この記事では、2024年本屋大賞に輝いた宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』を紹介します。
その時々で、読みたい本は変わってきますよね。
この作品は、読後にスッキリ爽快な気分になりたいときにおすすめです。
「成瀬あかり」というちょっと変わった女の子の物語は、自分の中学・高校の青春時代を思い出させ、元気を与えてくれます。
そして、次々といろんなことにチャレンジする成瀬の生き様はとても刺激的です。
そんな『成瀬は天下を取りにいく』を読んだ感想をまとめました。名言も紹介します。
興味を持って下さった方は、ぜひ最後まで読んでください。
『成瀬は天下を取りにいく』について
タイトル | 成瀬は天下を取りにいく |
著者 | 宮島未奈 |
出版社 | 新潮社 |
発行日 | 2023年3月17日 |
ページ数 | 193P |
この本は、次の6編が収録されている短編集です。
- 「ありがとう西武大津店」
- 「膳所から来ました」
- 「階段は走らない」
- 「線がつながる」
- 「レッツゴーミシガン」
- 「ときめき江州音頭」
ページ数も多くはないので、サクッとサラッと読むことができます。
まとまった読書時間が取れない人にもおすすめですよ。
著者について
著者である宮島未奈さんのプロフィールです。
1983年静岡県富士市生まれ。滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒。2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。
2023年同作を含む『成瀬は天下を取りにいく』でデビュー、10万部を突破し話題になる。
『成瀬は信じた道をいく』はその続編にあたる。
引用:新潮社公式サイト
本作品がデビュー作なんですね。
デビュー作でいきなり本屋大賞受賞なんて、すごい作家さんが現れました。
見どころ
私が考えるこの作品の見どころは次の通りです。
1編読み終わるたびに、次は成瀬は何をすると言いだすのだろうとワクワクさせてくれます。
成瀬が影響を与えるのは、本の中だけではありません。
読み手の私も影響を受け、元気が出て、何かしたい、何ができるかな、と考えました。
『成瀬は天下を取りにいく』を読んだ感想
この作品は、何でも人よりできるけど、でき過ぎるために周りから浮いてしまっている「成瀬あかり」の物語。
滋賀県大津市の膳所周辺が舞台となっているローカルなお話です。
それでは、この本を読んだ感想を各編ごとに述べていきたいと思います。
「ありがとう西武大津店」
西武大津店が閉店するまで残り1ヶ月となった。
ローカルテレビ番組「ぐるりんワイド」では、毎日西武大津店から中継があるという。
そこで成瀬は、この1ヶ月を西武に捧げると宣言する。
コロナで行事ごとがことごとく中止になる中で、自分なりの思い出作りを考えて実行するのがかっこいいと思いました。
ライオンズのユニフォームを着て、明らかにテレビに映るためにいる、ぱっと見は不審者。
テレビの撮影班も目を合わせない。
でも毎日毎日通ってテレビに映っているうちに、Twitterでつぶやかれたり、帽子やタオルをくれる人が出てきます。
それでも何人かは西武大津店の閉店時の思い出として、成瀬を覚えていてくれるだろう。
西武グッズをくれた人たち、絵を描いてくれた子ども、ツイートしてくれたアカウント、取材してくれた新聞記者、ぐるりんワイドの視聴者、すべてが成瀬あかり史の貴重な証人だ。
引用:宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』電子書籍P34
誰かの思い出になるってなんて素敵なことでしょうね。
そのつもりでなくても周りを巻き込んでいく積極性。
自粛だからとただ大人しくするのではなく、マイナスをマイナスで終わらせない姿勢。
その通りにはできないけど、少しでも見習えればいいなと思いました。
「膳所ぜぜから来ました」
西武大津店閉店から数日後。
成瀬はM-1グランプリに挑戦することにしたので、一緒に出て欲しいと島崎に告げる。
島崎みゆきは赤ちゃんの時に知り合ってから、ずっとご近所さんで一番仲が良く、成瀬の理解者です。
西武大津店が閉店してしょんぼりしてるのかと思いきや、もう別の目標ができている。
あっぱれ!ですね。
最初は乗り気でない島崎でしたが、、、
目をそらす成瀬を見て、わたしは確信した。
成瀬はわたしに期待していない。相方というよりも、腹話術師にとっての人形、手品師にとってのハト、もう中学生にとってのダンボールみたいな存在だ。
引用:宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』電子書籍P65
期待されていないなんて悲しいですね。
そこから島崎の「相方」としてのプライドに火がつきました。
結果はどうでも、M-1に出たことあるなんて一生自慢できる思い出になりますよね。
成瀬は思い出作りの名人だな、と思いました。
