【感想】第171回直木賞候補『地雷グリコ』青崎有吾

直木賞
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この記事では、第171回直木賞にノミネートされた青崎有吾さんの『地雷グリコ』を紹介します。

この物語は、ゆるっだらっとした見た目とは裏腹に勝負にめっぽう強い女子高生が、様々なゲームに挑むお話です。

これぞまさしくザ・エンターテイメントな本だと思いました。

ルール説明の時から勝負が始まり、相手の性格を読み戦略を立てる、最後にはゲーム中の謎の行動や仕掛けがわかる。

頭も使い、心もドキドキハラハラ持っていかれます。

そんな『地雷グリコ』を読んだ感想をまとめました。

ぜひ参考にして、この本を手に取っていただければ幸いです。

この本はこんな人におすすめ
  • 気分転換や頭の体操をしたい人
  • ゲームが大好きな人
  • 直木賞に興味がある人

『地雷グリコ』について

タイトル地雷グリコ
著者青崎有吾
出版社KADOKAWA
発行日2023年11月27日
ページ数370P(電子書籍)

第171回直木賞にノミネートされています。

本作品は、「地雷グリコ」「坊主衰弱」「自由律ジャンケン」「だるまさんがかぞえた」「フォールーム・ポーカー」の5つのゲームの対戦が描かれています。

タイトルの『地雷グリコ』って何だろう、どんな話だろうと思っていましたが、ゲームの名前でした。

ざきざき
ざきざき

知っているゲームの名前と少しだけ違いますね。

著者について

著者である青崎有吾さんのプロフィールです。

1991年神奈川県生まれ。明治大学卒。在学中の2012年『体育館の殺人』で第22回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。

著作は他に、〈裏染天馬〉シリーズの『水族館の殺人』『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』『図書館の殺人』、〈アンデッドガール・マーダーファルス〉シリーズ、〈ノッキンオン・ロックドドア〉シリーズ、『早朝始発の殺風景』『11文字の檻 青崎有吾短編集成』がある。

2023年夏には「アンデッドガール・マーダーファルス」がTVアニメ化、「ノッキンオン・ロックドドア」がTVドラマ化され話題となった。

2023年11月現在「週刊ヤングジャンプ」にて連載中の『ガス灯野良犬探偵団』(漫画:松原利光)の原作も担当。

引用:『地雷グリコ (角川書店単行本)』(青崎 有吾 著)

まだ30代前半の作家さんですね。

作品にとても勢いを感じました。

作品中のゲームがどれも難しかったので、こんなゲームを思いつく著者はとてつもなく頭の切れる人なんだろうと想像しました。

『地雷グリコ』のあらすじ

頬白ほおじろ高校の文化祭である頬白祭では、その期間だけオープンになる屋上の利用権をめぐって、トーナメントで対戦が行われる。

今年の決勝戦は、今まで負け知らずで2連勝している3年1組代表で生徒会のくぬぎ先輩と、カレー屋さんを出店したい1年4組代表の射守矢真兎いもりやまとの戦い。

この戦いに勝利してから、真兎まとは一目置かれて、次々と対戦をしていくことになる。

見どころ

誰もが知っているゲームに独自ルールを追加して、難易度を上げたゲームたち。

それに真兎まとや対戦相手が、どのように戦略を立てて戦うのかが見どころになります。

『地雷グリコ』を読んだ感想

それでは、本作品を読んだ感想を、対戦ゲームごとに述べていきたいと思います。

「地雷グリコ」

神社前の階段

最初のゲームは、真兎と椚先輩との戦いで、ゲーム名は「地雷グリコ」

「グリコ」を覚えていますか?

グーで勝つと、グ・リ・コで3段上がれる
パーで勝つと、パ・イ・ナ・ツ・プ・ルで6段上がれる
チョキで勝つと、チ・ヨ・コ・レ・イ・トで6段上がれる

懐かしいですよね。

これに地雷を設置できるという特別ルールを追加したものが「地雷グリコ」

屋上の利用権を取るための真剣勝負。

2人とも本気です。

私だったらすぐ負けるだろうなと思いました。

地雷を設置することで、単純にジャンケンの強さでは勝てないからです。

相手の性格を把握し、先の先まで読んで地雷を置く。

そして地雷は、相手の行動を誘導する「言葉」であったりする。

その頭脳戦に、すごい、すごすぎる!と思いました。

「坊主衰弱」

百人一首

次の対戦は、かるたカフェのマスターと真兎の戦いです。

ゲーム名は「坊主衰弱」

百人一首を使った神経衰弱に特別ルールボーナスとペナルティを追加したもの

このかるたカフェは、かるた部の人たちが練習場として使用していましたが、マスターと口論になり出禁になってしまいました。

この勝負でかけるのは、持ち札10枚につき1人の出禁解除。

真兎は100-0で勝つ!と宣言。

果たして、、、、

このマスター、イカサマ野郎でした。

最初から見抜いていた真兎の観察力と記憶力が素晴らしかったです。

そうでないと勝てる戦略なんて立てられないんですよね。

でも出禁が解除されたとして、意固地で性悪のマスターの店に行きたくはないな、と思ってしまいました。

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『地雷グリコ』は電子書籍でも読むことができます。電子書籍で読むなら、専用リーダーがあると目が疲れなくて楽ちんですよ。

