【感想】2024本屋大賞 超発掘本『プラスティック』

本屋大賞
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この記事では、2024年本屋大賞 発掘部門の超発掘本に選ばれた井上夢人さんの『プラスティック』を紹介します。

超発掘本に選ばれるだけあって、なかなか読み応えのある本でした。

冒頭から物語の世界に引き込まれ一気読みです。

事件の真相がわかってホッとしたのもつかの間、ところで自分という人格を形成しているものって何だろうと答えの出ない迷宮に連れていかれます。

そんな本作品を読んだ感想をまとめました。

この本が気になっている人はぜひ最後まで読んで、本選びの参考にしていただければ幸いです。

この本はこんな人におすすめ
  • 本屋大賞や超発掘本に興味がある人
  • ミステリー小説が好きな人
  • 一昔前の小説を楽しみたい人

『プラスティック』について

タイトルプラスティック
著者井上夢人
出版社講談社
発行日2004年9月14日(1994年5月に双葉社で刊行、2001年2月に講談社ノベルスに収録)
ページ数400P

30年前に発行された本です。

この物語のキーワードになっている「フロッピーディスク」が若い人にはわからないかもしれませんね。

ただ物語の衝撃度は、今の時代にも十分通用するものだと私は思います。

著者について

著者である井上夢人さんのプロフィールです。

1950年生まれ。1982年、徳山諄一との共作筆名・岡嶋二人として『焦茶色のバステル』で第28回江戸川乱歩賞を受賞。1986年、日本推理作家協会賞、1989年、吉川英治文学新人賞受賞後、同年、『クラインの壺』刊行と同時にコンビを解消する。

1992年、『ダレカガナカニイル…』でソロとして再デビュー。

以降、『メドゥサ、鏡をごらん』『オルファクトグラム』、オンライン・ノベル『99人の最終電車』などジャンルの枠にとらわれない意欲作を発表し続けて活躍中。

引用:『プラスティック』井上夢人(著)

共作されていて、いろんな文学賞を受賞されていますね。

本作品がとっても頭の体操になったというか、脳トレになったというか。

本の可能性を無限に引き出せる作家さんなのではないかと思いました。

『プラスティック』のあらすじ

向井洵子は、夫裕介の出張の間にワープロの練習がてら日記をつけていたが、そこには奇妙な出来事が記載されていた。

日記は裕介の出張最終日で途切れ、その6日後に洵子の死体が発見され、裕介が行方不明になる。

顔が切り刻まれた死体は本当に洵子なのか。夫裕介は犯人なのか。

警察やマンションの住民など、関わった人たちの日記形式で進行し、1つの真実へと導かれていく。

見どころ

54個のファイルが入っているフロッピーディスク。

そのファイルを読者に読ませる形で物語が進んでいきます。

読んでいくうちにどんどん謎が深まり、ある推論へと行きつき、真実が判明するところが見どころとなります。

読者をこれでもかと振り回す物語です。

振り回されたい人はぜひ読んでみてください。

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『プラスティック』を読んだ感想

それでは本作品を読んでみた感想を述べていきますね。

30年前を懐かしく思いました

黒電話

一昔前を懐かしく思いました。

ワープロ、フロッピーディスク、使っていたなぁ。

そして携帯電話が登場しない。電話は固定電話だけでしたね。

「それってDNA鑑定すれば~」と言いたくなる場面もあったり。

また、結婚して退職するのが普通だったり。

「十年一昔」と言いますが、もう「三昔」経っているんですね。

そんなに生きてきたんだなと感慨深くなりました。

目に見えたことだけで判断してはいけません

急須と茶筒

見えていることだけで判断すると、物語の真相はわからないし、理解もできないと思いました。

ハッとさせられた言葉が出てきましたので、紹介しますね。

ものごとは、けっして目に見えたものだけで判断してはならない。それが丸く見えたからといって、球だと思い込むのは危険なのだ。

茶筒だって、真上から見れば丸く見えるものなのだから。

引用:『プラスティック』井上夢人(著)P153

長く生きていればいるほど、今までの経験から、見えたものだけで判断してしてしまうことってありますよね。

茶筒の例が出ていますが、横からも見てみないとわからない。

人に対してもそうですね。

チャラそうに見える人が、案外まじめだったりすることあります。

見たものを一瞬で判断してしまうのは、脳の働きによるものと習ったことがありました。

脳の負担を減らすためと、危険回避のため。

ですが、大事な場面では本当にそうだろうかと、立ち止まることが大事だと思いました。

事件の真相について ※ネタバレ注意

ここからは、事件の真相がわかっての感想を述べます。

まだ読んでいない人は、ご注意ください。

ネタバレ注意

読み終わって最初に思ったのが、こんな完璧な多重人格ってあるのだろうか、でした。

そして、登場人物すべてが1人の中に住む別人格。

結局は「1人の人の物語」という結末に正直ガクッときました。

多重人格は、今は解離性同一性障害と呼ぶみたいですね。

この病気になってしまった背景がとても悲しい話でした。

母親からの虐待、母親の3番目の夫からの性的虐待からの逃避。自分を守るため。

子どもだから他に行くところがない。

だから自分の人格は隠れて、違う人格を表に出した。

親に苦しめられる子どもの話が出てくる小説はたくさんあります。

それだけ、苦しんでいる・苦しんできた人が多いということなのでしょうね。

親が子をいじめるくらいなので、学校のいじめも、大人同士の戦争もなくなるわけないと思ってしまいました。

最後に

2024年本屋大賞 発掘部門の超発掘本に選ばれた井上夢人さんの『プラスチック』を紹介しました。

真相が予想できてからも読むのをやめられない、とても不思議な魅力のある物語です。

まだ読んでいない人は、ぜひ読んでみてください。

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