この記事では、第168回直木賞に輝いた千早茜さんの『しろがねの葉』を紹介します。
女性であれば一度は、“女性”というだけで侮られたり、軽んじられたりしたことがありますよね。
秀吉の天下だった時代。
石見銀山で、女性としての生き方ではなく、男性と同じように銀堀になりたかった一人の女性の物語です。
男性として、女性としてどう生きるか。人はなぜ生きるのか。
多様性と言われている時代に、どのような人生観で生きればいいのか。
そんなことを考えさせられる物語です。
『しろがねの葉』を読んだ感想を、心に響いた言葉を紹介しながらまとめました。
興味を持って下さった方は、ぜひ最後まで読んでください。
『しろがねの葉』という本について
タイトル | しろがねの葉 |
著者 | 千早茜 |
出版社 | 新潮社 |
発行日 | 2022年9月30日 |
ページ数 | 314P |
石見銀山で銀堀として働いた珍しい女性の話かな、と軽い気持ちで読み始めましたが、思ってたのと違いました。
始まりからとても重厚で、私にとっては言葉遣いが難しく感じましたが、すぐに物語に入り込めました。
そのあとは、続きが気になって一気読みでした。
著者について
著者である千早茜さんのプロフィールです。
1979年生まれ。2008年『魚神』で第21回小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。同作は2009年に第37回泉鏡花文学賞も受賞した。
2013年『あとかた』で第20回島清恋愛文学賞を、2021年『透明な夜の香り』で第6回渡辺淳一文学賞を受賞。
他の小説作品に『男ともだち』『西洋菓子店プティ・フール』『クローゼット』『神様の暇つぶし』『さんかく』『ひきなみ』やクリープハイプの尾崎世界観との共著『犬も食わない』等。
食にまつわるエッセイも好評で「わるい食べもの」シリーズ、新井見枝香との共著『胃が合うふたり』がある。
引用:千早茜『しろがねの葉』
本作品しか読んだことありませんので、歴史小説の作家さんだと思っていましたが違うようですね。
私は食べることが好きなので、食にまつわるエッセイを読んでみたいと思いました。
『しろがねの葉』のあらすじ
ウメの一家は百姓であったが生活が苦しく、このままでは冬を越せないことから、石見銀山に逃げることにした。
逃げる途中で1人はぐれたウメは、崖から落ちて気を失ったが、喜兵衛という男に助けられる。
喜兵衛は銀の鉱脈を見つける山師だった。
喜兵衛とともに生活をしていくうちに、ウメは自分も銀堀になりたいと思うようになる。
見どころ
私が思う本作品の見どころは次の通りです。
喜兵衛とウメの親子のような師弟のような関係からも目が離せません。
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『しろがねの葉』を読んでみた感想
それでは本作品を読んでみた感想を、心に響いた言葉を紹介しながら述べていきます。
銀山に生まれ、銀山と共に生きる
銀堀の仕事をしている男性は30歳まで生きられない。
なので、石見の女性は3度夫を持つと言われている。
目を凝らしても、凝らしても、見えない。ただただ暗い。己の眼では捉えられない真実の闇をウメは初めて知った気がした。
引用:千早茜『しろがねの葉』P22
銀堀が掘った穴=間歩を始めて見たウメの感想です。
この間歩に入って銀を掘る仕事をしていると、鉱山病に罹って、黒い血を吐きながら死んでいく。
それでも石見で生まれた男は、銀堀として生きることを当然のことだと思っています。
銀堀になることを、銀山とともに生きることを誇りに思っている。
それが石見の男性のアイデンティティなんだと思いました。
何で生きているのか改めて考えさせられた
なぜ生きているのかをきちんと考えたことがほとんどないことに気がつきました。
なんで生きておるのか、わからんようになる。
引用:千早茜『しろがねの葉』P126
