【感想】直木賞候補『家康、江戸を建てる』門井慶喜

直木賞
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この記事では、第155回直木賞にノミネートされた門井慶喜さんの『家康、江戸を建てる』を紹介します。

秀吉より関八州を与えられた家康が、江戸を本拠地と決め、灰色の大地を人が住めるようにして、日本一の都市にするまでの物語。

治水、貨幣、石垣、築城の専門家たちが出てきます。

今の私たちの暮らしがあるのは、この人たちの働きによるものです。

何だか難しそうに感じるかもしれませんが、内容は難しいことはなく、誰にでも理解しやすい物語となっています。

普通の歴史ものとは違うこの本を読んだ感想をまとめました。

ぜひ本選びの参考にしていただければ幸いです。

この本はこんな人におすすめ
  • 関東首都圏に住んでいる人、住んだことのある人
  • 町づくりに興味がある人
  • 直木賞に興味がある人

『家康、江戸を建てる』について

タイトル家康、江戸を建てる
著者門井慶喜
出版社祥伝社
発行日2016年2月9日
ページ数374P(電子書籍)

この本の構成は次のとおりです。

  • 第一話 流れを変える
  • 第二話 金貨を延べる
  • 第三話 飲み水を引く
  • 第四話 石垣を組む
  • 第五話 天守を起こす

以上5話が収録された連作短編集となっています。

家康の希望は、「江戸を大坂にする」でした。

地盤を変え、貨幣を造り、飲み水を引いて、人を集めて住めるようにする。

そのために何十年にわたって奮闘した人がいたと言う話は、とても興味深く感慨深いものでした。

著者について

著者である門井慶喜さんのプロフィールです。

1971年、群馬県生まれ。同志社大学文学部卒(日本史専攻)。

2003年に「キッドナッパーズ」で第42回オール讀物推理小説新人賞を受賞。

2015年『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補となる。本書は日本史史上最大のプロジェクトを成し遂げた徳川家康を新たな視点で描いた快作。

主な著書に『かまさん』(祥伝社刊)『シュンスケ!』『新選組颯爽録』『マジカル・ヒストリー・ツアー』など。

引用『家康、江戸を建てる』(門井慶喜 著)

門井さんの著作は、第158回直木賞候補となり、映画にもなった『銀河鉄道の父』を読んだことがありました。

いちいち父の考えや行動が面白く、あっという間に読み終わった作品でした。

本作品は、著者がちょいちょい読者に語りかけますので、著者との距離が近く感じます。

また、ところどころで現代との繋がりを確認させてもらえたので、とてもわかりやすく他の歴史ものとは違った趣きもありました。

『銀河鉄道の父』もおすすめです。まだ読んでいない人はぜひ合わせてご覧ください。

見どころ

江戸を人が住めるようにするだけでなく、人を多く集め、商売もできて、大坂を超える町にしていく過程が見どころになります。

家康に命じられ、町作りに携わった人たちの苦労も見どころです。

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『家康、江戸を建てる』を読んだ感想

それでは、本作品を読んだ感想を各話ごとに簡単に述べていきます。

第一話 流れを変える

川

江戸は灰色の湿地帯だった。
とても人が住んだり田畑にできるような状態ではない。
井戸を引いたとして、塩辛くて飲めたもんじゃない。
そこで江戸の地ならしを命じられたのが、伊奈忠次 41歳
忠次は、江戸に流れ込む前に川を曲げればいいと考えた。

利根川の流れを変える。

田んぼを作り、次は物資運搬のため水路を作り、飲み水を運ぶ。

忠次の代では完成に至らず、2代先までかかった事業でした。

作物を育てるのにも、人間が生きるのにも水は必要です。

水の大切さを今一度考えさせられました。

400年ほど前に苦労があって、今の私たちの生活があるということを忘れてはいけないと思いました。

第二話 金貨を延べる

小判

家康が関東に入国して3年。
元々足利将軍家に仕えた金工技術に優れた彫金師である後藤長乗は、家康より関東の銭づくりを命じられる。
長乗は、ともに連れてきた橋本庄三郎を残し、早々に京都へ帰っていく。
それまでは大人しくしていた庄三郎だが、途端に野心をむき出しにした。

