【名言と感想】伊坂幸太郎『逆ソクラテス』

本屋大賞
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この記事では、2021年本屋大賞第4位となった伊坂幸太郎さんの『逆ソクラテス』を紹介します。

この本は、小学生が主人公である5つの短編が収録されています。

小学生が主人公だからといって、小学生向けというわけではありません。

むしろ大人向けで大人が反省したり、学んだりすることが多く、ずるい大人になってしまった自分を顧みるきっかとなりました。

そんなこの本を読んだ感想を、名言を紹介しながらまとめました。

ぜひ参考にして、自分の正しさや先入観にとらわれがちな大人に、この本を手に取っていただけたら幸いです。

見出し
  • 大人になって忘れてしまったことを思い出したい人
  • 「正しさ」や「先入観」で苦しんだことがある人
  • 本屋大賞や伊坂幸太郎さんの作品に興味がある人

『逆ソクラテス』について

タイトル逆ソクラテス
著者伊坂幸太郎
出版社集英社
発行日2020年4月24日
ページ数281P

この本は、次の5編が収録された短編集となっています。

  • 「逆ソクラテス」
  • 「スロウではない」
  • 「非オプティマス」
  • 「アンスポーツマンライク」
  • 「逆ワシントン」

ソクラテスが出てきたり、ゴッドファーザーが出てきたり、ジョージ・ワシントンが出てきたり、、、

飽きさせないだけでなく、有名人の残した言葉が、今を生きる私たちにも生かされるということに感動も覚えます。

ざきざき
ざきざき

「非オプティマス」に出てくるトランスフォーマーは知らなかったので、調べちゃいました(;^_^A

著者について

著者である伊坂幸太郎のプロフィールです。

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。

2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、「死神の精度」で第57回日本推理作家協会賞(短編部門)

2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞・第21回山本周五郎賞

2020年『逆ソクラテス』で第33回柴田錬三郎賞を受賞。

他の著書に『終末のフール』『仙台ぐらし』『残り全部バケーション』『ペッパーズ・ゴースト』など。

引用:集英社公式サイト

伊坂幸太郎さんは有名な作家なので、名前は当然知っていましたが、作品を読んだのはこの本が初めてでした。

数々の文学賞を受賞されているのも、人気があるのも、作品を読んで納得しました。

読みやすいし、心に刺さるし、何年経ってもタイトルを見ただけでどんな本だったか思い出せる本になるだろうと思ったからです。

読んでしばらくすると、タイトルだけでは内容を思い出せない本がわりとあるんですよね。

ざきざき
ざきざき

今度はぜひ長編小説に挑戦したいです。

『逆ソクラテス』を読んだ感想

それでは、本作品を読んだ感想を各編ごとに述べていきます

「逆ソクラテス」

ソクラテス

加賀は小学6年生の時、クラスの安斎たちと組んで、カンニングで草壁にいい点を取らせたことがあった。
また安斎と美術館の絵を差し替えて、草壁の描いた絵にしようとしたことも。
それらの目的は草壁のためではなく、担任の久留米の先入観を壊すことにあった。

転校してきた安斎の言うことがとても勉強になりました。

「土田はそう思うんだろ。ただ、俺は、そうは思わない。女みたいな男だろうが、男みたいな女だろうが、おかしくはない。地球に人間、何人いると思ってんの。いろんな人がいるのが当然だろ。土田みたいな人間もいる」

と言葉を一つずつ、相手に嚙んで含めるようにして、しっかりと言った。

俺は、変だとは、思わない。

引用:伊坂幸太郎『逆ソクラテス』電子書籍P18

「それはダサい」とか「かっこ悪い」とか決めつけて偉そうにしてくる人って、どこにでもいますよね。

その人に負けない方法が、

「僕はそう思わない」というセリフ。

先入観に打ち勝つ方法です。

これを小学6年生が言っているというのがすごいですよね。

それまでに一体なにがあったのかと思っちゃいます。

それからこれも安斎から教わったことですが、“教師期待効果”という言葉。

  • 教師が期待している生徒には、励ましの言葉をかけたり、褒めたりするので優秀な子になる。
  • 逆にダメだと思っている子には、周りもその子を下に見ていいと思わせてしまう。

久留米先生は草壁のことをダメな生徒と決めつけていました。

なので、生徒たちも草壁を下に見てしまっている。

久留米先生の決めつけを覆そうという安斎の計画は、とてもワクワクしました。

それから、ソクラテスの有名な言葉「無知の知」

自分自身が無知であることを知っている人間は、自分自身が無知であることを知らない人間より賢い。

この言葉と安斎の言った先入観に負けない方法を忘れないでいようと思いました。

「スロウではない」

リレーする小学生

司はジャンケンにより、クラスのBチームとしてリレーに出ることに決まってしまった。
ある日練習をしていると、クラスの中心人物でAチームの渋谷亜矢がBチームに難癖をつけてくる。
ビリになったら謝ってという渋谷の理不尽な要求で「ビリにならない」という目標ができたBチームの面々。
転校生の高木が調べてきた速く走れる方法をやってみると、実際に速く走れるようになる。

司と仲良しの悠太がやる「ゴットファザーごっこ」がとても面白かったです。

嫌なことがあると、ドン・コルレオーネにお願いします。

「うん」「では」「消せ」と相手を消すことに(笑)

