この記事では、第167回(2022年)直木賞候補となった『絞め殺しの樹』(著:川﨑秋子)を紹介します。
幼くして他家に売られ、見下され使われるだけ使われながら成長したミサエとその息子雄介の物語です。
とても重く暗い話で、最後には希望があるはずと思って読まないと先に進むことができません。
そんな『絞め殺しの樹』を読んでみた感想や口コミをまとめてみました。
この本はメンタルの調子がいいときに、じっくりと読むことをおすすめします。
『絞め殺しの樹』という本について
タイトル | 絞め殺しの樹 |
著者 | 川﨑秋子 |
出版社 | 小学館 |
発行日 | 2021年12月1日 |
なかなかインパクトのあるタイトルですね。
この本は第167回直木賞にノミネートされました。
第一部はミサエ、第二部はミサエの息子雄介が主人公の話で2部構成になっています。
著者について
著者である川﨑秋子さんのプロフィールです。
- 北海道別海町生まれ。北海学園大学経済学部卒。酪農従業員をしながら緬羊を飼育・出荷するかたわらで小説を書き、2014年に「颶風の王」で三浦綾子文学賞を受賞。これが単行本化されデビュー
- 2011年 第45回北海道新聞文学賞[創作・評論部門/佳作]「北夷風人」
- 2012年 第46回北海道新聞文学賞[創作・評論部門]「東陬遺事」
- 2014年 三浦綾子文学賞「颶風の王」
- 2015年 第29回JRA賞馬事文化賞『颶風の王』
- 2018年 第21回大藪春彦賞『肉弾』
- 2020年 第39回新田次郎文学賞『土に贖う』
数々の受賞歴がある作家さんです。
酪農のご経験が本作品に生かされているんですね。
『絞め殺しの樹』のあらすじ
第一部のあらすじ
10歳で屯田兵の吉岡家に売られて、根室に戻ってたミサエ。
吉岡家では人間扱いされず使えるだけこき使われる。
吉岡家に出入りしていた薬屋に救い出されるも、結婚後にまた苦難が待っていた。
第二部のあらすじ
雄介はミサエの子だが、生まれてすぐに後継ぎのいない吉岡家に養子に出されて、吉岡家の子供として育った。
高校生の時、実母の死や祖父の死などから、実母と幼くして亡くなった姉について知っていくことになる。
見どころ
人を見下し、罵ることしかしない吉岡家の人々。
屯田兵とそうでない農家での上下関係や、狭い世間の中で生きる人々による人間関係。
人間と田舎のマイナス面がこれでもかというくらい描かれているところが見どころです。
私の読後感から、こんな見どころの紹介となってしまいました。
人はどのような環境でも自分の力で幸せになれるのかを試されている気分になります。
『絞め殺しの樹』を読んだ感想
これからこの本を読んだ感想を述べていきます。
ネタバレを含みますので、まだ読んでいない人はご注意ください。
ミサエの人生に救いはあったか
私はミサエの人生に救いがなかったように思いました。
優しくしてくれた人はいましたし、瞬間瞬間では幸せに感じた時もあったでしょう。
でも人生として考えたとき、幼い娘の死から生きる希望をなくし、ただ生きているという日々に救いが感じれらませんでした。
それにしても登場人物の中で一番強烈だった小山田俊之。
話が通じない人。自分の倫理が絶対正しく、それから外れたものは徹底的に排除、攻撃する人。
こういう人いますよね。
こんな人に追い詰められたら大人だってキツイです。
こういう人の標的になったら、どうやって対処し自分を守ればいいのか教えてもらいたいと思いました。
雄介の生きる意味はそれでいいのか疑問に思った
雄介が大学卒業後、再び根室で生きていく意味を見つけたところで物語は終わります。
それが果たして希望になるのか、それが生きる意味でいいのかとモヤモヤしました。
私は、良かったね!とはとても思えませんでした。
恨みや憎しみが生きる意味になるのは悲しすぎます。
雄介は若いので、その後の人生で変わるかもしれませんが、後味の悪い結末だと思いました。
夫婦とは何かを考えさせられた
男なんて、旦那なんてのは大概、嫁なんて放っておいても身の回りのことをやって子育てして、しかもタダでいつでも突っ込める都合のいい穴ぐらいにか思ってないのさ。
『絞め殺しの樹』川﨑秋子 電子書籍 P166
ミサエが保健師として定期訪問で様子を見ていたヨシ。
8人目の出産が難産となり、命の危機にあった時にヨシが言った言葉です。
難産になった原因は、7人目出産後に悪露も痛みもまだあるのに、旦那が我慢できなくて期間を空けることができなかったからでした。
こう言ったら叱られるかもしれませんが、田舎にありがちな夫婦関係なのかなと思いました。
私の元義父は元義母が腰の骨折をして動けないときに、自分のご飯だけ用意して何もしてくれないような人でした。
どういう心理でそんなことできるのか理解できませんでした。
理想論かもしれませんが、大変な時はお互いに助けるのが夫婦ではないのか。
相手への思いやりは最低限必要なことではないのでしょうか。
日頃ないがしろにしているならまだわかりますが、そうではないのに思いやりがない相手と一緒に暮らすのは、私には堪えがたいです。
夫婦って、妻っていったい何だろうと思いました。
『絞め殺しの樹』の口コミ・レビュー
この本を読んだみんなの感想を見てみました。
私もミサエの人生には同じことを思いました。
人のうわさも七十五日と言いますが、75日どころか亡くなった後でも語り継がれてしまいます。
しがらみの恐ろしさを感じます。
確かに面白いのです。でもぬかるみにハマる覚悟も必要です。
何となく明るい元気になる本ではないことがわかりますね。
でも読みごたえは十分にあります。
まとめ
第167回(2022年)直木賞候補となった『絞め殺しの樹』を紹介しました。
自分だったらこのような環境でどうやって生きていくかを考えながら読むのもおすすめです。
メンタルが落ちこんでいないときに、ぜひ読んでみてください。
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