現代の私たちの経済生活の礎を築いたお話。

ここでは、仕事で役立つ名言がありましたので紹介します。

庄三郎。へりくだる人間は仕事もへりくだる。おのれを恃めたのめ

引用『家康、江戸を建てる』(門井慶喜 著)電子書籍P85

庄三郎に家康が言った言葉でした。

事実、まだ上方にいたころから、庄三郎は、  

――俺が後藤のあるじなら。  という意識とともに仕事をするのがつねだった。

傲慢さと責任感は、畢竟ひっきょうおなじものなのである。

引用『家康、江戸を建てる』(門井慶喜 著)電子書籍P86

おのれを恃むには、それなりの実績が必要。

そのために庄三郎は、自分が後藤のあるじならという意識で仕事をしてきたんですね。

傲慢さと責任感は同じもの、という言葉になるほど!と思いました

仕事に関しては、傲慢なくらいでないと人より成果を上げることはできません。

言いづらいことを言うときにこそ「おそらく」「だろう」は用いない。すっぱり言いきる。

それもまた庄三郎の処世だった。

引用『家康、江戸を建てる』(門井慶喜 著)電子書籍P134

この言葉は覚えておいて、そのときが来たら使おうと思いました。

言いづらいことはすっぱり言い切ること。

確かに、自信なさそうに「おそらく」「だろう」で話をされるとイラっとして、内容が頭に入ってきませんね。

庄三郎の働きで、今の経済生活が成り立っていると言うことに感慨深くなりました。

第三話 飲み水を引く

井戸水

江戸市民の飲み水、水道を引くお話です。

この一大事業は、大久保藤五郎→六次郎→春日与右衛門 と引き継いでいきました。

江戸の住民が増えてくると、藤五郎が引いた水だけでは足りなくなり、七井の池と言われれるところから水を引くことになります。

七井の池は、今の井之頭公園のあたり。

行ったことがあるだけに、こちらも感慨深く思いました。

第四話 石垣を組む

石垣

石切りの天才と石を積む天才、透視能力を持った2人の「見えすき」のお話です。

見えすきの吾平」は、伊豆で江戸城の石垣のための石を掘り出す。

吾平は、ある特定の平面に沿って割れる石の性質を読む天才です。

石が伊豆から船で運ばれてきたと言うことに驚きました。

もう1人の「見えすきの喜三太」は石を積むための能力を持ち、重さや偏りを瞬時に見極める天才です。

石を掘るにしても、石を積むにしても命懸けの仕事ですね。

実際に亡くなった人もたくさんいたでしょう。

この2人のような能力は、持って生まれた性質で、努力で得ることは難しいと思いました。

石切りと石積のために生まれてきたような人ですね。

最初は相手の能力を疑っていたのに、認めるようになり、敬意を持つように変わっていくという素敵なお話でした。

第五話 天守を起こす

天守

この話は天守を建てる職人も出てきますが、家康と秀忠のやりとりがメインになります。

戦乱の世が終わり平和になった今、天守は必要ないと言う秀忠。

秀忠と議論はしないで、白い天守を造れと命じる家康。

この世ではほんとうに大事なことは議論では決まらない、数字や脅迫や詐術や根まわしで決まる。

そんな政治のリアリズムが骨まで沁みこんでしまっている。そのくせ人間評価の尺度は誠意なのだ。

引用『家康、江戸を建てる』(門井慶喜 著)電子書籍P318

長年戦ってきた家康らしい言葉ですね。

ほんとうに大事なことは議論では決まらない、その通りだと思いました。

なので、家康は議論しないで一方的に決めてしまいました、、、

この時代の天守の色は黒が一般的なのに、なぜ家康は白にしたのかを秀忠が推理して、完成後に答え合わせをします。

完成した天守閣。4代将軍家綱の時代に焼失してしまいましたが、、、

白い天守の意味とその後260年平和な世が続いたことに、ぞわぞわっとするものがあって、感動しました。

最後に

第155回直木賞にノミネートされた門井慶喜さんの『家康、江戸を建てる』を紹介しました。

首都圏で生活している人、生活したことがある人にはぜひ読んで欲しい作品です。

まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。

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