この記事では、2023年本屋大賞第3位を獲得し、第168回直木賞の候補にもなった一穂ミチさんの『光のとこにいてね』を紹介します。
「友達」というありふれた言葉では表せない、深い絆で結ばれた2人の女の子の物語です。
近い言葉で言えば「ソールメイト」でしょうか。
そんなかけがえのない関係の2人が、小学生から大人になるまでを見届けることができます。
この本を読んだ感想とグッときた言葉をまとめました。
ぜひ最後まで読んで、本選びの参考にしていただければ幸いです。
『光のとこにいてね』について
タイトル | 光のとこにいてね |
著者 | 一穂ミチ |
出版社 | 文藝春秋 |
発行日 | 2022年11月7日 |
ページ数 | 424P(電子書籍) |
424Pとまぁまぁのページ数ですよね。
ですが、2人がどうなっていくのか気になって気になって、、、あっという間に読んでしまいました。
本の構成は、次のとおりです。
- 第1章 羽のところ(2人が出会う7歳のときの話)
- 第2章 雨のところ(高校生になった15歳のときの話)
- 第3章 光のところ(大人になって30歳になったときの話)
重いってほどではないですが、しんどい話が続きますので、割と元気なときに読むのがいいと思います。
それなのに、ラストはクスっと笑って終わりました。
著者について
著者である一穂ミチさんのプロフィールです。
2007年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。劇場版アニメ化もされ話題となった『イエスかノーか半分か』などボーイズラブ小説を中心に作品を発表して読者の絶大な支持を集める。
2021年に刊行した、初の単行本一般文芸作品『スモールワールズ』が本屋大賞第3位、吉川英治文学新人賞を受賞したほか、直木賞、山田風太郎賞の候補になるなど大きな話題に。
主な著書に『ふったらどしゃぶり When it rains, it pours』、「新聞社」シリーズ、『パラソルでパラシュート』『砂嵐に星屑』(山本周五郎賞候補)など多数。
引用:一穂ミチ『光のとこにいてね』
私は読んだことはないのですが、ボーイズラブ小説を発表されているんですね。
本作品も読む人によっては「ガールズラブ」ととらえられなくもない、ギリギリのところだと思いました。
でも私には、恋愛や友情よりもっと尊いものを感じました。
『光のとこにいてね』のあらすじ
小2の結珠はママに連れていかれた団地で、同い年の変わった少女果遠に出会う。
毎週水曜日の夕方、ママを待っている間に一緒に遊ぶようになり、秘密を共有する友達となった。
しかし、突然の別れが。
それから会うこともなかった2人が、高校の入学式で再会する。
見どころ
環境も性格も全く違うのに、お互いを必要として唯一無二の存在である結珠と果遠。
小学生の特別だけど無邪気だった2人の関係が、成長するにつれ変わっていくところと変わらないところが見どころとなります。
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『光のとこにいてね』を読んだ感想
それでは、本作品を読んだ感想を述べていきたいと思います。
2人の共通点に悲しい気持ちになった
結珠と果遠は、育った環境も性格も真逆と言っていいほどなのに、似ている点が悲しいと思いました。
おなじみの、「嫌い」。
私と果遠ちゃんは全然違って、よく似ていた。
意味がわかるルールもわからないルールも、とにかくママが決めたことを守らなきゃいけなくて、ママの好きなものじゃなくて嫌いなものにばかり詳しいところ。
引用:一穂ミチ『光のとこにいてね』電子書籍P40
結珠のママはいつもうっすら冷たい。
ママとしての義務は果たしている。けれども心がない。結珠のことを好きではない。
怒鳴りつけたり、暴力をふるうわけでもない、でも確実に傷つける方法ってあるんですね。
一方果遠のママは、優先順位が自分が一番の人。
自然食品にハマり、添加物や肉や魚はダメ、塩と酢で体や髪を洗う。
給食も食べさせてもらえず、雑穀米のおにぎりを持たされる。
そんな風だから果遠は、団地の子どもたちに仲間外れにされていて、友達がいない。
果遠のママの自然派は偽物で、男の影響なんですけどね、、、
どんな母親でも、子どもは一生懸命ママのことを見ている。
