【感想】本屋大賞ノミネート『月のほとりに立つ者は』

本屋大賞
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この記事では、2023年本屋大賞9位となった寺地はるなさんの『月のほとりに立つ者は』を紹介します。

みなさんは、恋人や家族のことをどれだけ知っていますか?

私はこの本を読んで、実はほとんど知らないのではないかという結論にいたりました。

口から出た言葉や行動からすべてを知ることはできない。

そもそも自分自身のことすらわかっていないのだと。

そんなこの本を読んだ感想をまとめました。

ぜひ最後まで読んで、本選びの参考にしていただければ幸いです。

見出し
  • 思い込みや偏見について考えたことがある人
  • 身近な人のことを知ったつもりになっている人
  • 本屋大賞に興味がある人

『月のほとりに立つ者は』について

タイトル月のほとりに立つ者は
著者寺地はるな
出版社双葉社
発行日2022年10月20日
ページ数218P

ページ数も登場人物も多くはないので、とても読みやすい本になっています。

タイトルは『明日がよい日でありますように』から改題されました。

私は物語を読んで、元のタイトルの方が好きだし、しっくりくるなと思ってしまいました

『月のほとりに立つ者は』は、物語の中に出てくる本『夜の底の川』の一節。

『明日がよい日でありますように』は、物語に出てくる手紙の一節で、相手への気持ちが伝わるとても素敵な言葉だと思ったからです。

ざきざき
ざきざき

みなさんがどう思うのか聞いてみたいですね。

著者について

著者である寺地はるなさんのプロフィールです。

1977年、佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞し、デビュー。

2020年度の咲くやこの花賞文芸その他部門を受賞。

2021年『水を縫う』で第9回河合隼雄物語賞を受賞。

他の著書に『夜が暗いとはかぎらない』『どうしてわたしはあの子じゃないの』『声の在りか』『ガラスの海を渡る舟』『カレーの時間』などがある。(2022年10月現在)

引用:『川のほとりに立つ者は』(寺地はるな 著)

本作品で著者の作品を初めて読みました。

人間の嫌な部分もはっきりと書く作家さんだという印象を受けました。

なので、落ち込んでいたり傷ついたりしているときではなく、元気なときに読むのがいいと思います。

『月のほとりに立つ者は』のあらすじ

カフェ「クロシェット」の雇われ店長をしている原田清瀬に知らない番号から着信があった。

病院からの電話で、松木圭太がケガを負い意識不明の重体だという。

松木は、数か月前まで清瀬が付き合っていた相手。

いつも温厚だった松木が、幼馴染の岩井たつきと胸ぐらを掴みあうケンカをして、2人とも重傷を負っていた。

清瀬は松木のことを何も知らなかったことに気づき、合鍵で松木の部屋に行ってみることにした。

見どころ

清瀬が松木のことを何も知らなかったと気づいてから、周りの人のことも考えるようになって感謝していくようになるところが見どころになります。

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『川のほとりに立つ者は』は電子書籍でも読むことができます。電子書籍を専用リーダーで読むようにしてから、目が疲れなくて楽ちんになりました。

