この記事では、2024年本屋大賞第2位となった津村記久子さんの『水車小屋のネネ』を紹介します。
人は一人で生きているわけではなくて、誰かに良くしてもらったり、助けてもらったりしたことがありますよね。
本作品を読むと、これまで親切にしてくれた人のことを思い出し、お返しをしたい。
これから出会う人にも親切にしたい、と思える物語です。
いいことばかりではない人生ですが、あきらめる必要はないと教えてくれる本作品の感想を、心に響いた言葉を紹介しながらまとめました。
興味を持ってくださった方は、ぜひ最後まで読んでください。
『水車小屋のネネ』という本について
タイトル | 水車小屋のネネ |
著者 | 津村記久子 |
出版社 | 毎日新聞出版 |
発行日 | 2023年3月2日 |
ページ数 | 496P |
筆者がこれまで書いた小説の中でもっとも長い作品です。
でも続きが気になって、トイレに行く時間も惜しんで読んだので、長さは気になりませんでした。
著者について
著者である津村記久子さんのプロフィールです。
1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で太宰治賞を受賞してデビュー。
2008年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、
2009年「ポトスライムの舟」で芥川賞、
2011年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、
2013年「給水塔と亀」で川端康成文学賞、
2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、
2017年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞、
2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞、
2020年「給水塔と亀(The Water Tower and the Turtle)」(ポリー・バートン訳)でPEN/ロバート・J・ダウ新人作家短編小説賞を受賞。
近著に『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』などがある。
引用:『水車小屋のネネ』(津村 記久子 著)
数々の受賞歴がありますね。
他の作品を読んだことはありませんが、音楽と動物と水が好きな作家さんなのかなと思いました。
『水車小屋のネネ』のあらすじ
理佐は短大に進学予定だったが、母親が婚約者の事業のために入学金を使ってしまい、進学できなくなってしまった。
途方に暮れていたところ、妹の律が母の婚約者に虐待されていることを知る。
理佐は就職して律と2人で暮らそうと考え、就職先を探した。
すると、職安で「鳥の世話じゃっかん」と書かれたそば屋の求人を紹介される。
理佐と律は新たな場所で、2人だけの生活を始めることにした。
見どころ
この物語は、18歳の理佐が独立し、妹で8歳の律を連れて家を出た後の2人と、水車小屋にいるネネという名のヨウムのお話です。
本の構成は次のようになっていて、
10年ごとに物語が展開していきます。
10年後は理佐と律はどうなっているのだろう。律はどんな大人になり、どんなおばさんになっていくのか。
2人の人生と2人を支える温かい人たちとの交流、そして水車小屋いるネネが見どころです。
律はわたしと同年代です。なので一緒に成長したような気持ちになりました。
『水車小屋のネネ』を読んだ感想
それでは本作品を読んだわたしの感想を、グッときた言葉を紹介しながら述べていきます。
ネネのすごさに驚いた
わたしは鳥のことはあまり詳しくないので、ヨウムがどんな鳥なのか調べてみました。
ヨウムってすごいですよね。
この能力のすごさが、物語の中でもしばしば出てきます。
仕事を任されたり、問題を解決したり、人を癒したり、人に役に立っている。
あの時、ネネがいつものように「りっちゃん!」って言ってたら終わりだったと思う、と律は言った。けれどもネネは、律の指示を理解した。
引用:『水車小屋のネネ』(津村 記久子 著)電子書籍P158
母親の婚約者が水車小屋まで追いかけてきたとき、ネネは律が、人差し指を立てて口元に当てて顔をゆがめたのを見て、指示を理解した。
それだけではなく、男性の声を出してセリフをしゃべったりして、婚約者を追い返した。
そうやって時々人間を助けてくれる、すごい鳥です。
人間の言葉が理解できて、コミュニケーションをとることができて、絆ができて、何十年もともに過ごす。
素晴らしいことだけど、死んでしまったときに、とてつもなく悲しいだろうな、と思ってしまいました。
誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて退屈
誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて退屈なものですよ
引用:『水車小屋のネネ』(津村 記久子 著)電子書籍P389
律の小3・4のときの担任で、担任でなくなってからも何かと助けてくれた藤沢先生のことばです。
藤沢先生は次のようにも言いました。
本当に心配でたまらないけれどもなんとか暮らしを立ち行かせようとしているのを見て、自分がその手助けができるんだとわかった時に、私なんかの助けは誰もいらないだろうって思うのをやめたんですよ。
引用:『水車小屋のネネ』(津村 記久子 著)電子書籍P453
いい大人になると、ある程度の経験はしてしまって新鮮なことって少なくなりますよね。
でも親切は何回やっても飽きるということがありません。
こんな自分でも役に立てたなら、自己肯定感も高まって、自分にもいい効果として返ってきますね。
おじさんおばさんになったら、自分のためにだけ生きるのはつまらない。
ちょっとの勇気を出して、人に親切にして残りの人生をおくりたいと思いました。
何とかなると思ってると何とかなる
何か根拠があってなんとかなるって言ってたの? とたずねると、そういう予感がしただけなんだけど、当たったでしょ? と姉は答えた。
引用:『水車小屋のネネ』(津村 記久子 著)電子書籍P397
理佐は「なんとかなる」で切り抜けてきた人です。
そういう人の方が、なんか上手くいっているということありますよね。
いつものように、姉は楽しそうだった。
この人がこんな様子なら、自分のこれからだって何とかなるだろう、と常に律に思わせてきたおおらかな姉の姿は、律が八歳だった頃と少しも変わっていなかった。
引用:『水車小屋のネネ』(津村 記久子 著)電子書籍P461
理佐は何もしないで「なんとかなる」と言っているわけではないんですよね。
できることは精一杯やる、そのあとは何とかなるさ、と楽しく生きている。
度胸があって、働き者で、周りの人に親切にして、感謝の気持ちがある。
そんな理佐の生き方をお手本にしたいと思いました。
最後に
2024年本屋大賞第2位となった津村記久子さんの『水車小屋のネネ』を紹介しました。
今まで親切にしてくれた人に感謝し、これからは自分が誰かに親切にしたい、そんな風に思える物語です。
まだ読んでいない人は、ぜひ読んでみてください。
『水車小屋のネネ』は電子書籍でも読めます。
電子書籍で読むなら、専用リーダーがあると、目が疲れなくて快適ですよ。
2024年本屋大賞作品をまとめた記事があります。
興味のある人はご覧になってください。