【感想】第170回直木賞候補『まいまいつぶろ』村木嵐

直木賞
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この記事では、2023年下期の第170回直木賞候補となった村木嵐さんの『まいまいつぶろ』という本を紹介します。

江戸時代の第9代将軍である徳川家重をご存じでしょうか?

あまり有名な将軍ではないですよね。

大河ドラマ「吉宗」に出てきたので、暗愚な将軍だったという記憶があるなぁという程度の認識でした。

しかし本作品を読んで、想像を絶する苦しみの中にいた将軍だったことがわかりました。

たった一人でも意思の疎通ができて、心を通わせられる相手がいると、絶望しないでいられます。

『まいまいつぶろ』は、その「たった一人」に救われた将軍の物語です。

心に響いた言葉を紹介しながら読んでみた感想をまとめましたので、ぜひ最後まで読んでください。

この本はこんな人におすすめ
  • 江戸時代や徳川将軍家に興味がある人
  • 人と違う苦しみを味わった人の話を読みたい人
  • 直木賞に興味がある人

『まいまいつぶろ』という本について

タイトルまいまいつぶろ
著者村木嵐
出版社幻冬舎
発行日2023年5月24日
ページ数309P(電子書籍)

第170回直木賞候補作が発表になって、どの順番で読もうかと迷いました。

私は歴史小説も好きで、江戸時代の将軍や大奥の話も大好きです。

『まいまいつぶろ』を読むのが楽しみすぎて、一番最後に読むことにしました。

意味不明ですよね。

好物は最後にとっておきたいんです。

トリにふさわしい、期待を裏切らない本でした。

著者について

著者である村木嵐さんのプロフィールです。

1967年、京都市生まれ。京都大学法学部卒業。会社勤務を経て、1995年より司馬遼太郎家の家事手伝いとなり、後に司馬夫人である福田みどり氏の個人秘書を務める。

2010年、『マルガリータ』で第17回松本清張賞受賞。

近著に『せきれいの詩』『にべ屋往来記』『阿茶』などがある。

引用:『まいまいつぶろ 』(村木嵐 著)

司馬遼太郎さんとゆかりがあるのですね。

司馬遼太郎さんの本は、どこか暗いところがあります(嫌いではありません)が、村木さんの作品には暗いところがなく読みやすかったです。

『まいまいつぶろ』のあらすじ

8代将軍吉宗の嫡男長福丸(家重)は身体に障害があり、片手片足はほとんど動かせず、言葉もはっきり発することができなかった。

将軍継嗣でありながら周囲のものに侮られ、聡明な家重の弟(宗武)の方が9代将軍にふさわしいと、ほとんどの人が思っていた。

そんな中、家重の言葉を聞き取れる少年兵庫(忠光)が現れる。

忠光がいれば家重を将軍にできるのではないかと、数少ない家重の味方である者たちは考えるようになる。

見どころ

家重と忠光がどのように信頼関係を築き、生涯の友となっていったのか。

また宗武擁立をたくらむ幕閣たちとの戦いに勝利し、将軍になる過程は見どころ満載です。

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私の個人的な感想ですが、電子書籍をKindle電子書籍リーダーで読むようにしてから、目が疲れにくくなって、読書が快適になりました。