ママの嫌いなことはしないように、そればかりになっている2人のことをとても悲しく切なく思いました。
生きていくのに必要なのは夫とは限らない
女性にとって、生きていくのに必要な存在は、夫とは限らないんだなと思いました。
例えどんなに素晴らしい夫でも。
結珠の夫も果遠の夫もとてもやさしく、妻を大事にし寄り添い尽くしてくれる人です。
現実にはそんな夫いないよ、、、と言いたくなるほど。
でも、2人の心の穴は夫では埋まりきらない。
それを夫もわかっているのが、何とも言えない気持ちになりました。
「私なんか」って言わないで、と悲しかった。
わたしがどんなに結珠ちゃんを支えにして、希望にして、結珠ちゃんに会いたかったか。
引用:一穂ミチ『光のとこにいてね』電子書籍P106
果遠にとっての結珠は、支えであり希望である。
果遠ちゃんが笑う。何もいらないんだ、と私は思った。
お菓子もココアも居心地のいいお店も。
一緒にさえいられれば、他には何も。
引用:一穂ミチ『光のとこにいてね』電子書籍P289
結珠にとっては、果遠がいれば他には何もいらないという存在。
でも、、、
そのようなかけがえのない存在になったのは、一緒にいたいのに一緒にいられる幸せな時間は短かったからだと私は思いました。
男女の間でも、たまに会う恋人のときは上手くいっていたのに、結婚して一緒に生活するようになってダメになることありますよね。
しかも別れは突然だったので、より強烈な思い出となったのだと思います。
思い出補正もあるでしょうし。
それでも、夫には言えないことを共有できる、誰よりも自分のことが好きで理解してくれる人がいることは、これ以上ない支えになりますよね。
私にはそんな存在がいないので、羨ましくなりました。
グッときた言葉
ここからは、作品中に出てきたグッときた言葉を紹介していきますね。
馬鹿になってないと駄目なの。
だって怖いと思っちゃったら動けなくなるかもしれないでしょ、そっちのほうがよっぽど怖い。
だから、自分に力がないとか誰も助けてくれないとか、考えないようにしてる。
引用:一穂ミチ『光のとこにいてね』電子書籍P130
果遠の言葉です。
いろいろと考えだしたら怖くなって動けなくなりますよね。
私は、石橋はまったくたたかないタイプなので、これでいいんだと謎の自信につながりました。
「お前はあの母親を見捨てらんねえからだよ」 チサさんは静かに言った。
「お前は強くてやさしいから、弱い母ちゃんを捨てられない。捨てるのはいっつも弱いほうなんだ」
引用:一穂ミチ『光のとこにいてね』電子書籍P163
ダメな親のせいで強くなるしかなかった子どもは、親を捨てることはできない。
それにしても、親によって子どもの進路が阻まれる物語が多いですよね。
それだけ現実でも起きているのでしょうね。
せめて子どもには迷惑かけないで!と思ってしまいます。
社会に出てみたらわかる、結婚したらわかる、人の親になったらわかる……そういう予言じみた言い回しは卑怯だし、親が子に使うのは呪いに近いと思う。
子どもはいつか親の人生をなぞるミニチュアだとでも言いたいのか。
引用:一穂ミチ『光のとこにいてね』電子書籍P363
ここを読んだとき、うんうんと大きくうなずきました。そのとおり!と。
これに似たようなことを母親に言われたことがあります。
「子どもを産めばわかるよ」と。
働くのが嫌だから娘にお金を無心する気持ちを、子どもを産んだらわかるようになると?
わかるわけないですよね。わかりたくもない。
残念ながら子どもができなかったので、確認のしようがありませんでした。
でもきっと親になったら、なおさらそんな気持ちはわからなかっただろうと想像しています。
最後に
2023年本屋大賞第3位を獲得し、第168回直木賞の候補にもなった一穂ミチさんの『光のとこにいてね』を紹介しました。
小学生の2人の出会いから成長を見守り、2人の未来は読者に委ねられている物語です。
まだ読んでいない人は、ぜひ読んでみてください。
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本作品のように「名前のない関係」を描いた本に『流浪の月』があります。
ぜひ合わせてご覧ください。
一穂ミチさんの作品は『スモールワールズ』もおすすめです。
ぜひ合わせてご覧ください。