酒量が多くなった喜兵衛に、ウメがなぜそんなに酒を飲むのかと聞いたときの答えです。
喜兵衛には子だねがありませんでした。
子孫を残すことが生きる意味の大きな部分を占める時代。
稀代の山師と言われ、銀のある場所を見立てるだけでは生きる意味にならないのか、と少し衝撃を受けました。
そがなこと考えてはいけん。間歩より昏い穴に迷う。
引用:千早茜『しろがねの葉』P142
これは銀堀として尊敬されていた岩爺の言葉です。
深い言葉だと思いました。
何で生きてるのかを考えて、答えが出なければ、生きる意味を見出せなければ、間歩より昏い穴に迷ってしまう。
そんなこと考えないで、ただ一生懸命生きろということなのかもしれません。
物語の最後には、何で生きているのかの一つの答えが見つかります。
私はそれもそうだなとは思いましたが、それだけでは生きる意味としては弱いと思ってしまいました。
私なりの答えはまだ出そうにないです。
女として生きることに抗うウメに共感した
私も女だからと侮られ、“女らしく”生きることに抵抗した時期があるので、ウメにとても共感しました。
おまえはおなごじゃけえ、わしらとは違う。子を産め。そして、銀を掘らせるんじゃ。
ここでは侍も百姓も商人も同じよ。銀を見つけた者が生きられる。
引用:千早茜『しろがねの葉』P36
子を産めるのは女性だけなので、子を産めというのは当然なのかもしれません。
でも特に若いときは、やりたいこと成し遂げたいことがあると、そんな考えに抵抗を覚えます。
「おぬし、おなごじゃなければ良かったな」きん、と耳が鳴った。
ややあって怒りだと気づく。隼人とかいう少年も、おなごだとウメを鼻で笑った。あの悔しさが蘇る。
引用:千早茜『しろがねの葉』P54
ウメはまだ幼いとき、たびたび“おなご”と侮られることに怒りがわきます。
私も同じような経験がありました。
中学生のときに、男子に「女のくせに」と言われ怒りがこみ上げました。
猿みたいな男子に、なんで女というだけで下に見られるのか。
言葉は悪いですが、中身がなくても男に生まれたというだけで、女よりも上になるのが納得できませんでした。
「どっちも」とウメは拳を握った。「男に使われるしかないんか」
(中略)
「違うの」「男は女がおらんと生きていけんのじゃ。おまえも直にわかる」
引用:千早茜『しろがねの葉』P102
銀堀である夫を亡くし、体調を崩している“おとよ”の面倒をみるように言われたウメ。
おとよが良くなったら嫁に出す、良くならなかったら女郎屋に売ると言う喜兵衛とのやりとりです。
喜兵衛は、子を産める女性は貴重だと言い、女性を大切にします。
一方で、妊娠しているのに暴力を振るい流産させるような、おとよの亡き夫のような男性もいます。
どちらも女がいないと生きていけないのでしょうか。
「おまえも直にわかる」の「直に」が私にはまだ来ていないようです。
もういいおばさんなのに(;^_^A
大きうなっても、おまえは女じゃ。女はどうやっても力じゃ男に劣る。
おとよのように柔く、弱く、なんも知らん顔をしておれ。油断させるんじゃ。それも女の生きる術ぞ
引用:千早茜『しろがねの葉』P114
私はおとよのような生き方をしたいと思ったことはありませんでした。
でも本作品を読んで、ウメが変わっていく様を見て、おとよのように生きるのが本当は賢い生き方なのかもと思うようになりました。
侮られたり軽んじられるのを逆手に取れるくらいの知恵を手に入れたいです。
最後に
第168回直木賞に輝いた千早茜さんの『しろがねの葉』を紹介しました。
男性として、女性としての生き方とは。
人はなぜ生きているのか。
男性と同じように銀堀になろうとしたウメの物語から考えるきっかけとなります。
自分の生き方に悩んだことがある人は、ぜひ読んでみてください。
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『しろがねの葉』のように生き方を考えさせられるような心に響く作品が好きな人は、こちらもぜひご覧ください。