『月のほとりに立つ者は』を読んだ感想

それでは本作品を読んだ感想を述べていきます。

気持ち悪さを最後まで拭えなかった

気持ち悪がる女性

この作品には、嫌な感じの人が2人登場します。

最後は希望もあり、いい話だったなぁという印象を残したにもかかわらず、その2人に対して抱いた気持ち悪さを読後も引きずったままでした。

1人目は、樹が恋をしてしまう天音まおです。

彼女の状況に同情できるところはありますが、こじれ過ぎだし、ひねくれ過ぎ。

男に頼るしかない、男に頼ると決めてそうしている。

なのに、自分を下に見て、かわいそうな女を助けて自己肯定的になる男を憎んでいる。

そして、男に頼らなくても生きていける女に対して、嫌悪感丸出しで「運がいいだけ」だと言い、傷つけることを平気で言う。

男に見せる顔と清瀬に見せる顔が違いすぎて胸くそが悪くなるし、何を考えているのかわからない人というのはただただ不気味ですよね。

それからもう1人は、天音の元同棲相手の小滝。

この男の粘着質と暴力。

絶対関わっていはいけない種類の人のいちいちに、気持ち悪くて仕方がありませんでした。

無知の罪

無知

この物語には、発達障害の人が2人登場します。

そのような障害があることを知らない「無知」であることは、思い込みや偏見で人を判断して追い詰めてしまう罪となることを学びました。

品川さんの話は、清瀬に強い衝撃を与えた。

今までずっと他のスタッフには通じてきたことがどうして品川さんにだけ通じないのかと腹を立て、人格上の問題であると決めつけていた。

引用:『川のほとりに立つ者は』(寺地はるな 著)電子書籍P104

人と同じようにできない人を人格上の問題と決めつける。

無知とは恐ろしいですね。

ディスレクシア(発達性読み書き障害)について書かれた本。

ちょっと気になって調べてみたんだけど、いっちゃんってこれかもしれない。 全体的な発達に遅れはないのに、読み書きだけが困難な人がいるらしい。

引用:『川のほとりに立つ者は』(寺地はるな 著)電子書籍P144

ディスレクシアという言葉、そのような障害について初めて知りました。

教科書を読んでもらえば耳で理解できる、とどれほどいっちゃんが主張しても、松木以外の人間は「そんなの、ただの甘えだ」「みんなはちゃんとやっている」としか言わなかった。

引用:『川のほとりに立つ者は』(寺地はるな 著)電子書籍P81

障害なのに、みんなと同じようには出来ないのに、「ちゃんとやっていない」と言われてしまう。

いっちゃんや品川さんが苦しんできたことに胸が痛くなりました。

まずは「知る」こと、そして同じようにできない人がいたら、もしかしたらと可能性を考えることが大事だと思いました。

ざきざき
ざきざき

知ったうえで、どのように配慮したらいいのかは、わからないんですけどね。

品川さんはその「配慮」にも苦しんでいましたので、、、

行動で人を判断できるか

心の扉を開く

日頃の言葉や行動から、人を判断することができるでしょうか。

また疑わしい理解できない行動をとられたとき、何か理由があるのではないかと考えることができるでしょうか。

そもそも人を判断する前に、自分がどういう人間なのかわかっていないことに気がつきました。

ほんとうの自分とか、そんな確固たるもん、誰も持ってないもん。

いい部分と悪い部分がその時のコンディションによって濃くなったり薄くなったりするだけで

引用:『川のほとりに立つ者は』(寺地はるな 著)電子書籍P156

この言葉にとても納得してしまいました。

人に親切にできるときと、見ないふりをしてしまうとき。

どちらが本当の自分かというと、どちらも本当ですね。

いつもいつも同じような熱量でなんていられません。

清瀬には松木が今までとってきた行動でしか、松木を判断でけへんってことやん。

疑わしい行動をしたから松木は清瀬に疑われた。それだけのことちゃうの

引用:『川のほとりに立つ者は』(寺地はるな 著)電子書籍P157

松木が「言えない」の一点張りだったため、清瀬とケンカとなり音信不通となってしまいました。

何か理由があったと考えられなかった清瀬は後悔しますが、それはなかなか難しいですよね。

言動で判断するのが普通です。

疑わしければ疑う。説明もなければ、説明できない=やましいこと、と考えて当然です。

自分自身がブレブレなのに人を判断するのはおこがましいけど、そうするしかない。

誤解したりされたりしながら人間同士繋がっていくのだと思いました。

最後に

2023年本屋大賞にノミネートされた寺地はるなさんの『月のほとりに立つ者は』を紹介しました。

身近な人のこと、自分のことをどれだけわかっているか確認したくなる物語です。

まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。

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