「自由律ジャンケン」

ジャンケン

次の対戦は、生徒会長の佐分利と真兎の戦い

ゲームは、グー・チョキ・パー+それぞれの独自手を加えた5種で行う「自由律ジャンケン」

独自手には特殊効果をつけられますが、相手は効果がわからないので、対戦で推測していくことになります。

会長が勝てば、真兎は生徒会に。真兎が勝てば、絵空とゲームをやらせてあげる、というもの。

絵空は真兎と中学生の時仲良しだったけど、何かがあって疎遠になったらしい、、、

ゲームに勝つためには、小道具を使うことも必要みたいです。

使うタイミングも重要。

そしてまさかの、先出しも。後出しならわかりますけど、なぜ先出し?

読んでいる方も頭をフル回転させられます(;^_^A

まずルールを理解するところから、対戦が始まったらこっちがこうだからこっちが勝ち?

この手の効果は?などなど。

射守矢真兎はキレ者だ。行動には常に裏があると考えるべきだ。

たとえばさっきの〝かけ声〟。無邪気を装った、このゲームのある側面を突いた質問だった。

愚鈍なふりして戦略を練り、油断を誘い、死角から刺す。こいつはそうやって人に勝つ。

引用:『地雷グリコ (角川書店単行本)』(青崎 有吾 著)電子書籍P131

会長による真兎の分析です。

相手の性格を読むことも、勝つためには必須なんですね。

そしてこの話の最後に出てきた、絵空が通うエリート校である星越高校。

学校上げてのギャンブルをしているとか。

ここまでくると話が大きくなりすぎて、正直引いてしまいましたが、真兎と絵空に何があったのかを知りたいので、次に読み進めました。

「だるまさんがかぞえた」

だるまさんがころんだ

次の対戦は、星越高校生徒会の巣藤と真兎の戦い

ゲームは、「だるまさんがころんだ」に独自ルールを追加した「だるまさんがかぞえた」

通常掛け声は「だ・る・ま・さ・ん・が・こ・ろ・ん・だ」の10文字ですが、掛け声の文字数と移動歩数をそれぞれ入札するというもの。

相手がどんな戦略で来るのかの洞察力が必要です。

かけるのは、星越高校で出回っているSチップ(1枚10万円で換金)300枚。星越高校は頬白高校が持っているSチップ3枚の回収。

ここで初めてお金をかけた戦いになりましたね。

星越高校の巣藤は、真兎の見た目と不利な選択をしたことから、簡単に勝てると思い込んでしまいました。

「わーい、あてちゃったぁ。ピタリ賞だ」

現実の勝負は、盲点を突いた者が勝つ。 敵の頭に、思い込みをすり込んだ者が勝つ。

たとえば、0は入札できないという思い込み。ルールはフェアだという思い込み。そして── 「賭け金、十倍ですね」 敵が弱い、という思い込み。

引用:『地雷グリコ (角川書店単行本)』(青崎 有吾 著)電子書籍P217

真兎の油断させること、洞察力、度肝を抜いた戦略、どれもが素晴らしかったです。

その場にいた、そうそうたるメンバー全員を驚かせましたから。

「フォールーム・ポーカー」

トランプ

最後の対戦は、絵空と真兎

ゲームは、ポーカーをアレンジして独自のルールを追加した「フォールーム・ポーカー」

手札は3枚。手札の交換はクラブ・ダイヤ・ハート・スペードのそれぞれの部屋に行って取る。

どの部屋に入ったかは、相手から見える。

論理と推察力の勝負。

かけるのは、お互いにSチップ

真兎は、勝ったあかつきには、絵空にしてもらいたいことがあります。

そのために絵空と勝負を挑む。

このゲームの考案者が言っていたように、難しすぎるゲームだと思いました。

こんな勝負は私にはできないし、したいとも思わない。

なぜなら、勝てないから。

でもゲームの結果に私は満足しましたし、すべてがスッキリとして爽快な物語でした。

それから、この話でグッと来た言葉がありましたので紹介します。

この世で一番大切なものは何か、と聞かれたときの絵空の答えです。

結局人間のやることって、全部ゆとりを得るための行為なんだと思う。

体を鍛えるのも、何か学ぶのも、戦争するのも、お金を貯めるのも

引用:『地雷グリコ (角川書店単行本)』(青崎 有吾 著)電子書籍P250

一番大切なのは「ゆとり」と言った絵空。

なるほどなぁと思いました。

ゆとりがなく急いでやると、ろくなことになりません。仕事にしても決断にしても。

そして何より、ゆとりがないと心も体も壊れますよね。

個人にとっても、会社にとっても、国にとっても、小さいところから大きいところまで、ゆとりって大事なんだと思いました。

最後に

第171回直木賞にノミネートされた『地雷グリコ』を紹介しました。

私のように日頃ゲームをやらない人でも存分に楽しめる、ザ・エンターテイメント小説となっています。

頭の体操や気分転換にもってこいです。

まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。

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