々と起こるから

引用:小川糸『ツバキ文具店』文庫P315

バーバラ婦人の年齢はわかりませんが、おそらくおばあちゃんと呼ばれるくらいの歳ではないかと思います。

そのくらいの歳になっても、今が一番幸せ、毎日が冒険!って言えるなんてすばらしいですね。

私なんて、50代入ったばかりでもう体はガタガタだわ、未来に希望がないだわで、憂鬱になったりするのに。

でも、まずは今が一番幸せだと思うことが大事なんですよね。

今置かれている状況に満足して「足るを知る」ということですね。

そして起きることを面白がっていると、楽しく生きられるような気がします。

それから、バーバラ婦人が鳩子にプレゼントした秘密のおまじないがまた素敵です。

心の中で復唱する。そうすると、確かに何もなかった心の暗闇に星が増えて、最後はまぶしいほどだった

引用:小川糸『ツバキ文具店』文庫P166.7

私もこの秘密のおまじないを、目を閉じて唱えてみました。

自然と口角が上がって、胸のあたりに灯がともったように明るくなりました。

疲れた時や辛くなった時に唱えられるように、忘れないでいたいです。

私にもバーバラ婦人のようなお友達が欲しいと思いました。

「書く」ことの素晴らしさを思い出した

手紙を書く女性

文字は「書く」から「打つ」に変わってきていますが、「書く」ことの素晴らしさを思い出しました。

炭を磨る作業には鎮静効果があるというけれど、私は久しぶりに、意識が薄れていくような心地よい感覚を体全体で味わっていた。

引用:小川糸『ツバキ文具店』文庫P25

炭を磨る作業にある鎮静効果は、茶道や座禅、瞑想などにもありますね。

そして、「書く」という行為にもストレスを和らげ、心を落ち着かせる効果があるそうです。

私も心が乱れているときには、日記のように書いたり、写経をしたりして落ち着かせることをよくやっています。

「書く」ことに鎮静効果がありますが、残した文字にも力がある。

そして、体が滅びても尚、書き残した文字の中に脈々と生きている。そこには魂が宿っている。書き文字というのは、本来そういうものだった。

引用:小川糸『ツバキ文具店』文庫P175

書き残した文字には魂が宿っている、という言葉にドキッとしました。

博物館に行くと、有名な偉人が残した手紙などを見ることができますね。

手書きの文字には個性があふれていて、その人の人となりが想像できますし“魂”を感じます。

「文字を書く」ということは、思っていたよりもずっと意味のあることなのだと改めて思いました。

手のひらに残っているものを大事にすればいい

祖母と孫

鳩子にとって先代(祖母)は厳しいだけの人でした。

林間学校や修学旅行にまで筆を持って行って練習させられたり、友達を作る暇もなかったり。

高校生の時に、鳩子は反乱を起こし、字の練習からも先代からも遠ざかります。

海外にまで行ってしまいました。

一時は先代に反抗し、代書屋としての運命を呪ったりしたけれど、結局私に身についてるのはそれだけなのだ。

引用:小川糸『ツバキ文具店』文庫P73

芸は身を助けてくれるというのを、私は自分の人生で実感した。

この時初めて、私は先代に感謝したのだ。

引用:小川糸『ツバキ文具店』文庫P74

海外でお金に困ったときに、鳩子を助けたのは「字を書くこと」でした。

幼いときから、遊ぶ暇もないくらいさせられた練習が役に立ったのです。

一芸を身に着けるには生半可な努力ではできないのですね。

そうやって身に着けた一芸を生かし代書屋を継ぎました。

そんなある日、先代はイタリアに住む日本人の静子さんと文通をしていたことがわかります。

静子さんの息子が持参した先代からの手紙は、なんと113通

113通の手紙の全てに鳩子がいました。

まわりまわって鳩子は先代の思いを知ることができたのです。

手紙ってすごいですね。

ぐちゃぐちゃになった鳩子の気持ちに寄り添って、こんなことを言ってくれた人がいました。

失くしたものを追い求めるより、今、手のひらに残っているものを大事にすればいいんだって。

(中略)

誰かにおんぶしてもらったなら、今度は誰かをおんぶしてあげればいい。

引用:小川糸『ツバキ文具店』文庫P333

あーすればよかった、こうしてあげれば良かった、と後悔してもどうにもならない。

だから今自分に残っているもの、人、関係を大事にすればいい。

してもらったことを誰かにしてあげればいい。

私も今残っているものを大事にしたいと思いました。

最後に

2017年本屋大賞第4位に輝いた『ツバキ文具店』を紹介しました。

手書きの手紙の良さを再確認できて、大切な誰かに手紙を書きたくなる。

大切な人をもっと大切にしたくなる。そんな物語です。

まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。

ざきざき
ざきざき

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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『ツバキ文具店』には続編があります。続きが気になる人は『キラキラ共和国』もぜひ読んでみてください。

紹介記事はこちらです。↓

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