『まいまいつぶろ』を読んだ感想

それでは本作品を読んでみた感想を、心に響いた言葉を紹介しながら述べていきます。

身体の障害≠知能の障害であるということ

徳川家重

身体の障害を見て、知能も障害があると思われがちですが、これはイコールではありません。

そのことはテレビドラマになった『1リットルの涙』を読んで知りました。

『1リットルの涙』は、「脊髄小脳変性症」という病気になって、徐々に手足や言葉の自由を失って亡くなった木藤亜也さんが書いた日記です。

大脳は正常なので知能に障害はない。だから身体が不自由になっていくのをはっきりと認識できる。

言葉を発することができなくなるため、周りと意思疎通ができなくなる。

言葉が不明瞭になると、知的にも障害があるような扱いをされてしまう。

これほどつらい状況が他にあるでしょうか。

読みながら何度も涙が溢れました。

それからは、見た目で判断しそうなときに中身は違うかもしれない、と思い出すようになりました。

家重は脳性麻痺のため、身体に障害があったそうです。

長福丸の頻尿は生まれつきだから、癖といっては気の毒だが、周りにはどうしても堪え性のない愚者と映った。

不動たるべき上段に座す者が厠に立ちたがって身体をもぞもぞ揺するとは、傍で見ているこちらのほうが身悶えしたくなってくる。

引用:『まいまいつぶろ 』(村木嵐 著)電子書籍P16

身体に障害がない人や、不具合があっても家重ほどではない人にとっては理解しがたく、中身も愚者だと思われてしまうのですね。

でも、もし家重の知能が正常だったら、、、と考える人も出てきます。

この本を読んで、ますます身体の障害があるからといって知能にも障害があると決めつけてはいけないと思いました。

家重の言葉を理解し寄り添った二人が尊い

家重の言葉を理解し、家重に寄り添った人が二人いました。

その二人との関係がとても尊く、家重が決して孤独でなかったことが救いだと思いました。

運命の妻 比宮

花と姫

家重に寄り添った一人目は、正室の比宮増子です。

家重は比宮との婚約が決まったあと、不安でいっぱいになります。

誰でも結婚となれば不安はあるものですが、家重は言葉が話せないので、普通の人の何倍も不安になって当然ですね。

その不安を知った忠光は次のように言いました。

真心とは言葉で伝わるものではございませぬ。心にある大切なものは、どれも左様でございます。

(中略)

思いは言葉にせぬほうが伝わることがございます。 家重様のお優しさが、比宮様に伝わらぬ道理がございませぬ。

引用:『まいまいつぶろ 』(村木嵐 著)電子書籍P80

この言葉を受けて、家重はある方法で比宮に真心を伝えようとしました。

しかし、顔合わせで初めて家重を見た比宮はショックを受けてしまいます。

これは仕方がないと思いました。

でも彼女はただの身分の高いお姫様ではありませんでした。

もしも家重様のおつむりが御歳と同じであられたら、それが赤児のような入れ物に閉じ込められて、どれほどのお苦しみであろうな

引用:『まいまいつぶろ 』(村木嵐 著)電子書籍P104

諸侯たちに蔑まれているのをひたすら堪える家重を見て、知能は年齢と同じなのではないかと、もしそうだとしたらどれほどの苦しみかと・・・

「あまりにも無礼ではないか。家重様がどれほどの怒りを抑えておられるか、誰も思うてはみぬのか」

怒っているのは比宮のほうだ。

家重様のお味方になれるのは、妾だけではないか

引用:『まいまいつぶろ 』(村木嵐 著)電子書籍P105

比宮は人の気持ちがわかる人ですね。

そして家重の真心がちゃんと伝わっていたんだとも思いました。

このあと二人の心が通じ合った瞬間は涙が出ました。

自分を思いやってくれる比宮の存在が、どれほど家重を癒したか。

それまでの家重の孤独を思うと、この二人が夫婦になったのは運命としか思えませんでした。

無二の友 忠光

侍

二人目は家重の言葉を聞き取ることができた唯一の人、忠光です。

忠光の登場は、家重や家重を将軍にしたい人たちをとても喜ばせました。

でも家重の「口」になることは、よほどの覚悟がいることでした。

ただでさえ政の中央は、隙あらば取って食おうという智恵者たちで充ち満ちている

ちょっとやそっと目から鼻に抜けるといった頭では、とても泳ぎ渡ることなどできぬ深い淵だ。

引用:『まいまいつぶろ 』(村木嵐 著)電子書籍P31

ほんとに汚いな腐ってるな、と思う老中がいました。

いろいろありましたけど、家重が再び不自由しないために、堪えて踏ん張ります。

家重の口に徹したのです。

長年にわたる忠光の清廉な忠義に対し、家重の父吉宗が次のように言いました。

「はるか昔・・・、上様を汚いまいまいつぶろじゃと申しおった者がいたな」

引用:『まいまいつぶろ 』(村木嵐 著)電子書籍P239

タイトルにもなっている「まいまいつぶろ」はカタツムリのことです。

家重は生まれつきの頻尿で、長く座ったあとは袴が濡れていることがありました。

濡れた袴で歩いた跡が濡れている、それを「汚いまいまいつぶろ」とののしったのです。

そのことを家重は知りませんでした。

だが、そなたの悲しみを思うて己の胸一つにしまい込んだ、忠光のような友を得たことを幸いとせよ

引用:『まいまいつぶろ 』(村木嵐 著)電子書籍P240

これほどまでに家重の気持ちを思いやってくれる。それは「仕事」の域を超えていると思います。

それを「友」と呼ぶのですね。

もう一度生まれても、私はこの身体でよい。忠光に会えるのならば

引用:『まいまいつぶろ 』(村木嵐 著)電子書籍P296

そして家重は忠光と別れのとき、このように言いました。

すごい言葉だと思いました。

家重にとって忠光の存在がどれほどのものか現れていますね。

忠光は家重をかわいそうだから、と憐れんでいたわけではない。

本当の人となりや聡明さを知って尊敬していた。

家重も忠光を尊重し思いやりを持って接していた。

立場や障害を越えて、お互いに尊重しあっていたからこそ築けた関係だと思いました。

最後に

第170回直木賞候補となった村木嵐さんの『まいまいつぶろ』を紹介しました。

人を理解し寄り添うことの大切さを教えてくれる本です。

まだ読んでいない人は読んでみてください。

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