この記事では、第167回直木賞受賞作品で窪美澄さんの『夜に星を放つ』を紹介します。
この本は、5編が収録されている短編集です。
「コロナ」や「マスク」が出てくる現代の物語。
そして、タイトルにもあるように「星」が出てきます。
読み終わった後に夜空を見上げたくなるような気持ちになる、サラッとサクッと読める物語です。
『夜に星を放つ』の感想をまとめましたので、ぜひ最後まで読んで、本選びの参考にしていただけたら嬉しいです。
『夜に星を放つ』について
タイトル | 夜に星を放つ |
著者 | 窪美澄 |
出版社 | 文芸春秋 |
発行日 | 2022年5月24日 |
ページ数 | 193P |
「真夜中のアボカド」「銀紙色のアンタレス」「真珠星スピカ」「湿りの海」「星の随(まにま)に」の5編が収録されています。
ページ数も少ないので、まとまった読書時間は取れないけど、直木賞受賞作品が読みたい人にもおすすめです。
著者について
著者である窪美澄さんのプロフィールです。
- 1965年東京都生まれ。
- 2009年「ミクマリ」で女による女のためのR‐18文学賞大賞を受賞。受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれる。
- また同年、同書で山本周五郎賞を受賞。
- 2012年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞。
- 2019年『トリニティ』で織田作之助賞を受賞。
- その他に『さよなら、ニルヴァーナ』『よるのふくらみ』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『私は女になりたい』『朔が満ちる』など著書多数。
他の作品は読んだことがありませんが、この作品が軽すぎず重すぎずな本だったので、そのような本を読みたいときに選びたくなる著者なのかなと思いました。
『夜に星を放つ』を読んでみた感想
それでは『夜に星を放つ』のあらすじと感想を、各編ごとに述べていきます。
「真夜中のアボカド」
コロナ、リモートワーク、などここ数年で聞いた言葉ですよね。
コロナでリモートワークとなり会社の人ともほとんど会わなくなって、仕事がやりづらい。
せっかくアプリで出会った麻生さんとも思うように会えない。
会えるようになっても麻生さんとの仲は、なかなか進展しない。
うまくいかないことを何もかもコロナのせいにできればいいけど、そうはいきません。
コロナのせいにしたところで何も解決しないんですよね。
綾は村瀬くんに頼ってしまって、村瀬くんの家に押しかけてしまいました。
でもそのまま村瀬くんと一緒になった、という話にならなくて良かったと思いました。
弓と綾は顔が似ていても中身は違う人間です。
そんなこと考えなくていいの。綾は綾の人生を生きなさい。
どんな生き方をしてもお母さんはいつも綾の人生を応援するよ。
引用:窪美澄『夜に星を放つ』電子書籍P38
綾がお母さんに「弓の分まで生きる。結婚して子どもも産む」と言ったときのお母さんの言葉です。
どの人もかけがえのない人間です。
どんなにつらくても何とか生きていかないといけないんだと思いました。
綾と麻生さんが、マスクしたままキスをしたことが衝撃でした。
これが普通だったのでしょうか。
「銀紙色のアンタレス」
高校生の真(まこと)のひと夏の思い出の物語。
大人になる少し前に、このような経験があった人も多いのではないでしょうか。
大人の女性に憧れたり、告白されたり、告白したり、おばあちゃんが入院したり。
真が少し大人に近づいた夏の話でした。
「真珠星スピカ」
お母さんはみちるが心配で、みちるを守るために現れるようになったのでしょうか。
私は霊を見た経験はありませんが、こういうことはあるのかもと思っています。
見えるものが全てではないと。
それからコックリさん。
流行りましたよね。
手が勝手に動くのが不思議で、ハマったことがありました。
今は怖くてとてもできませんけど。
大人になると臆病になって、できなくなったことがたくさんあります。
母さんのことが大好きです。今も大好きです。あなたがいなくなって僕は悲しい。本当に悲しい。
引用:窪美澄『夜に星を放つ』電子書籍P115
みちるのお父さんの言葉です。
お母さんがいなくなって、みちるもお父さんもこんなに悲しがっている。
お母さんは素敵な人だったんだろうなと思いました。
「湿りの海」
沢渡さんが2度振られた話でした。
シングルマザーとのくだりは、弱みにつけこんでいるわけではないんでしょうけど、読んでいて気分のいいものではありませんでした。
そうは言っても、人はひとりでは生きていけませんね。
誰かとともに生活した経験があったらなおさらです。
沢渡さんのような感じで、シングルマザーと一緒になる人は多いんだろうなと思いました。
「星の随(まにま)に」
お父さんが、新しい家庭を守るために、必要以上に新しいお母さんの肩を持つような人でなくて良かった、と思いました。
想のこともちゃんと大事にしてくれています。
どんなにつらくても途中で生きることをあきらめては駄目よ。
つらい思いをするのはいつも子どもだけれどね。それでも、生きていれば、きっといいことがある。
引用:窪美澄『夜に星を放つ』電子書籍P184
想が家に入れないときに助けてくれた、近所に住む佐喜子さんの言葉です。
佐喜子さんの言うように、大人の都合で傷つくのは、大変な思いをするのは、子どもですね。
子どもはやさしいし、空気を読むし、気を遣います。
想くんには幸せになって欲しいと思いました。
最後に
第167回直木賞受賞作品『夜に星を放つ』について紹介しました。
さらっとサクッと読める短編集です。
さまざまな5人の人生をちょっとのぞいてみませんか?
まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。
同じく第167回直木賞の候補作となった作品に『絞め殺しの樹』があります。
こちらは『夜に星を放つ』と違って重い作品ですが、興味のある人はぜひ読んでみてください。