このやりとりだけで、少しすっきりしそうじゃないですか。

乗ってくれる人がいたら、やってみたいです。

それから、、、

高城かれんが転校してきた理由に驚きました。

そっちだったのか、と。

そっち側の人が、高木のように認めてやり直そうとすることはなかなかないだろうなと思いました。

そしてどこにでもいる渋谷のような人、人に厳しくて自分が正しいと疑わない人。

自分の思い通りにするために、親の力も使う人。

高城がいることで渋谷が変わっていったと信じたい気持ちになりました。

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『逆ソクラテス』は電子書籍でも読むことができます。電子書籍を専用リーダーで読むようにしてから、目が疲れなくて楽ちんになりました。

「非オプティマス」

缶ペンケース

将太の担任の久保先生はいつも覇気がなく、生徒をきつく叱ることもできない。
そんな久保先生をなめている騎士人は、缶ペンケースを床に落として大きな音を立て、授業を妨害している。
授業参観のときも缶ペンケースを落とし、久保先生がいつものように注意したところ、父兄から物言いが出た。

久保先生の話に全て納得できたわけではないが、覚えておきたいと思いました。

~そういう意味では、一番重要なのは」先生が指を立てる。「評判だよ」

引用:伊坂幸太郎『逆ソクラテス』電子書籍P151

一番重要なのは「評判」だということでした。

あいつはいいやつだ、面白いやつだ、ズルいやつだ、人に迷惑をかけるやつだ、などなど、、、

その評判が人を助けたり邪魔したりする。

今すぐにではなく、数年後や大人になってからでも、どこで再会するかわかりません。

いじめた相手がお得意先かもしれない。

評判のために、相手によって態度を変えたりせず良い人になろうとするのは、難しいかもしれませんね。

でも、それが自分のためでもあるということかなと思いました。

「もし、平気で他人に迷惑をかける人がいたら、心の中でそっと思っておくといい。可哀想に、って」

引用:伊坂幸太郎『逆ソクラテス』電子書籍P152

これも久保先生の言葉です。

人に「可哀想に」って思われるの嫌ですね。

可愛そうにって思われないために、人に迷惑をかける人間にならないようにします。

「アンスポーツマンライク」

バスケットボール

あゆむは小学生のとき、ミニバスチームに入ってバスケットボールをしていた。
そのチームメイトと一緒に、かつての担任でバスケのコーチも務めていた磯憲いそけんのお見舞いに行くことに。
どこかの元名選手で怒鳴ってばかりのおじいちゃんコーチと違って、磯憲は声を荒げることなく、いつも落ち着いて指導してくれた先生だった。

スポーツの指導者というと、パワハラなイメージがあります。

この話に出てくるように、具体的な指示ではなく、「考えて動け」のような抽象的なことを怒鳴る、みたいな。

あとは暴力もあったり、、、

私は中学生のとき、木槌で叩かれたことがありました(;^_^A

なので、磯憲のような指導者は珍しかったのでしょう。

だけどもし、試合中、次のプレイで試合の流れが変わると信じたら、その時はやってみろ。

それはギャンブルじゃなくて、チャレンジだ。

試合は俺や親のためじゃなくて、おまえたちのものだ。自分の人生で、チャレンジするのは自分の権利だよ。

引用:伊坂幸太郎『逆ソクラテス』電子書籍P166

こんなこと言ってくれる先生って素晴らしいですね。

この言葉は、試合中だけでなく、生きていくのにずっと有効だと思います。

人生の流れが変わると信じたら、チャレンジしてみる、それは自分の権利だということ。

それから、もう1つ磯憲の言葉で覚えておきたい言葉がありました。

こちらが正しいからと言って、相手を説得できるわけではない。

正論を吐き、相手を言い負かしたとしても、その後の関係性は気まずくなる。

引用:伊坂幸太郎『逆ソクラテス』電子書籍P195

正しさで説得できるわけではない、というのは経験がありすぎます。

なのに、やってしまうんですよね。

状況が良くなればまだいいですが、関係性が気まずくなっただけ、ということが起こります。

そもそも説得して相手を変えようというのが間違いだということを、忘れないようにしたいです。

「逆ワシントン」

ジョージ・ワシントン

倫彦としひこと謙介は、学校を休んでいた靖の家にプリントを届けに行く。
応対してくれた靖の新しい父親に、2人は違和感を持った。
靖の体に痣があったこともあり、虐待を疑った2人は、ドローンで靖の部屋をのぞくことを思いつく。

親が有名人とか、スポーツがものすごくできるとか、特別じゃなくても幸せに生きる方法に納得しました。

約束を守る、とか、信頼される、とか、真面目な男だ、とか、そういうのは特殊能力じゃないでしょ

引用:伊坂幸太郎『逆ソクラテス』電子書籍P225

それからきちんと謝れる人。

そういう人でいると報われることばかりではないし、むしろ損するときもあるけど、心はずっと健康でいられると思いました。

罪悪感を持つって心に負担をかけますよね。

ここではアメリカの初代大統領のジョージ・ワシントンの話が出てきます。

子どものときににお父さんの大事な桜の木を斧で切っちゃったけれど、「僕がやりました」と言うと正直さを褒められた。

この逸話の様に、正直に謝る人でいようとする謙介の姿に心打たれました。

そしてずるい大人になってしまった自分を反省しました。

最後に

2021年本屋大賞第4位となった伊坂幸太郎さんの『逆ソクラテス』を紹介しました。

先入観や正しさに打ち勝つ方法が書いてあり、自分はどんな人間でいたいのかを考えさせられる物語です。

まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください。

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