【感想】第171回直木賞候補『われは熊楠』岩井圭也

直木賞
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この記事では、第171回直木賞にノミネートされた岩井圭也さんの『われは熊楠』を紹介します。

この本は、主に菌類の研究者だった南方熊楠みなかたくまぐすの物語です。

南方熊楠をご存知でしょうか?

私は、名前はどこかで聞いたことあるなぁ程度の認識しかありませんでした。

南方熊楠(1867.5.18~1941.12.29)は、博物学、民俗学の分野における近代日本の先駆者的存在であり、同時に植物学、特に「隠花植物」と呼ばれていた菌類・変形菌類・地衣類・蘚苔類・藻類の日本における初期の代表的な研究者です。

引用:南方熊楠顕彰館公式サイト

このように熊楠の研究は多岐に渡っています。

というのも、熊楠の学問の目的が「己が何者かを知ること」だったからです。

己を知るためには世界を知ること、ということで、熊楠の研究の範囲も広がっていきました。

熊楠の物語を読みながら、熊楠と一緒に己が何者かを知る旅に出ているような感覚になります。

そんな『われは熊楠』を読んだ感想をまとめました。

ぜひ最後まで読んで、本選びの参考にしていただければ幸いです。

この本はこんな人におすすめ
  • 実在の人物の話が好きな人
  • 自分は何者なのかと考えたことがある人
  • 直木賞に興味がある人

『われは熊楠』について

タイトルわれは熊楠
著者岩井圭也
出版社文藝春秋
発行日2024年5月15日
ページ数318P(電子書籍)

この作品は、熊楠が幼いときから70代で亡くなるまでの物語です。

大学や研究所に属することなく、亡くなる直前まで研究を続けた熊楠の一生はとても興味深いものでした。

著者について

著者である岩井圭也さんのプロフィールです。

1987年生まれ。大阪府出身。北海道大学大学院農学院修了。2018年『永遠についての証明』で野性時代フロンティア文学賞を受賞し、デビュー。

2023年『完全なる白銀』で山本周五郎賞候補、『最後の鑑定人』で日本推理作家協会賞候補。

その他の著書に『水よ踊れ』『生者のポエトリー』『付き添うひと』『楽園の犬』『暗い引力』「横浜ネイバーズ」シリーズなど多数。

引用:岩井圭也『われは熊楠』

本作品が和歌山弁たっぷりだったので、てっきり和歌山出身の作家さんなのかと思っていました。

それから本作品は、熊楠の一生の物語ではありますが、とても客観的に書かれています。

なので、所々熊楠の考え方についていけないところがあっても、受け入れることができました。

ざきざき
ざきざき

作家さんの主観や主張を強く感じると、引いてしまうことってありますよね。

『われは熊楠』のあらすじ

熊楠は、両替商兼金物屋を営んでいる南方家の次男として生まれた。

幼いとき、隣の家からもらった『三花類葉集』という本を開いて、見たこともない草花の絵に興奮し、胸が踊る。

熊楠は時々、頭の中で数人の声が聞こえる発作に悩まされていたが、何かに没頭しているときはその声が聞こえないことに気づく。

それから『三花類葉集』を読んだり、植物や虫やカニなど自然のものを観察し収集したりすることに夢中になっていく。

見どころ

熊楠は学問によって「己は何者か」を見出すことができたのか。

そして、どのような環境で熊楠は一生もの間研究を続けることができたのか。

最初は1人で採集や論文執筆に没頭していた熊楠が結婚し、神社合祀反対運動に加わることで、変わっていったところも見どころです。

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『われは熊楠』は電子書籍でも読むことができます。私は専用リーダーで読書するようになって、目が疲れなくて楽ちんになりました。

『われは熊楠』を読んだ感想

それでは、『われは熊楠』を読んだ感想を述べていきます。

座って講義を聞くことが学問ではない

勉強する男子学生

座って講義を聞くことが好きな私にとって、それは学問ではないという熊楠の言葉に驚きました

熊楠は「学校に学問はない」と即答した。

(中略)

熊楠にとっては、自主的に続けていた植物や菌類の採集、専門書や英語論文の抜き書きこそが「学問をやる」ということであり、座して講義に耳を傾けたり、先人を師匠と奉ったりするのは時の無駄としか思えなかった。

引用:岩井圭也『われは熊楠』電子書籍P66

時間の無駄とさえ言っていますね、、、

自分で調べる代わりに人から話を聞くことことが講義なんでしょうね。

熊楠は興味のない科目も「時間の無駄」で徹底したところは、あっぱれと言いたくなりました。

人は変わる

ビフォーアフター

年齢や状況によって人間が変わり、関係も変わっていくということを思い知らされました。

例えば、熊楠と弟の常楠の関係です。

兄やんの凄さは、我が誰よりも知ってる。兄やんは天狗じゃ。天狗が人間の道理に縛られることはない

引用:岩井圭也『われは熊楠』電子書籍P46

常楠は神隠しにあったとき、熊楠に助けられたことで、熊楠を天狗と言い特別な憧れを抱くようになりました。

子どものときから熊楠を助け、大人になって実家の家業を継いでからもずーーーっと熊楠に生活費もろもろ送金し続けました。

何でそこまで?と思ってしまうほど。

熊楠が結婚してからも、です。

研究はお金にならないし、でもお金がかかるんですよね。

ところが、あることをきっかけに兄弟の関係に亀裂が生じます。

「研究に家族が邪魔になると思わないのか?」という常楠の質問に、「もう妻子のいない生活は考えられない」と答えた熊楠。

凡夫に成り下がりおって。

熊楠は、隣の常楠を見やる。こちらを見ようともしない弟の横顔には、傷心の色が濃く浮かんでいた。

引用:岩井圭也『われは熊楠』電子書籍P197

家業の経営が芳しくないときも、送金を続けて熊楠の生活と学問を支えてきた常楠。

それが、「普通の人」のようになってしまった。

常楠の気持ちが痛いほどわかりました。

それにしても熊楠は、もっと感謝の心があってもいいんじゃないかなと正直思う場面がいくつもありました。

常楠が見切るのが遅いくらいだと。

人の気持ちは変わるし、いつまでも変わらないものなんてないんだということを思い知りました。

普通の人では第一人者になれない

研究者

本作品を読んで、「普通の人」では何かの第一人者にはなれないのだと思いました。

熊楠は何度も大事なときに癇癪を起こし、暴れたり暴力を振るったりしていました。

持病の脳の病気によるものもあれば、我慢が足りなかったときも。

読みながら、えーーー!って思いました(;^_^A

取り返しのつかないことになっても、本人は心のままに動いたことなので後悔はしていない、と言います。

熊楠はいつも「心のままに」動く人で、周りの目を気にしたり、流されたりしない。

そのブレないところはすごいと思いましたし、普通の人にはできないことだと思いました。

何かを究める人というのは普通の人とは違う、普通の人では第一人者にはなれないということに納得しました。

ざきざき
ざきざき

身近にこういう人がいたら、距離を取っちゃうかもですね、、、

最後に

第171回直木賞にノミネートされた岩井圭也さんの『われは熊楠』を紹介しました。

南方熊楠という粘菌の研究で第一人者となった学者の物語です。

熊楠と一緒に「己は何者か」ということを考えてみるのはいかがでしょうか。

まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。

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