「階段は走らない」
「ありがとう西武大津店」で、ライオンズ女子(成瀬)についてTwitterに投稿した敬太と同級生のマサルの物語。
西武の閉店と小学校卒業30周年が重なるため、敬太とマサルたちは同窓会をやろうと企画した。
ところがコロナのためにやむなく同窓会は延期することに。
時間ができたため、ケンカして気まずいまま転校していったタクローを探すことにした。
西武大津店閉店のニュースを見て、久しぶりに西武に行ったら、次々と同級生に会う。
地元あるあるですよね。
同窓会が延期になったこと、連絡先のわからないタクローに見つけてもらうことがあり、敬太が同窓会のホームページを作りました。
すると、どんどんメッセージが集まってきてWeb同窓会のように。
今の時代っぽいですね。
コロナ以降のここ数年で時代が進んだ気がします。
おばちゃんはついていくのに必死です(;^_^A
「線がつながる」
成瀬と同じ高校で同じクラスとなった大貫かえでの物語です。
かえではクラスの人間関係を観察して、つながりを線でつないで相関図を描くのが趣味。
かえでは、前の席の悠子と一緒に部活動(班)を見学することに。
悠子が希望する“かるた班“を見に行くと、そこには先輩と対戦している成瀬がいた。
かえではいじめられて自殺した中学生のニュースを見てから、いじめをひどく怖がるようになります。
クラスメイトの力関係を見極めて、一人にならないように、いじめられないように立ち回る。
引用:宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』電子書籍P116
目立たないように出過ぎないように学校生活を送っているかえでにとって、成瀬は最もお近づきになりたくない人ですね。
避け方があまりにも露骨です。
そして、そのような生き方では、なかなか腹を割って話す友達はできないだろうと想像します。
クラスの人間関係を観察するあまり、細い線でつながっていた悠子をないがしろにして捨てられそうになる。
はっきりと告げる悠子はすごいと思いました。
嫌われたくない、傷つけたくないという思いから、いやだなと思いながらもズルズルと関係を続けてしまうことがあります。
大人になると、逆に何も言わずに去ったり。
はっきりと言って、いったん離れたことにより、以前よりも仲良くなりました。
嫌われたくないと黙っているより、はっきりと言う方が好かれるんですよね。
わたしにもあった甘いだけじゃない青春を思い出しました。
「レッツゴーミシガン」
全国高校かるた選手権に出場するため滋賀県にやってきた西浦は、対戦中の成瀬の動きに目を奪われる。
友達と一緒に思い切って声をかけてみると、試合の日程終了後に会うことになり、ミシガンクルーズに招待された。
成瀬に恋心を抱く男子が現れます。
広島からやってきた西浦です。
西浦に成瀬が言った言葉が、私には名言となりました。
「わたしが思うに、これまで二百歳まで生きた人がいないのは、ほとんどの人が二百歳まで生きようと思っていないからだと思うんだ。
二百歳まで生きようと思う人が増えれば、そのうち一人ぐらいは二百歳まで生きるかもしれない」
引用:宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』電子書籍P116
小学校の卒業文集に将来の夢として「200歳まで生きる」と書いた成瀬。
そのために日頃からサバイバル知識を蓄えている。
これを変な人と思う人もいれば、すごいと思う人もいる。
西浦と同じく私もすごいと思いました。
人に理解してもらおうとしないところも。
もしかしたらほんとに200歳まで生きちゃうかもしれないと思えてしまうところも。
マイペースに目標に向かって生きている成瀬はほんとにかっこいいです。
「ときめき江州音頭」
成瀬は高校3年生に。
成瀬と島崎は地元の「ときめき夏祭り」の司会を依頼され、実行委員を務めることになった。
そんなある日、島崎から高校卒業のタイミングで東京に引っ越すと打ち明けられる。
島崎が引っ越すと聞いただけでこれほどの不調である。
今まで当たり前のようにこなしてきたルーティーンが、いかに危ういバランスの上に成り立っていたかを知った。
引用:宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』電子書籍P173
成瀬は鉄の女ではありませんでした。
これまでの何があっても動じない成瀬の言動から、友達が去っても「そうか」で済ませられる人かと思っていました。
赤ちゃんの時からずっとご近所さんで一番の友達が遠くに行ってしまう。
動揺してルーティンをこなせなくなった成瀬に親近感がわきました。
最後に
2024年本屋大賞に輝いた『成瀬は天下を取りにいく』を紹介しました。
成瀬の生き様から、自分も何かに挑戦したくなる物語です。
まだ読んでいない人は、ぜひ読んでみてください。
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2024年本屋大賞作品をまとめた記事があります。ぜひご覧ください。